パイチンゲールの起床と怠惰(純文学)
あくる日、周りが森に囲われている丸太の家、決して豪華とは言えない家
その中ではパイチンゲールが暖を取りながら寝ています。
…
彼女はナチスから遁れてきたユダヤ人の白人で、今現在はロシアの某所にこうして住処を構えてひそひそと生活をしている
パイチンゲールはドイツの某所で、アーリア人の父とユダヤ人の父から生まれた。幼少期は親を困らせることがない、それは立派で華奢な少女だった。
彼女はかの戦火で両親を殺された。
そう、例の政策によってユダヤ人の両親は収容所へ連れていかれたのだ。
彼女は命からがら、家の裏口から必死に逃げた。
おとおさん、おかあさん、ごめんなさい。
私は森へ逃げます。
いつかお空の上で会えることを祈って Ales
そうしてたどり着いたのが現在のすみかである。
周囲は薄暗く、そして果てしない緑に覆われ、冬にはとてつもない寒波が森全体を包みこむ。
彼女は生きるのに必死であった。
…数時間が過ぎたころであろうか
その優美でか弱い少女は暖炉の前の椅子で眠りから覚めた
外はまだ薄暗く、カラスかも渡り鳥かもしれない鳥が何処かで、集団で啼いている。
少女はそっと暖炉の薪を継ぎ足すと、さっそく朝食の準備へと取り掛かる。
パイチンゲール家の定番と言えば薄く濁ったボルシチである。
彼女はワインとデミグラスソースを鍋へ入れると、各々切り刻んだ贖罪を鍋の中へと放り込む。
薄オレンジの鮮やかなニンジン、紫が毒々しいビーツ、ころころっとした馬鈴薯、そしてメインを飾るは筋の通った牛肉
周囲にカラフルな匂いが宿る
彼女はそれをすーっと吸うと白い息を吐いた。
ぐつぐつと鍋が音を立てる
同時にパイチンゲールの腹も鳴る
…そして一発の銃声があたりにこだまする
「…!」
距離はここからいくらも離れていないだろう
銃声はキーンと家を揺らし、遠くでは鳥がわめく
あきらかに私を狙っている
近くに街という街はなく、ここらに住んでいるのは私くらいだ
誰が、何のために
刹那、もう一発の銃声がどーんと鳴り響く
先ほどより距離は近い
もうパイチンゲールはとっくにボルシチのことなど忘れていた
正気を失っている
「…どこかへ逃げなきゃ」
銃声の主はナチスの党の野郎であろうか、それともたまたま近くへやってきた狩人であろうか、はたまた…
いずれにせよ少女一人の身には危険が迫る
パイチンゲールは丸太小屋の二階へあがり、毛布に包まる
「…やめて。 こないで。」
震える少女からは白い湯気がたちのぼる
「…お願いだから。やめて…」
一階では沸騰した鍋ががらんどうの室内をうるさく鳴っている
「どーん。」
三度、銃声が鳴る
かなり近い
少女は身構える
「…どうか、神様。私を守って Ales…」
森はどこか知らない傍観者の様に静かに啼いている
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