見出し画像

化学基礎演習:①周期表暗記法の提案    by 茶茶 サティ

化学基礎演習:①周期表暗記法の提案
by 茶茶 サティ

シリーズ「化学基礎の計算 誤答捜査隊出撃」
~時々間違っているかもしれない解答付き~

【はじめに…化学の得点8割を目指して】

 化学は高校理系必須と言っても良い教科である。そして理系学部に進学しても結局なんやかんやでお世話になる学問でもある。
多くの普通高等学校では地学を設置していないので、事実上は化学必修、物理と生物の二者択一になる(理数科等は別)。不思議なことだが、生物が得意な人はたいてい物理を好まず、物理が得意な方は生物が苦手なものだ。でも教員免許は包括的に「理科」であり、誰が何を教えても構わないことになっている。しかし同じ「理科」とは思えない内容だけに、自信を持って3教科できるセンセはそう簡単には見つからない。居ても授業はつまらないことが多いが、これは内容が高尚こうしょうすぎて聞き手にはなかなか伝わらないからだろうと思う。

 同じことが化学専門のセンセや教科書、問題集にも言える。
正直な気持ちで言うと、「化学のセンセの計算方法がアタマ良すぎる」ことと「問題集の解答解説が、要領良すぎて解り難い」という感想に尽きる。だから解説などを見ると「生徒さんにとって」論理の飛躍がしばしばあり、実は良いことを言ってるのにさっぱり理解にはつながらないケースが多い。

 しかし… 現実問題として、受験生はとにかく「得点」が欲しい。現行の制度が良くても悪くても、充分な得点が無ければ希望する大学に入ることができないのだ。大学に入ってから…とか、卒業してから…なんてあとあと、ひとまず受からにゃ話にならない。本当はそうでもないんだけど、そう考える方が多いのも心情的にはよくわかる話だ。


 難題は別として、高校化学で使う計算はたいてい比例計算程度の算数、指数関数、そしてpHペーハーのlog計算程度。旧帝大クラスの大学と医学部など難関学部は除くとして、普通の国立大学に入学するならセンター試験は8割、二次試験は7割解ければ上等だから、完璧など目指す必要はない。満点などハナから無理だと気軽に構え、どこまで自分を伸ばせるかという意味で受験を楽しんでいただきたい。

 なぜ満点が無理かって? 
考えてみてほしい。特に二次試験では各大学とも受験雑誌やランキング、赤本を意識して… そう、プライドを掛けて出題するワケだ。その問題が簡単で満点続出なんてレベルだったとしたら…
あなたはその大学に入りたいですか? 

 ね、だから満点取れるような問題は意地でも出せない心理事情なのだ。

 逆に問題作成事情から推察してみよう。例えば30点の問題を作るとする。基礎事項や用語で配点10点、グラフや表の読み取りや分析、そして計算問題で配点10点、そして残りの10点は発展的内容や考察、仮説や実験による検証や応用… そういった構想で出題したとする。ちゃんと理解と計算ができているなら、はじめの20点(6割6分)は取れるのだ。応用問題がちょっと取れれば7割ゲットが現実になる。


 要は「難題を解けるか」よりも、「フツーの基本問題」をいかに取り取りこぼさないか、なのだ。そして… 実はここが勝負の分かれ目だ。満点取る気の勉強は悲愴だし、相手は難問だけに正解することが至難であり、理解も勉強も大変だし間違ってばかりだから達成感も得難い。そんな勉強する間があるなら、苦手教科の穴を埋めた方がよほど合理的だ。


 ちょっと残酷かもしれないが… 裏を返せば「計算問題で取りこぼす」ようでは、ボーダーラインをラクラク超えるのは難しい、ということでもある。たしかに数学ⅢやCではハードルが高いかもしれないけど、化学の計算程度ならなんとかなる。

 正直筆者は計算が得意とは言えない。現役時代もそうだったが、とにかく問題集の解答解説を読んでも読んでもなかなか理解ができず、ひたすら困惑した記憶だけが残っている。

 なぜか…?
ひるがえって思えば、アレは計算が得意な人のやり方と計算式だったからなのだ。

 今この文を読んでいる… ということは、あなたもおそらく計算があまり得意ではないはずだ。だから提案する。
 計算が苦手だった筆者が、どうやって考え、どのように式を立てる訓練をしていったかを。それを御覧いただいた上であなたが評価し、もう一度挑戦し直し、実践してみてははいかがですか、と。
 できることなら「計算に強く」なっていただきたい。それが筆者の、そして皆さんの願いでもあると思うからだ。

