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2024.6 貝殻

6月が終わろうとしている。
慌しかった気がするけども成果物として残っている写真を見るとなにもしていなかった気もする。私にしてはよく動いていた気もするし、暇だった気もする。
過ぎ去ったことはいつでも不確かだ。

6月のなかば、海に行って貝殻を拾った。
かわいい貝殻だ。持ち帰ってから写真を撮った。

はるか昔、理科の教科書にこんな写真が載っていた気もする。

貝は存在が好きだ。なんだか密やかで、慎ましく、静かな感じがする。
耳に当てると波の音がすると言われていたり、
貝殻の持ち主が死んだあと、静かに波の間を潜って浜辺にたどり着いてくれたというロマンチックさもある。

真珠層を持った貝殻

そういえば小学生のとき、校庭に砂場があって、そこの砂に小さな、5mmくらいの貝殻がよく混じっていた。
私はそれを休み時間いっぱい拾い集めるのが好きだったが、悲しいことに、ひとりぼっちで可哀想な子だと思うのか周囲の人々がよく話しかけてきた。
そのたび、子どもながらに思ったものだ。ほっといてくれ、と。
貝殻を集めるのはほんとうに楽しくて、授業の時間が、時間という概念が恨めしかった。時間さえなければずっとそこにいられると思っていた。
細長い巻き貝の繊細さや、小さくて、力を入れればすぐに壊れる繊細な平たい貝をずっと眺めていたかった。

幸いなことに私は大人になり、日がな一日海岸で貝殻を探していても誰にも何も言われない身分になった。
もう私を心配する大人もいなければ、親切に話しかけてきてくれるクラスメイトもいない。
子どもの頃に味わった恨めしさを今ここで発散しているのかもしれない。
私はこれからもきっとひとりで貝を集める。

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