#25「風葬」桜木紫乃
2024年読書録 #25
【あらすじ】
釧路で書道教室を開く夏紀は、認知症の母が呟いた、耳慣れない地名を新聞の短歌の中に見つける。 父親を知らぬ自分の出生と関わりがあるのではと、短歌を投稿した元教師の徳一に会いに根室へ。 歌に引き寄せられた二人の出会いが、オホーツクで封印された過去を蘇らせる……。
桜木紫乃先生、初読。
ここ最近で読んだ作品の中でも、1、2を争うほど良いと感じる作品だった。
夏紀と徳一、メインキャラクターである2人それぞれの目線で語られる人生には一見するとなんのつながりもないように感じられる。
それぞれに違う場所にあり、過去があり、家族がある。けれど、そのひとつひとつを紐解いていくと、絡み合っていく2人の人生。
作家の丸みを帯びた言葉と、北海道の景色の相性が良く、温かみが感じられる。
生きる人も亡き人も同じ時間を生きているこの物語は、“人”が出会い、支え、つながり、離れて、また出会う。そんな巡り合いの世界が美しく表現されている作品だった。
散りばめられている点が、徐々に繋がって一つの線になるようなストーリー展開の作品が個人的に好みなので、テンポよく読み進めることができたのもよかった。
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