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食と性の好みは似る

「結婚する前で良かったですよ、本当に」

彼女はありったけの思いを捨てるようにこの言葉を口にした。
バイト先の11歳年上の先輩は、恋バナが好きだ。
仕事終わりにはいつも、ついこの間まで同棲していた元彼の話を聞かせてくれる。
話す素振りから、忘れられないくらい大切な存在だったのが伝わってくる。

私と先輩が出会ったばかりの時、先輩はいつも愛おしそうに彼氏の話をしていた。
飼い猫と彼氏、夕食当番について、彼氏の職業、彼氏の容姿、好きなところ。
たまには、デートの愚痴まで。

最近になってそんな先輩の口から、零れ落ちるように彼氏の愚痴が増えていった。

「しゃけさんは、彼氏がこうしてきたらどう思います?」
って意見を聞かれることが多くなっていった。

そして暫くして、別れた日の話を聞いた。



「・・・結婚する前で良かったですよ、本当に」

先輩からの愚痴を聞いていると、相手はとんでもない傍若無人。亭主関白。モラハラ。自分が法律か何かだと思っているのか?と思ってしまうような男の人だった。

最初は「育ってきた家庭にも原因があるんじゃないんですか?人格問題ってその人だけの責任とはいえないから難しいですよね」なんてフォローしてみたけど、
後から考えてみれば、そんなの不必要極まりなかった。

その人格がどう形成されて誰の責任であったとしても、その責任を人生かけて負う必要性なんて先輩にはない。その問題点に気づけないその人自身が悪いのに、なんて要らないフォローをしたんだろうと後になってかなり後悔した。


そんな私の後悔の念は置いておいて、
先輩が付き合っていたその人は、食べ物の好き嫌いの少ない人だったらしい。
先輩は、食べるのが好きで食べ物に愛着を持って語る人。

『食と性の好みって似るっていうじゃないですか』

先輩が別れてからその元彼の話をするたびに時々出てきたその言葉。
聞くだけでも女性絡みの多いその人と、バイト帰りにいつも彼氏の話を私に聞かせてくれていた先輩。そんな2人の関係。

食と性って、似るのか。と初めて気付かされた瞬間だった。

・・・

確かに言われてみれば、

・お腹をご立派に育て上げたおじさんサラリーマンは、金額気にせず高い食事をして、より肥えていく姿が目に浮かぶ。

・健康志向の主婦は、好きなもの=ヘルシー・栄養価の高いもの、だろうなあ。

・育ち盛り、下ネタ大好きな中高生男子は肉肉しいものが好きそうだ。

・恋に憧れる女の子は甘いものを好みそう。

年齢や地位からある一部分だけを切り抜いて想像し、どれも個人的で勝手な偏見を並べたキャラクターたちに過ぎないけど、これらを性に転換して考えてみると彼らのそっちの事情がいとも簡単に想像出来てしまう。

お目が高い、ピチピチ好みのサラリーマン。
この年齢で性なんて、と関心の薄まる主婦。
真っ盛りで量食べれればいい、旺盛な男の子。
雰囲気やシチュエーションが何よりも重視な女の子。

なかなかそれっぽい。

・・・

これを読んでくださっているあなたの食の趣味はいかがですか。
初対面で好印象を抱いた異性には、食の好みを聞くのが有効かもしれません。

因みに、私の好きな人は「美味しい」という刺激を、感覚に表現する人。
そして真新しいものにも果敢に挑戦していく人。

私は日々変わり続けて、「真新しい」を生み出していかないと、
飽きられてしまうのだろうか。
あなたの感覚をいつまでも鈍らせることなく、刺激的であれますように。

しゃけ🐟

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