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わたしの少しのことば

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『わたしの少しのことば』とは、わたしのこころに浮かんできたことばを、そのまま並べてゆくというこころみです。
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わたしの少しのことば‐ちょっとした所感

『わたしの少しのことば』とは、わたしのこころに浮かんできたことばを、そのまま並べてゆくというこころみです。 雨がとても激しく降っている。 雨が外の木々の葉を打つ音が聴こえる。 カーテンの隙間から外を覗くと、風も吹いていて木々の葉が揺らされているのだと分かった。 何も考えずに昨日洗濯したシーツは今もベランダに吊るされていて、きっとこの風雨でまた湿ってしまったから太陽を待つほかないだろう。 <やれやれ>と思った。 あらためて外を覗いてみると、そしてよく観察してみると、台風よ

わたしの少しのことば-あの晩

『わたしの少しのことば』とは、わたしのこころに浮かんできたことばを、そのまま並べてゆくというこころみです。 あの晩、あなたがわたしを抱きしめた。 わたしがそれを拒まなかったのは、そこにこころが在ったから。 もとからわたしは、セックスはきらいなの。 肉体がつながることに、どんな意味がありえるでしょう。 けれども、もしそれが、こころが重なり寂しさを埋め合う精神的なセックスだったなら、そこにおおきな意味がありえましょう。 あの晩わたしが怖かったのは、ただ性病だけで孤独はなかっ

わたしの少しのことば‐『待ち合わせ』

『わたしの少しのことば』とは、わたしのこころに浮かんできたことばを、そのまま並べてゆくというこころみです。 わたしは『待ち合わせ』ということばが好きです。 『待ち合わせる』とき、わたしはあなたを待ち、あなたはわたしを待つのです。たがいがたがいを『待つこと』を合わせて『待ち合わせ』ということばなのです。 先に場所に着いたあなたがわたしを『待っている』のは当然だとしても、そこへ向かってゆくわたしもあなたを『待っている』のです。 たがいが相手を『待っている』気持ちが出合うことが

わたしの少しのことば-珈琲はブラックで

『わたしの少しのことば』とは、わたしのこころに浮かんできたことばを、そのまま並べてゆくというこころみです。 もう十年も珈琲はブラックしか飲んでいない。甘さが好きだというのに。 十年前、もう日付は覚えていないけれど、あれは夏のおわり頃だった。 まだ若干の若さを残していたわたしは、数年一緒にいる女と下町にある行きつけの純喫茶にいた。 窓際の席に座って、ふたりして外の景色を眺めていた。 わたしたちのほかに客はいなかった。 喫茶店の馴染みの親父が、わたしに珈琲、彼女にアイスココ

わたしの少しのことば-『潤い』

『わたしの少しのことば』とは、わたしのこころに浮かんできたことばを、そのまま並べてゆくというこころみです。 感傷的でだめだね、とわたしはいった。 けれども彼は、『それでいいんだ。そうした心の潤いが、いつかきっと花を咲かせ実を実らせるから』と。 わたしが悩み悲しむときの泪を、彼は、潤いというのだろうか。 『ぼくたちは、乾燥して反ってしまった木材のようなもので、世界とはどうも反りがあわないが、ぼくときみではうまい具合に反りがあう』 と彼は言っていた。 いつか潤いが溢れきっ