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野良猫とダメな部分


 スーパーの帰りに定食屋の車の下をのぞいたら、久しぶりに馴染みの猫がいた。

 一年前から住んでるこの街は、野良猫との遭遇頻度が高い。ここの子は、口の下にほくろがある白黒の靴下にゃんこ。クリーム色に青味がかった、立待月みたいなきれいな眼をしている。

 前より近付いても逃げなくなった。つまらん。

 野良猫が自分から逃げていく瞬間が好きだ。しがらみに囚われないで生きている奴らに、自分の薄暗い部分を重ねて傷を舐めようとする。そういう自分の馬鹿でダメな部分が、その瞬間突きつけられる気がするから。

 ——お前になんかわかるものか、と。

 もう少しだけ近付く振りをしたら、店の裏手に逃げてった。本当は、ちょっと触りたかったのかも知れないけれど。

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