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『大阪・京都市内「初乗り運賃以下」で移動する裏技』は本当に使えるのか(大阪編①)

(ヘッダー画像、東洋経済オンラインより)

こんにちは。
突然ですが、twitterでタイムラインを眺めていると、東洋経済オンラインの某記事が目に留まりました。それがこちら。

大阪市内・京都市内でバスと地下鉄の「乗継割引」を利用して安く移動しようという記事なのですが、端的に言って、極めて実用性に欠ける移動方法が紹介されていましたので、記事を読み解きながら指摘していきたいと思います。記事では、大阪・京都の2都市について説明されていましたので、大阪・京都にそれぞれ分けて、記事について指摘していきたいと思います。

0.はじめに(大阪編)

 まずはじめに、今回この記事ではバス・地下鉄の「乗継割引」の利用そのものを否定するつもりはありません。以下で「コスパ最悪」とか「そんな利用誰がするか」と指摘する利用区間でも、「あまりにも時間が余って暇」という時であればバスー地下鉄乗継してもいいんじゃないかという区間はあります。
ただし、覚えて欲しいこととして「大阪で地下鉄と並行するバス路線は、本数が少ない&大阪のバス路線は運行間隔が不均等」ということです。要するに『コスパ・利便性劣悪じゃね?』ということを言いたいのです。このことを頭に入れた上で、以下の記事をお読みいただけたらと思います。

1.そもそも乗継割引って何?

記事でも説明されていますが、改めて大阪のバスー地下鉄の乗継割引というのはどういうものであるのか、説明したいと思います。

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上の写真のように、Osaka Metroと大阪シティバスを連続して乗り継いだ場合、そして支払いにICカードor回数カードを利用した場合に、片方の運賃が-100円引きになるというものです。
※現金・紙のきっぷに乗継割引はありません。
また、バスと地下鉄に関しては乗り継ぎ割引の時間制限はありません。極論を言うと、「朝バスに乗って、夜地下鉄に乗った」という場合でも、連続利用であれば割引は適用となります。

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地下鉄とバスの順番が逆になっても一緒です。
なお、PiTaPaの利用だと、この乗継割引の運賃から更に1割引、学生であれば2割引(要設定)となります。

また、この乗継割引、「乗り継いだ」とされる条件が良い意味でポンコツです。

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例えばこのように地下鉄で恵美須町まで行き、恵美須町からあべの橋(天王寺駅最寄り)まで歩いて、あべの橋から大阪シティバスに乗った場合も自動的に-100円割引となります。(くどいようですがICカード・回数カードで乗った場合の話です。)
先程も述べたとおり、時間制限はないため、いくら遅く歩いても、あべのハルカスに寄ったとしても、途中で天王寺で仕事してたとしても、割引は適用となります。

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また、Osaka Metro公式ホームページにも、そして例の記事にも、記述がありますが
「バス→他社線(JR・近鉄・南海など)→地下鉄」
「地下鉄→他社線(JR・近鉄・南海など)→バス」
といった利用の場合、乗継割引は効きません。

が、あくまでも『ICカードの記録上』、バスと地下鉄を連続して乗り継いでいれば割引は適用となります。ということで、

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このように、バス・地下鉄を同じICカード、他社線を別のICカード、またはきっぷで乗車した場合は、乗継割引が適用となります。(他社線分の運賃は割引になりませんが)

その他にもバスとバスを乗り継いだ場合、『いまざとライナー』を利用した場合は、また別の割引制度となるのですが、詳細は省きます。

2.記事で挙げられてた事例は本当に「使える」のか??①

【注意】ここからは私の主観が若干混じってきます。ご了承ください。

では検証に移ります。例の記事には、用途を添えて、バスー地下鉄割引を単純往復で利用できる区間が挙げられています。
要するに

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こういった利用のことです。AからBまで地下鉄で行き、BからAまでバスで帰るといった利用です。(逆も同じく)
つまり片道分は地下鉄を利用できますが、片道分はバスを使うということになります。
ちなみにバスの行先などは割引適用に際して条件がありません。つまり地下鉄で来た道を戻る形でも割引は適用となります。
で、実際記事に挙げられている区間は以下のとおりです。
(記事はhttps://toyokeizai.net/articles/-/447429?page=2より引用)

