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散歩が楽しくない

散歩が好きだった。
電車通勤をしていた頃は通勤がてらの散歩のために一時間も早く家を出ることがよくあったし、休日だって早起きをして散歩をした。朝の澄んだ空気が心地よかった。

それが、いつのまにかあまり楽しめなくなっていた。そのことに気がついたときは自分に余裕がないのかなと思ったけれど、少ししてわかった。マスクのせいだ。

なんというか味がしないのだ。空も山も海も、街路樹も歩道の花壇もきれいなんだけど、自分の外側をかすって通りすぎていくだけ。例えばすごく綺麗に盛り付けられた美味しい料理だって、鼻をつまんで食べたら本当には美味しくないっていうその感じ。

人のいない早朝、マスクを外して歩いたら、やっぱりいつまででも歩けそうな気がした。向こうから誰か来るとソワソワして、やっぱりマスクしなきゃだめかなとうつむき、ポケットの中のマスクを一応つかむ。その人が近づいて同じくマスクをしていないことが分かり少しほっとする。

味のする散歩をしたい。
それがマスク生活の終わりを願う一番の理由。

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