 威勢は悪いけど、これを檄文げきぶんとしてあなたに送ります。

 そうだ… ときどきトラップを仕掛けることにしよう。それは…解答解説のどこかにわざと「誤り」を入れておくこと。無論よく見れば「はは~ん」という程度の見え見えトラップだが、しっかり気合いを入れてお読みいただくためのアクセントとして… 常に自問自答しながら疑いの目を持ってしっかり御覧いただきたい。

 では、健闘を祈ります。


【そう振っておいて、周期表?】

 一口に「計算」とはいっても、周期表はどう考えても外せない。思い切ってすっぱりカットとも考えたが、やはりそんな勇気というか、蛮勇ばんゆうはできなかった。
 そんなの解ってるよ、というヒトは②以降の計算演習に行き、もしも解らなくなった時には戻ってきてくれれば良いかと思う。


 個人の感想として、化学に周期表は付き物で、これから逃れる術はない。
どう考えてもない。メンデレーフさん、とんでもないものを考えてくれたよね… と嘆くよりも覚えてしまった方がずっと早いし、とにかく使いこなせるならばこのうえなく便利なものだから、この際覚えてしまおう… それが本稿①の目的である。

 ただ丸暗記はキツイし、覚えたとしても小テストをしのいだあとは結局すぐに忘れてしまうものだ。

 高校生に、よくある失敗例。
とりあえず「水兵リーベ…」と順番に覚えたつもりで、「ぼくのフネ」あたりで酸素Oを飛ばしたりするミスだ。気付けば… (というか、気付かないから×をもらうのだが)、いつの間にかネオンが17族になっていたりして、アレアレ…? みたいに混乱しまくることになるワケだ。

 そうならないようには、どうすれば… ここではそれをお伝えしたい。

 方法はシンプルだ。全部でなくても良いので、一部の縦並び、つまり「族」をしっかり書けるようにしておくことなのだ。縦並びの元素は類似した性質を持つので、周期表と併せて一石五鳥くらいの効果も生まれる。

 一般に周期表で横並びの元素は「徐々に性質が変わっていく」ことが知られている。
 同様に縦並びの元素は類似した性質を持ちつつ、その性質の激しさや穏やかさが上から下へ、または下から上へ増減していくのである。

 だから筆者に言わせるなら… むしろ「縦並び」の方が重要なのだ。

周期表はしっかり覚えよう。手段は問わず… 
結果的には覚えた者勝ちなのだから。


【周期表を語呂合わせで覚えよう】

 横の並びを「周期」といい、右に行くにつれて陽子数および最外かく電子に入る電子の数が増え、元素の性格が徐々に変わっていく。電子が入りきれなくなると次の電子殻に電子が入り始めて周期も1段下に下がる(ただし数字は増える)のだ。

 一方縦の並びは「族」と呼ばれ、主に最外殻電子に入る電子(これを価電子という)数が同じであるという特徴を持つ。不思議なことに、価電子数が同じだと性格が似てしまうのだ。

 さあ周期表よ出てこい、出て来るのだ!  ど どぉ~んっ!

【元素の周期表】:ただし元素記号左の数字は原子番号(=陽子数)

周期    1族  2族     13族  14族  15族  16族  17族  18族
1 K殻   1H  2He
2 L殻   3Li  4Be     5B   6C   7N   8O  9F 10Ne
3 M殻  11Na  12Mg    13Al 14Si  15P  16S 17Cl 18Ar
4N,M,N  19K   20Ca ※ 31Ga  32Ge  33As  34Se 35Br 36Kr

※ 21Sc 22Ti 23V 24Cr 25Mn 26Fe 27Co 28Ni 29Cu 30Zn


 第1周期の水素1Hとヘリウム2Heの電子はK殻に居る。そしてK殻には電子2個までしか入ることができない。K殻の場合、この最大数の2個まで電子を入れた時に原子は最も安定した状態になる。この状態を閉殻へいかくと呼ぶ。