【地下鉄初乗り圏内(1区)】
地下鉄往復360円→バス乗り継ぎで290円に(実質片道145円)
・梅田―淀屋橋間:金融街への出張に
・淀屋橋―なんば:道頓堀でくいだおれ
・難波―日本橋(日本橋一丁目):メイド喫茶で萌え萌えキュン♪
【地下鉄運賃2区】
地下鉄往復460円→バス乗り継ぎで340円に(実質片道170円)
・弁天町―大阪港:港湾関係への出張に
・梅田―なんば:戎橋で記念撮影!
・梅田―心斎橋(心斎橋筋一丁目):アメリカ村でショッピング♪
【地下鉄運賃3区】
地下鉄往復560円→バス乗り継ぎで390円に(実質片道195円)
*バスでも地下鉄と所要時間ほぼ同じ、しかも乗り換えなし
・天王寺(あべの橋)―北巽:地下鉄20分、バス最速25分
・天王寺(あべの橋)―南巽:地下鉄24分、バス最速23分
・東梅田(大阪駅前)―今福鶴見:地下鉄27分、バス最速26分

ちなみに、地下鉄3区については通勤定期云々書かれていますが、定期との比較については、この記事があまりにも長くなりそうなので、別記事で検証しようと思います。

ちなみに、9つの事例、全て地下鉄ーバスの乗継割引が効くことは事実です。なので実際記事の通り、価格だけ見れば地下鉄単純往復よりは安くなります。全て実行可能なルートです。が、問題はコスパと利便性です。

では今から、バスの本数や利便性なども含めて検証していきます。個人的に「まあまだ使える区間かな」と思ったものから紹介していきます。
(ちなみに最後の方に上がってくる区間は「は?お前それ本当に使えると思って紹介してる?」といった区間となります。お楽しみ(?)に)

①梅田ー淀屋橋

地下鉄往復360円→バス乗り継ぎで290円に(実質片道145円)
・梅田―淀屋橋間:金融街への出張に

とあります。この区間に関しては乗継割引が使える方だとは思います。
ちなみに地下鉄梅田駅に近いバス停は「大阪駅前」バス停です。梅田バス停というものは存在しませんのでお気をつけを。
梅田→淀屋橋(矢印の向き重要)に関してはバスが1時間に10本走りますし、バスの所要時間も6~7分です。
ただしいきなり注意点が2つ。
まず、行き(梅田→淀屋橋)の区間でバスを使う方。大阪駅前ののりばが3つに別れます。確かに「梅田→淀屋橋に関してはバスが1時間に約10本走ります」とは書きましたが、3つの路線を合わせて1時間に約10本ということ。3つの路線のバス停自体は近接していますが、どのバスが淀屋橋に早く着くバスかは自分で判断しなければなりません。
また、帰り(淀屋橋→梅田)の区間でバスを使う方。
淀屋橋バス停から大阪駅前行きのバスは昼間1時間に3~4本しかありません。

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西に5分ほど歩いた肥後橋バス停からですと、バスは1時間あたり10本以上出ています。
が、肥後橋バス停から大阪駅前へ向かうバスものりばは3つに別れています。適当なバス停で待っとけばバスがバンバン来る状態ではありません。

この時点でかなり面倒くさいのではないでしょうか。行きにバス使うにしても帰りにバス使うにしても、複数あるのりばから、次来るバスがどののりばから出るかを判断してバスに乗らなければなりません。しかもどのバスが遅延しているのかは一目で分かるものではありません。

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またそもそも梅田ー淀屋橋(肥後橋)間の距離は約1キロ。十分歩ける距離なので、地元民はそもそも地下鉄にもバスにも乗らず歩く人が大半です。

こんな有様ですが、挙げられた9つの区間の中で一番まともに使える区間だと思います。以下はもっと使えないと思われる区間だということです。では見ていきましょう。

②梅田ー心斎橋
③梅田ーなんば
④淀屋橋ーなんば

地下鉄往復460円→バス乗り継ぎで340円に(実質片道170円)
・梅田―心斎橋(心斎橋筋一丁目):アメリカ村でショッピング♪
地下鉄往復460円→バス乗り継ぎで340円に(実質片道170円)
・梅田―なんば:戎橋で記念撮影!
地下鉄往復360円→バス乗り継ぎで290円に(実質片道145円)
・淀屋橋―なんば:道頓堀でくいだおれ

続いてこの区間。3つまとめて見ていきます。先にこちらを見てもらいましょう。

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こちらは大阪駅前(梅田)から、心斎橋・なんばへ向かうばすの時刻表です。よくご覧ください。バスが毎時1~2本しかありません。昼間は30~40分間隔。ちなみに所要時間は、大阪駅前→心斎橋筋一丁目で約20分、大阪駅前→なんばで約25分です。(ちなみになんば→大阪駅前は20分で到着します。まだマシ?)

