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K-POP REVIEW VOL.1-AB6IX「A to B」

はじめに


初めてK-POPに触れてから約13年。

入口はBIGBANGだったのですが、当時中学生だった私が彼らを見て感じた衝撃は計り知れないものでした。
こんな世界と音楽があるのか、と。
しかも日本からほど近い、隣の国に。

そこから色々──2NE1、少女時代、KARA、BEAST、ZE:A、SUPER JUNIORに始まり、最近だとTREASUREやENHYPENなど──にハマり、気付けば全体的に曲を聴いたりライブに行ったりしていました。
今でいうDD状態です。

毎週様々なアイドルが手を替え品を替え、新曲を出し続けるK-POP。
ただ聴いて消費するだけではもったいないと思い、今も新鮮に衝撃を与え続けてくれるK-POPアイドルたちに敬意を表しつつ、
活動の記録がてら今日から新譜のレビューをしていきたいと思います。


今回のレビュー:AB6IX

レビューのトップバッターは5/18にカムバックしたAB6IXです。


AB6IXプロフィール

左からチョン・ウン、パク・ウジン、キム・ドンヒョン、イ・デフィ

デビュー:2019年5月22日
所属事務所:BRANDNEW MUSIC

チョン・ウン、パク・ウジン、キム・ドンヒョン、イ・デフィの4人からなるアイドルグループ。
グループ名「AB6IX」には「5人のメンバーとファンダムが合わさって初めて完全になる、BRANDNEWBOYSの絶対的な完全体を意味する"ABSOLUTE 6IX"」と、「BRANDNEW MUSICの新たな地平を切り開いていくメンバーとファンダムの超越的な融合を意味する"ABOVE BRANDNEW 6IX"」の意味が込められている。
※デビュー時は5人体制。後にひとり脱退


デフィとウジンはオーディション番組・PRODUCE 101からデビューしたWanna Oneの元メンバーです。
またデフィはプロデューサーの役割も担っており、日本での活動でいえば、PRODUCE 101 JAPAN SEASON2で楽曲提供をしています。(ファイナルで披露されたバラード曲「ONE DAY」)
レコーディングの様子は放送されたこともあり、日プを見ていた人の記憶にも新しいかと思います。

AB6IX 5TH EP A to B

今回は5th EP Ato Bからタイトル曲であるSAVIORと、一曲目のPARACHUTEを掘り下げます。


SAVIORのMVもかっこいいのでぜひ!
警察官と囚人コンセプト(合ってるよね…?)で、四者四様のシックな姿が見れます。



収録曲

AB6IX 5TH EP A to B

1.PARACHUTE
Composed by earattack, キム・チャンラク, eniac
Lyrics by パク・ウジン
Arranged by earattack, eniac

2.SAVIOR *タイトル
Composed by earattack, Andreas Öhrn, コンド
Lyrics by イ・スラン, Minos
Arranged by earattack, コンド

3.우리가 헤어졌던 이유(僕たちが別れた理由)
Composed by イ・デフィ, On the road
Lyrics by イ・デフィ, On the road
Arranged by On the road

4.아인슈타인 (EINSTEIN)
Composed by earattack, James ‘Boy Matthews’ Norton, chAN’s, Don Baller
Lyrics by イ・デフィ
Arranged by earattack, chAN’s

5.We Could Love
Composed by キム・ドンヒョン, On the road, キム・スンジュン
Lyrics by キム・ドンヒョン, On the road
Arranged by On the road


A to Bの主なポイント

レビューするにあたり、今回のカムバックの主なポイントをまとめました!

・二枚目の正規アルバムMO'COMPLETE以来、約8ヵ月ぶりのカムバック
※MO'COMPLETEは2021年9月27日発売
・一曲目のPARACHUTEはメンバーのウジンが初めて単独で作詞に挑戦。期待の一曲
・タイトル曲であるSAVIORはベテランヒップホップデュオ・EluphantのMinosがラップメイキングとして初参加
※EluphantはBRANDNEW MUSIC所属のヒップホップデュオ。2006年結成。
・三曲目の우리가 헤어졌던 이유(僕たちが別れた理由)は「CHERRY」、「1、2、3」を一緒に制作したOn the roadと一緒にメンバーのデフィが作詞・作曲
・四曲目の아인슈타인 (EINSTEIN)デフィが作詞
・五曲目のWe Could Loveはメンバーのドンヒョンが作詞・作曲した失恋ソング

メンバーが今まで以上に積極的に制作に参加して作り上げたのがポイントです。

では、本題に入ります。

1.PARACHUTE

◆かっこよさ ★★★★☆
◆かわいさ  ☆☆☆☆☆
◆爽やかさ  ★★★☆☆
◆切なさ   ★★★☆☆
◆重低音   ★★☆☆☆

※個人の独断と偏見に基づく基準・項目・星による評価です。星は5個が最高値です。
重低音はTにとって大事な要素なので項目に入れています。ご容赦ください……!