 同様なことがL殻では電子8個を受け入れた(原子番号10のネオン)時に起こる。この状態ををオクテットと呼ぶ。
 M殻でも電子を8個受け入れた時(原子番号18のアルゴン)のとき電子の並び方が心地良く安定したオクテットになり、新たに化学反応で電子を与えたり受け取ったりするのが億劫な怠け者状態になる。オクテットとはギリシア数詞の8、オクト(oct)に由来する言葉で、タコが「オクトパス」なのも8本の足に因んだ名前である。

 ここは読み飛ばして構わないところだが… あまりの心地よさにM殻の定員は18だからあと10個も受け入れることができるのに、19Kと20Caの電子は先にN殻に入っていくという一見奇妙なことが現実に起こってしまう。このあと※に書いてある 21Sc、22Ti、23V、24Cr、25Mn、26Fe、27Co、28Ni、29Cu、30Zn のM殻に残り10個の電子が順次座ることでM殻は完全に閉殻(合計電子数18)になる。この原子番号21~30の元素とその下の元素群れをまとめて「遷移元素」というが、それは原子番号と性質のうつり変わりの関係がはっきりしないことから付いた仇名なのだ。最後にN殻の残りの電子6個が順次座って 31Ga、32Ge、33As、34Se、35Br、36Kr で合計8個のN殻のオクテットになるのだという。これと同じことが次の周期でも起きているのだが… ここまでにしておこう。

 話を元に戻す。
安定とは人間界で例えると「美味いものを腹いっぱい喰って、ちょうど良い気温湿度と風のなかで居眠りしている」感じとでも言おうか… 端的には「ずっとシアワセな天国」状態だろうか。他の原子と電子のやり取りだの化学反応だのそんな面倒なことできるかい… てなもんで、そのままいつまでも今の電子配置を継続したがる状態だと思って良い。

 そんな状態の電子配列を持つ原子が               2He、10Ne、18Ar、36Kr、54Xe、86Rn などである。それぞれ      ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン と読む。 これら18族元素をまとめて「希ガス(rare gas)」、「貴ガス」、「不活性ガス」と呼ぶことが多い。rare(レア)は「希少な」という意味だ。どれもこれも単原子分子(1原子=1分子)の気体であり、他の元素と化学反応をして化合物などを作りにくい、いわばヲタク的性格を持っている。

 逆に言うと「希ガスの電子配列は他の元素たちの憧れ」なのである。他の原子がイオンになったり共有結合したがるのも、少しでも希ガスの電子配列に近付きたいから… ヒトの世で例えれば、有名人や憧れの人の持ち物やファッションや髪型やらを真似たがる… のと似ている感じだろうか。

 3つの例を挙げる。
・1族元素は電子を1つ放出してプラス1価のイオンになりたがる
・17族の元素は電子を1つ余分に持ちマイナス1価のイオンになりたがる。
・水素原子2つが寄り添い、電子をK殻に「共有」して「共有結合」を作る

 こういう「最も安定した心地良い状態になりたがる」という性質は、どの原子にも共通に見られる根本的性格だと言えるだろう。

 ただし野放図にいつでも反応できるわけではなく、
 ・電子をやりとりできる相手と接していること
 ・化学反応を始めるのに必要なエネルギー(活性化エネルギーという)が確保できること
など幾つかの条件が必要である。


【横並び横読み】

 まずは定番の横並びだ。覚え方はいろいろあるが、それをベースや参考にしつつ「自分でアレンジ」しながら覚えるのが最も確実にモノにできる方法のようだ。理系に行くなら、原子番号36まではいつでもどこでも書けるようにしておきたい。

 横並び横読みのごくオーソドックスな例を挙げておく。できればこのままの丸暗記ではなく、あなたが覚えやすいようにどんどん改変してしっかりモノにしてほしい。(あとで筆者オリジナルの暗記法を示します)

