友情・努力・勝利のホラー映画『ブラック・フォン』
Q. そんな少年漫画みたいに清々しいホラー映画本当にあるんですか?
A. 本当にあります。
その名は「ブラック・フォン」
絶賛公開中(2022年7月現在)
ジュブナイル
仮面のショタコンおじさんが少年を誘拐、監禁するホラー映画「ブラック・フォン」は、あくまでも誘拐された少年が主人公のジュブナイルである。
だから仮面のショタコンおじさんが何故少年を誘拐するのかとか、少年を誘拐して具体的に何をしたいとか、そんな無粋な情報は一切開示されない。
仮面のショタコンおじさんがどういった過去を持ち、どういった境遇で少年を誘拐し始めたとか、とにかく彼のバックボーンや性癖など、どうだっていい。
語るだけナンセンスなのである。
なぜなら、このホラー映画はジュブナイルだからだ。
常に少年からの目線で我々に語りかける物語である。
誘拐してきた男のことなど少年にとってはどうだっていいのだ。
友情・努力・勝利
「監禁されてんのに友情もクソもねぇだろ!?」って言いたげですね、あなた。
題名にもなっている黒電話がここで重要なファクターを働かせるのである。
少年が監禁されている地下室には淋しく佇む黒電話がある。
勿論、断線されている。
そう、断線されているはずなのに、部屋に響き渡る甲高い着信音。
恐る恐る手に取ってみると、電話の主はなんと“死者”であった。
しかしもう一度言おう。
この映画はジュブナイル。
死者もただの死者ではない。
なんと、過去同じように誘拐され、終ぞこの部屋から脱出する事が叶わなかった少年達からの電話なのだ。
彼らは主人公を助けるためだけに電話を通して語りかけてくるという少年漫画顔負けの激アツ展開。
ここがパチンコならば信頼度90%超えの激アツカットインが挿入されているだろう。
「俺はアイツに敵わなかったけど、お前なら勝てる。」
「俺達の知恵を貸すから絶対アイツに復讐してくれ。」
敗者の無念を晴らすための弔い合戦、ここに開幕。
「ブラック・フォン」が友情・努力・勝利に泣けるホラー映画であることをご理解いただけただろうか?
それが理解できたのなら、もうコレより先は読まなくていいから今すぐ映画館に走れ。
映画としての質の高さ
この映画はホラーやジュブナイル、スリラー、家族愛や友情、脱出系など、目まぐるしいほどのジャンルや要素が混在しているにも関わらず、見惚れてしまうほどにまとまりがいい。
なぜなら、脚本の出来がクソみたいに良いからだ。
乱立するジャンルや構成要素、どれ一つおろそかにする事なく、広げた風呂敷をちゃんと2時間以内に畳んで終幕する脚本の上手さは見ていて非常に気持ちがよかった。
あなたは知らないかもしれないが、ホラー映画なのにスカッと清々しい気分になれるというのは想像の3000倍気持ちがいい。
この7月、それぞれ別のホラー作品を観るために1日に3軒映画館を行脚した私が言うのだから間違いない。
ブラック・フォンを見た後は映画館を出てウキウキの足取りで温泉に直行したくらいだ。
この日はホラー映画で感度3000倍サウナをキメた。
最後に
ジャンプスケアや、多少のグロシーンはあるものの、そこまで恐怖演出に全フリしてるわけではなく、むしろ上で述べているようにジュブナイルを軸にした巧みな脚本で勝負してくるこの映画は、ホラー初心者にも勧められる1本である。
7月は他にも数本ほどホラー映画が上映されているが、間違いなく「ブラック・フォン」が1番大衆向けであり、とても夏らしく後味の良い清涼感を味わえるホラーであった。
もしこのnoteを観て、少しでも気になった人がいたら是非とも映画館に足を運んでほしい。
1人でホラーは不安だなって人は友人や家族を誘ってみるのもいいだろう。
何せ「ブラック・フォン」は友情や家族愛が根底にある物語だ。
友人や家族と観るのも、また一興があろう。
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