まずアルバムの最初を飾るPARACHUTE。
切なさの中に爽やかさがあるメロディーで心地よい疾走感がある曲ですが、ウジンが初めてひとりで作詞をした一曲ということで、ファンはもちろん音楽界の期待がかかった曲となりました。
意外だったのは、AB6IXやウジンの活動を細かく追っていたわけではないので彼らの作詞事情にあまり詳しくないのですが(その点においてはやはりデフィが頭ひとつもふたつもずば抜けている)、デビュー4年目にして初めてウジンがひとりでAB6IXの曲の作詞をしたということです。
勝手なイメージですが、ウジンはデフィみたいにガンガン曲作りに携わってるイメージがあったので、「あれ?そうだったんだ」というのが率直な感想でした。

というのも、割とどのグループもラッパーは作詞しがちというイメージがあったのと、私の中のウジン像は
・低音を生かしたラップ
・たたみかけるのもゆっくりラップするのも上手=緩急の付け方が素晴らしい
・体格の良さを生かしたダンス
などなどパフォーマンスにおける説得力が高く、てっきり作詞の部分でもそのカリスマ性を遺憾なく発揮しているのだろうと思っていたのです(これを「思い込み」と言います)。

そういうわけで、意外な感想を抱いたところから始まってしまったわけですが、A to Bの中で一番好きな曲です。

歌詞の内容としては「僕」(恐らくメンバー本人たちのことのような気がします)は最初、世間から見向きもされず落下している=憂鬱な状態なのですが、「君」がパラシュートのように落ちてきてくれて、「僕」の手を取ってあげます。
「君」が「僕」の理解者となり、それによって、「僕」にとって「君」が必要な存在になる、といった内容です。
(自分なりに解釈して意訳したり翻訳機にかけた部分があるので、細かい部分のニュアンスは違ったりするかもです……)

最後この「僕」は「君」に対して「ついてきて、信じて」と言っているので、「君」は「僕」にとって自身の源になったことがわかります。
これは僕=AB6IX、君=ABNEW(AB6IXのファンの総称)と捉えていいのかな、と思います。

歌詞を読んだ印象としては、曲の盛り上がりとともにネガティブからポジティブに心情が変わっていく様子が丁寧に描かれているな、という印象です。

冒頭から順番に見ていきます。

Oh 떨어지고 있는
Oh 落ちる

나를 잡아줬던 parachute
僕を捕まえてくれた parachute

Like parachute

말하지 않아도 날 믿니
言わなくても僕を信じるの?

この「言わなくても僕を信じるの?」の部分、「僕」が何も話さなくても「君」が無条件で受け入れてくれているのを良く表す一文だなと惚れ惚れしてしまいました。

アイドルって、発信する内容にどうしても制約があるじゃないですか。
ファンは言いたいことを言えますが、アイドルはすべてを開けっ広げにするわけにはいかないですし。

不透明な部分がありつつもこっぴどく裏切られない限り、ファンはアイドル(推し)を信じるんですよね。
アイドルとファンの関係に落とし込まなくても成り立つ人間関係を表す一文ではありますが、それを「話さなくても僕を信じるの?」と表現したのが素晴らしい。

そもそもパラシュートの語源はイタリア語の「守る」 (parare) とフランス語の「落ちる」 (chute) を組み合わせたもので、「落ちるものを守る」という意味があります。
サビに「Baby you are my parachute」という歌詞が出てきますが、
「君」は「僕」を守ってくれる存在となっていることがわかります。
これはタイトル曲のSAVIORが救世主という意味であることを含め、
このEPの重要なテーマと言ってもいいでしょう。

ここから「僕」の「世間は僕を見捨てた」とか、「同じ日々を毎日過ごしてた」とか、「ずっと走ってきた」「目の前は毎日雨」など、
思うようにいかない日々に葛藤する様子を描く歌詞が続きます。

そこに現れたのがパラシュートのような「君」であり、
サビでは「僕」の心をよく知っている君のことをどうして僕が手放すの?と、
主人公は「君」から離れる気が微塵もないことがわかります。

また、「we never not mayday」という歌詞。
maydayは無線で使われる救難信号=「助けて」という意味ですが、
「君」がいる限り助けを求める必要はもうない、と「君」をこの上なく信頼しています。