 でも… 時代は変わってますからね。これは筆者が高校生の頃に丸暗記した語呂合わせだから。無論これが悪いワケではない。

 それと、原子番号1と2の間がけてあるのも当然理由わけあってのこと。くどいようだけど、縦並びは重要なのだ。みなさんは周期表を書く練習をするときも、是非縦並びを意識して書き進めていただきたい。
 ここでは余白の関係で第3周期を3つに分割しているが、これもぜひ教科書どおりに書くことをおススメする。

第1周期  1H                       2He
      水                        兵
第2周期  3Li  4Be   5B  6C  7N  8O  9F  10Ne
      リーベ(独)  ぼ  く  の   お  フ  ネ
第3周期  11Na 12Mg  13Al 14Si  15P 16S  17Cl 18Ar
      なに  間が ある ships(船の複数形)  来 ら ぁ
      19K  20Ca  21Sc 22Ti   23V 24Cr   25Mn
      か   かぁ  ス コ ッ チ 馬喰(ばくろう) マン
      26Fe  27Co 28Ni 29Cu   30Zn  31Ga
      フェーコ    に  どうも 会えん    が
      32Ge      33As  34Se 35Br  36Kr
      ゲル(独)   明日  せ びろう クリプトン

リーベ(独逸ドイツ語:愛する) ゲル(ドイツ語:カネ)

 嫁(かかぁ)が酒(スコッチ)飲んでフェーコさんという馬喰(ばくろう: 牛馬の仲買人)に会おうとしてもどうも会えない。じゃぁ、明日ゲル(カネ)をクリプトンさんにせびろうか… んんん、論理がハチャメチャだ。そうだ、「どうせ会えん」と覚えると、「せ」を34Seのセレンと混同間しやすくなるので、御注意を!

 間違えやすい場所は原子番号5~8のなかの酸素Oの位置、9のフッ素FをFuと書き間違えること、18のアルゴンを忘れてしまうこと、19と20の取り違えあたりだ。こうした間違いを防ぐには、ところどころで縦並び縦読みで、縦一列を揺ぎ無く揃えておくのが効果的だ。こうしておけば1つ2つ忘れて抜かしてしまってもその縦列(族)で補正できるので、失点は最少限で済むはずだ。

【オリジナル書下ろしの横並び横読み】

 上記の第1周期と第2周期は改変できないほどの名作だ。バリエーションは「ぼくのフネ」か、「ぼくのおフネ」とするかの違いくらいだろうか。よって第3、第4周期をどのように読むか、そこがポイントになる。今回この執筆に機に従来のモノに改良を加えて新作を創ったので、是非暗記の一助にしていただきたい。

 実は… いかにダジャレ好きな筆者でも、現実問題としてなかなかうまく行くものではない。それでも必死で考えた分だけしっかり覚えてしまい… もっとも、今更覚えても他に用途はないのが残念だ!(苦笑)

 みなさんにも是非各自で考えていただきたいが、苦労したりカネを掛けたりした方が覚える方ことも確かなので、熟慮じゅくりょの末、ここは意地悪く「有料」にしておきます。主に学生さんのニーズだろうから20円か30円かにしたかったけど、設定料金の最低ラインが100円なんです…

その分しっかり元を取れるように頑張ってください!
100円以上のコンテンツにはしているつもりです!
いや、むしろこれで100円なら安い!

なお、有料区分になる周期表の原子番号27以降には、
 ・原子番号36までの語呂合わせ暗記法
 ・18族、1族、2族、17族の縦読み語呂合わせ暗記法
おまけとして
 ・周期表と各種の性質
 ・周期表から推測する各種の性質
そして最後に
 ・周期表の小テスト

を用意しています。

ぜひお読みいただき、この基礎部分を完璧に仕上げてください。



【サティの語呂合わせ周期表】

第1周期  1H                       2He
      水                        兵
第2周期  3Li  4Be   5B  6C  7N  8O  9F  10Ne
      リーベ(独)  ぼ  く  の   お  フ  ネ。

第3周期  Na  Mg   Al   Si    P    S    Cl   Ar
      納豆  マジカル 、 警察 ポ リ ス  来る あるヨ。

第4周期  K  Ca  Sc  Ti  V   Cr  Mn  Fe   
 8種類  毛を 刈る  スケッチ  バナナ 食らって 漫画で徹夜。 

ここから先は

4,399字 / 11画像

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?