太宰治全集をひらく-1
『太宰治全集をひらく』とは、筑摩書房から出ている太宰治全集のことばをすこしずつなぞっていき、素敵なことばを探し集めるという、わたしの個人的なこころみです。
今回は、第一巻『晩年』『葉』からです。
「私」に対し兄は、小説はまだるっこいといいます。「たった一行の真実を言いたいばかりに百頁の雰囲気をこしらえている」と。それへの応答が、このことばです。
小説に限らず、映画も演劇も、それが描く『真実』はじつは一行で済んでしまうことが多いとおもうのです。
それどころか、まえもってその