そして最終的に、受け身側だった「僕」に変化が現れます。

떠나지 마 절대 no
離れないで 絶対 no

따라와 줘 믿어줘
ついてきて 信じて

제발 내 손을 놓치지 말아 줘
どうか僕の手を逃さないで

これからは「僕」が引っ張っていくことを思わせて終わります。

このPARACHUTEは作詞したウジンからファンに向けての静かなラブレターみたいだなぁ、と思った次第です。
落ち着いた曲ながらも熱い想いが込められた一曲です。


2.SAVIOR

◆かっこよさ ★★★★★
◆かわいさ  ☆☆☆☆☆
◆爽やかさ  ☆☆☆☆☆
◆切なさ   ☆☆☆☆☆
◆重低音   ★★★★☆

タイトル曲であるSAVIORは直近で出した「1,2,3」のイメージとは打って変わり、
重厚で壮大な部分がありつつ、スタイリッシュなメロディーが際立つ一曲です。
世界観としては3rd EPのSALUTEに近い印象です。

制作陣を見てみると、ヒットメーカーであるearattackとイ・スランに加え、
今回はラップメイキングにラッパー・Minosが参加しています。
失礼ながら今回のSAVIORまでMinos氏のことを存じ上げなかったのですが、
EluphantというBRANDNEW MUSICに所属しているヒップホップデュオのメンバーとのこと。
ベテランラッパーが参加したことにより、ラップ部分の完成度がもっと高まったというのが世間的な評価のようですが、たしかにと頷けます。

曲の解釈としては公式的に、
AB6IXのSAVIOR(救世主)=ファンであり、
いかなる状況でもファンの光になるというメンバーの気持ちが込められている曲となっています。(下記アルバム紹介参照)

今回のアルバム「AtoB」のタイトル曲「SAVIOR」は拒否できない重力のように必然的に君に惹かれるというメッセージを盛り込んだ強烈なヒップホップ曲で、君と呼ばれる対象であるファンたちがAB6IXの救援者という意味とどんな状況でもファンの光になって救援者になってくれるというAB6IXの真心を二重的に盛り込んだ。
https://www.melon.com/album/detail.htm?albumId=10959935&ref=copyurl&snsGate=Y#

歌詞を見てみると、「重力」「光」「宇宙」がキーワードになっています。

あえてそうしているのかたまたまなのかわかりませんが、一曲目のPARACHUTEと関連があるかも?と思った歌詞がちらほらあります。(異論は認めます!)

★PARACHUTE
・하늘을 봐 그려왔던 나의 꿈을(空を見て描いてきた僕の夢を)
・I just wanna be a starlight
・Baby you are my parachute
・어둡던 day and night(暗かったday and night)
・눈 속은 매일 rain(目の前は毎日雨)

★SAVIOR
・눈부신 너란 flashlight(眩しい君というflashlight)
・난 널 맴도는 satellite(僕は君の周りを回るsatellite)
・햇볕 안 비추는 깊은 내 맘속(日の光が届かない僕の心の中)
・넌 나의 태양 다가가면 뜨거워져 숨(君は僕の太陽 近づくと熱くなる呼吸)
・혼자이기 싫은 밤엔 날 끌어당겨(ひとりでいたくない夜は僕を引き寄せて)
 끈 떨어진 연처럼 아득해도 take me higher
(紐が切れた凧のようにはるか遠くtake me higher)

考えすぎかもしれませんが、そもそも重力に従って落ちるしかないパラシュートをモチーフにした曲を一曲目に、「僕を君に導いたgravity」という歌詞から始まる曲を二曲目に持ってきたことを考えると、このふたつは繋がっているのかな?と思わせられます。

また、対として考えられる部分もあります。

・パラシュート⇔凧
・starlight⇔flashlight(穏やかな光と眩しい光)
・雨⇔太陽

こういった点から、個人的には繋がっていた方が面白くて好きです。


ウジンのラップパートはMainosが作った部分ですが、ついニヤけたのは「brandnew kingdom」のところ。
事務所がBRANDNEW MUSICだもんねと思ったのですが、意図しているのかどうかはわかりません。

あと今っぽいなと思ったのは「Just you and me no hashtag」。
「君と僕以外のハッシュタグはない」みたいな意味なのですが、ハッシュタグという単語を使うのが今の時代ならではですよね。
これも時が経つにつれて「時代だね~」となるのでしょうか。

こういった遊び心があると聞いていて楽しいです。
それも無理やり入れている感じではなく、スッと自然に入れていることで聞きやすい。
これがMainosさんの力か…と思いつつ、わざとらしさを出さずにこなすウジンもさすがです。

それにしても全体的に完全に二人の世界に入り込んでる感がすごい。
重めの愛で最高ですね。


まとめ

今回はAB6IXの5th EP Ato BからPARACHUTEとタイトル曲のSAVIORをレビューしてみました。
全体的にウジンメインになってしまいましたが、ウンとドンヒョン、そしてデフィによるボーカルの安定感もAB6IXを構成する大事な要素です。

通して聴くと、静かに熱く始まるPARACHUTE~しっとり終わるWe Could Loveまで、綺麗にまとまっている印象です。
いい意味で「もう終わり?」となります。
さすがBRANDNEW MUSICだな、と思わせるEPでした。
次のカムバックにも期待!(気が早い)

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