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なんば~大阪駅前(梅田)間でまとめるとこうなります。片道は地下鉄乗れるとはいえ、90円~120円をケチるために上のバスに乗る人間がどれだけいるかは正直微妙ではないでしょうか。ちなみに最終便がすごい早いので、夜間はバスを利用できません。

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ちなみに話にはまだ続きがあります。大阪の方なら御存知の通り、梅田となんばを結ぶ、御堂筋は南行きの一方通行です。このことにより、梅田となんばを結ぶバスは、北行きと南行きでルートが違います。梅田ーなんば間の移動はどうでもいいのですが、梅田ー心斎橋、淀屋橋ーなんばの移動の場合はちょっと面倒くさくなります。心斎橋から梅田へ向かうバス、そしてなんばから淀屋橋へ向かうバスはないということです。
心斎橋→梅田の場合は北堀江一丁目まで移動してバスに乗車、なんば→淀屋橋に関しては肥後橋でバスを降りて徒歩で淀屋橋まで移動することになります。まあ5分くらい歩いたら着く距離ではありますが。
アレーデモキジニソンナコトハカイテナカッタゾ??

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あと一応情報だけお伝えしますと、梅田ーなんばを結ぶバス系統はもう1本あって、こちらは30分に1本の間隔で出ています。ただし所要時間は30分を超えです。

どれだけいるか分かりませんが、この区間で地下鉄とバスで往復しようとする方は、行き・帰りどちらにバスを使うかよくお考えの上、ご移動ください。なお自分は往復とも地下鉄を利用することを強く推奨します。

⑤天王寺ー北巽
⑥天王寺ー南巽

地下鉄往復560円→バス乗り継ぎで390円に(実質片道195円)
*バスでも地下鉄と所要時間ほぼ同じ、しかも乗り換えなし
・天王寺(あべの橋)―北巽:地下鉄20分、バス最速25分
・天王寺(あべの橋)―南巽:地下鉄24分、バス最速23分

この区間、実は地下鉄もバスも利用が地味に面倒くさい区間となります。正確に言うと、住んでいる場所・目的地によって、色々な手段があります。

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上の図は、地下鉄・JR・いまざとライナーの路線図を示しています。
地下鉄は紫の線(谷町線)、ピンクの線(千日前線)を乗り継ぐルートです。ちなみに本数は毎時8本あります。時刻表不要です。
で、肝心のバスなのですが、

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北巽からは毎時1~2本。

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南巽からはほぼ毎時1本しかバスがありません。(休日は本数が増えますが)
しかも運行間隔は見事にバラバラ。乗継割引を利用して390円で行き来しようと思うと、「時間を合わせて北巽・南巽からあべの橋へバスで移動し、帰りは地下鉄」という手段(もしくはその逆)になりますが、通勤・通学に使えるかと言われると非常に微妙なところ。

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ここで出てくるのがいまざとライナーとJR。
少なくとも、南巽駅から南の地域に用事がある・住んでいる人はJR平野まで自転車か徒歩で出てしまって、天王寺までJRを使うという手段が一番まともになりそうです。(片道160円、本数昼間毎時4本・所要時間約5分)

そして北巽駅・南巽駅から西へ約1.3キロほど進んだところには、もう一つの交通手段、「いまざとライナー」の停留所があります。いまざとライナーとは簡単に言ってしまうと急行バスみたいなもの。所要時間は15~20分ほど。運賃はバスと同じく210円です。駅から西の地域に住んでいる人は、今里筋(オレンジの線)まで歩いて、いまざとライナーで往復するのがいいのではないでしょうか。

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ただし本数はいまいち。運転間隔が揃っているだけマシといったところでしょうか。
ちなみになんですが、地下鉄といまざとライナーにも乗継割引がありまして、なんと割引額は-160円。つまり行きはいまざとライナーであべの橋まで行き、帰りは地下鉄で北巽・南巽まで帰ってくるというルートをとれば330円です。使える人は限られそうですが。


ということで6つの区間を見てきました。90~170円をケチるにしてはどの区間も抵抗がありそうです。

この記事には記載がない裏事情があるということがお分かりいただけたでしょうか。
ちなみに後3区間が残っていますが、どれもとんでもない区間となります。ぶっちゃけ次の記事は地元民が「アホかこいつ」と思うための記事となります。まあぜひご覧ください。

(後編へつづく)

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