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ないものいらないもの

昨日夢中だったことが今日は何とも感じない。昨日何ともなかったことが今日はキリキリと心をえぐってくる。移り気な意識は何がトリガーになってしまうのやら、とっくに散ってしまったあの日から急発進してくる。いらないものを捨てて捨てて、ここぞというところで新たな武器を手に入れて最強になってきたはずなのに、忘れたころに忘れていた感情に引き戻されて未来を邪魔されている感じがもどかしくも愛おしい。今日まで自分を作ってきたものが好き嫌いとか小さな嘘からできていて、そうやって選んできたものだけで、見せかけのファイティングポーズとこんにゃくゼリーの底をつまんでも出てこないと思っていたら急に発射されびっくりされるような変な生き方しか知らなかった。どうせ制御できないものたちだから、まかり間違ってそのまま連れてきたとしても、さりとて痛みは少ないのだろうか。小さな透明瓶に迷いこんできた言葉たちは夏の匂いとともによみがえり、解体しては磨かれまたしまうことの繰り返しで誰にも共有されることなく死んでいくから意味がある。毎年同じようなことを書いているよなと思いながら何か残しとかないと気持ち悪いのは、夏生まれだからいちいち自分何周年みたいなこだわりではなく、こんがらがった心のヒダをうまく整理するのになんとなく開けたその空気感が都合がいいから。あまり大きな変化もなく、またり見守ってくれているおおらかさと去り際のやたらあっさりいってしまうところに動物的なセンスを感じる。意味があるようでないものが夏にはよく似合う。