私の好きなものー吉野弘

おはようございます。

29年間も住んでた割に、東京の高層ビルの大きさにたまげております武内和久です(^^)

さて、突然ふと思いついた時に不定期にお送りしている「私の好きなもの」シリーズ。
これまで阪急ブレーブスや大相撲や洋楽や長渕 剛をご紹介してきました。

今回は詩人の吉野弘さんです。
「祝婚歌」は後輩の結婚式によく贈ります。

そして、5歳ムスメを育てる親として、最近は次の詩を思い返します。
未来を創るすべての子供たちに贈りたい。

『奈々子に』

赤い林檎の頬をして
眠っている奈々子。

お前のお母さんの頬の赤さは
そっくり
奈々子の頬にいってしまって
ひところのお母さんの
つややかな頬は少し青ざめた
お父さんにも ちょっと
酸っぱい思いがふえた。

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。

お父さんが
お前にあげたいものは
健康と
自分を愛する心だ。

ひとが
ひとでなくなるのは
自分を愛することをやめるときだ。

自分を愛することをやめるとき
ひとは
他人を愛することをやめ
世界を見失ってしまう。

自分があるとき
他人があり
世界がある

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた

苦労は
今は
お前にあげられない。

お前にあげたいものは。
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。

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