IMAXレーザーGTで映画を観た。
想像してください。
目の前にあるのは札束の山。
ざっと500億円あります。
誰に咎められることもなく、これを自由に使える権利があるとしたら、貴方は何に使いますか?
大抵の人は、美味しいものを食べたいとか、高級車を買いたいとかとか、豪邸を建てたいとか、もっと俗世的なところで言うと、好きなゲームに課金したいとか、競馬で大博打を打ちたいとか、良い女を抱きたいとか、まぁそんなところでしょうか。
はい。
所詮、そんなところです。
ハッキリ言って、これらの欲望は500億円という大金の前ではお釣りが返ってくるレベルのビジョンでしょう。
上に挙げた例も、おそらく貴方の想像した使い道も、きっとこの途方もない大金を使い切るに足るほどの欲望ではありません。
我々凡才は、ある日突然手渡される500億円を到底使い切れるわけもなく、それどころか使い道を具体的に思いつくことすらできないんですよ。
さて、話は変わりまして、先日初めてIMAXレーザーGTで映画を観ました。
“IMAXレーザーGT”とは一体なんなんだという詳しい話は他サイト様に任せるとして、ここでは掻い摘んで説明しますが、要は日本にたった2館しか存在しないバカクソデカデカ最強アルティメット極スクリーンのことです。マジでウォールマリアくらいでかい。
観た映画は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、感想は過去にツイートしたので下にぶら下げときます。
そういえばアバター観た。J.キャメロンの海オタクっぷりが全開で気持ち悪かった(褒め言葉)。クライマックスで「海とは母なるナントカで〜生と死の狭間を〜」みたいな海ポエムが挿入されて、制作費500億円のオタク語りが始まるのマジでキツい(褒め言葉)。
— メリーでかでかクリスマス (@4v0Lh) January 2, 2023
沈没する船の中、生と死の狭間で孤立する家族たちの唯一の生還ルート=ウェイオブウォーター(海の道)を通って帰還するラストシーン、メッセージを映像化し具現化しタイトル回収まで果たしてしまうJ.キャメロンの才能が際立ってて、クソでかいスクリーンから“““巨匠”””を感じたな。
— メリーでかでかクリスマス (@4v0Lh) January 2, 2023
良い映画でした。
本当に良い映画だったんです。
齢68歳、好きなものをトコトン突き詰めて、カタチにして、魂込めて、全世界に向けて配給するジェームズ・キャメロンというおじいちゃんは本当にカッコいい。
心からそう思える素敵な映画でした。
でも今日は、その話をするためにこのnoteを書いてるんじゃないんです。
ジェームズおじいちゃんや彼の作る映画が最高だったって話をするために筆を取ったわけじゃないんですよ。
それでは、話を500億円の話題に戻しましょうか。
先ほども述べましたように、我々凡人は500億円を運用するに値する器の持ち主ではありません。
しかし、ジェームズ・キャメロンという偉大な映画監督兼冒険家兼国家錬金術師は違います。
彼は約4億ドル(≒500億円)という札束から『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を錬成しました。
私がウォールマリアのように巨大なIMAXレーザーGTのスクリーンで観たこの映画は、そこで放映するに相応しい紛れもなく世界最大級の大作映画だったんです。
だからこそ、打ちひしがれました。
敗北感すらあります。
海の向こうで制作されたあり得ない規模の映像革新娯楽映画が、海の向こうで開発された最強の映写環境で流されている現実。
映画を見た後、言葉にできない感情が胸の奥で少しだけモヤモヤしていました。
たとえ日本で500億円という大金を用意できたとしても、アバターと同じ水準の娯楽映画を作ることはきっとできないでしょう。
だって、我々の生きるこの国では、そんな規模の邦画を作ったことのある日本人なんていないのですから。
例えば邦画の実写映画で最大規模の作品といえば『20世紀少年』シリーズ3部作が当たりますが、全章合わせても制作費はたった60億円です。
邦画最大級と言われる作品の、しかも3部作の合計ですら、アバター1本の制作規模の1/8にも満たしません。
残酷すぎるくらいに日本とアメリカの映画産業はスケールが違うのです。
この事から察するに、たとえ目の前に500億円があったとしても、それを余すことなく動かして指揮をとり、1本の映画を作ることのできるプレイヤーは恐らく日本には存在しないと言えましょう。
少なくとも、こと日本映画産業に於いては、そこまで大きなビジョンを思い描いて創作活動に邁進できる稀代の天才が仮にいたとしても、また、これから現れたとしても、その腕を遺憾なく発揮することは市場規模の観点から現実問題厳しいものがあるのです。
さらに言い換えますと、日本にはIMAXレーザーGTが2つありますが、非常に残念ながら日本の映画産業はこれらスクリーンのお眼鏡に適う映画を作れるほど進歩していないとも言えます。
『ドライブ・マイ・カー』がオスカーを獲得したとはいえ、やはりまだまだ映画においては後進国。
極東の島国に生きる我々は、ハリウッドという下地の上で常に進化し続けるアメリカ映画産業が、世界に向けてドヤ顔で提供するスペクタクル映画を、理屈もろくにわからなくてクソでかい壁面のようなスクリーンを介して一方的に享受して感動することしかできない敗北感。
IMAXレーザーGTで観たハリウッド産のアバターは誰がなんと言おうと間違いなく今世紀最大で最強の映像体験だったと認めざるを得ません。
そして、だからこそ、私が生きてる間に、IMAXレーザーGTの映写環境をこれでもかと堪能できる純日本製の邦画が産まれるといいなァと思ったっていうボヤキ、ただそれだけのnoteです。
おしまい。
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