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23 カブ主 決める

期待と不安が入り混じった複雑な心境のまま、車はショップに到着した。

「落ち着け!」

ちょっと緊張している自分に言い聞かせる。仮店舗なので店の前に所狭しと(本当に大袈裟でなく所せまし状態だ)様々なバイクが並んでいる。大きな体育館のような倉庫にあるバイクも合わせると300台以上はありそうだ。

ご家族で経営しているショップらしく、旦那さんが社長、今回対応してくれているのは朝の電話に対応してくれた、店の奥様だ。お目当ての「プコブルー」は、倉庫の手前にある売約済みの1台と、将来相棒になるかもしれない1台が奥の方にかすかに見える。

「これがプコブルーのクロスカブですね。売約済みの1台ですけど・・・あちらに見えるのが、ラストのプコブルーです」

と、倉庫の入り口近くにある売約済みのプコブルーを眺めながら話を聞く。きれいな色だ。「女の子に似合いそうな可愛い色ですね」と言うと「そうですね、でも何台か買っていただきましたがみんな男性の方でしたよ」とのこと。夜走ることも多くなりそうだと告げると「だったら、明るい色の方が断然視認性は良いですね。ライトだけだとやはり車とかから見えにくいですから」と言われ、納得する。

転勤を機にカブシリーズを通勤の相棒に、と考えて何軒かショップ巡りをしたが、先日ここに来たのも何かの縁。プコブルーとの出会いは必然だったのかもしれない、と妙に感慨深くなってしまう。

「見積作ってみましょうか?何かカスタムとかお考えですか?」

おすすめを聞いてみると、グリップヒーター、フロントスクリーン、ナックルガードを購入時に着ける方が多いとのこと。旦那さんはハンターカブに乗っておられ、奥様はカブプロのフェンダーやボディカバーをクロスカブのグレーのボディカバーに取り換え、お洒落に乗られている。グリップヒーターがついていないため手が寒いとのことでグリップヒーターは強く勧められた。その他、ネットで見て気になっていた「フロントブレーキディスクカバー」と「センターキャリア(いわゆるベトナムキャリア)」も一応見積もりに入れて計算してもらう。

作ってもらった見積書を見ると、税金や初期費用の上にカスタムが目いっぱいついているのでやはり予算オーバー。「完全に予算オーバーです」と伝えると、「最低限欲しいカスタムを残すつもりで、この金額からカスタムを削っていきましょう」ということになり、奥様と相談する。

大きなものはグリップヒーター。奥様には強く勧められたが、これから暖かくなってくるし来シーズンに向けて検討してはどうでしょう、ということで今回は却下。センターキャリアは自分でつけられるとのことで見積もりから削る。フォルツァに乗っている時便利に感じたナックルガードはともかく、やっぱりフロントスクリーンは最初から欲しい。ルックス重視で純正のフロントブレーキディスクカバーも着けたい。

最終的に提案された乗り出し価格は40万円を少し超える金額になった。支払いは少しでも安い方がありがたい。不躾を承知で「この端数、なんとかなったりしますか?」と聞いてみた。「社長に聞いてみますね」と奥様が立ち上がろうとした丁度その時、外で作業していたご主人が事務所に入ってきた。奥様がご主人に見積書を見せながら「この端数なんだけど・・・」と言いかけると、「そうですよね、そこですよね」とご主人も苦笑い。

「・・・良いですよ」というご主人の一言で契約成立となった。

「ありがとうございます!」