かみーゆの選ぶ2020年ベストアルバム 20-1位

アルバムはいろんな方がレビューだとかコメント色々書いていると思うので、軽めに行きます(多分)。後から振り返ってインタビューとかちゃんと読んでコメント書いたほうが為になる気もするので(やるか知らないけど・・・)。

【編注】2021年1月1日、誤字脱字の見直し、画像の追加など行いました。ちなみに、対象は例年通り2019年12月~2020年11月までのものです。

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20. Kali Uchis "Sin Miedo (del Amor y Otros Demonios) ∞"
Kali Uchisのセカンド・スタジオ・アルバムは全編スペイン語のコンセプトアルバム。ブレイクした頃にブロンドの白人セレブかのように振舞っていた『Por Vida』時代を今でも覚えているので、コロンビアの出自をこうして表現しつつ、パーソナルな世界観を突き進めているのを見れるのは興味深かったです。

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19. The Killers "Imploding the Mirage"
かみーゆファンの皆様なら、The Killersが実は大好きであることをご存じかと思いますが、個人的に"Imploding the Mirage"は2010年代以降で初めて「これは!」と思えるアルバムでした。先行シングルの"Caution"や"My Own Soul's Warning"には今までのThe Killersっぽさが感じられるにもかかわらず、サウンドはこれまでにない奥行きのあるものになっていて、それをアルバム全体ではさらに推し進めているような感じになっています。Weyes Bloodやk.d. langとの意外なコラボレーションも全く違和感なく、初起用のプロデューサーJonathan RadoとShawn Everettとの相性も非常に良いのではないかと思いました。まだまだこれからの進化が楽しみです。

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18. Chloe x Halle "Ungodly Hour"
90~00年代のR&Bにインスパイアされたサウンドで、”悪びれない”メッセージを発する2作目。今作でもBailey姉妹が全曲でソングライターを手掛け、セルフプロデュースを行った曲も数多くあるのですが、SounwaveやDisclosure、Mike Will Made-It、Nasri、Scott Storchなどのプロデューサーを迎えることで、これまでより幅広いサウンド上で二人の美しいハーモニーを堪能することができます。

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17. Hayley Williams "Petals For Armor"
ParamoreのHayley Williamsによる初のソロ・プロジェクト。この前にリリースされた2枚のEPがそのまま収録された今作は"Petal for Armor"シリーズの完結編となります。正直傑作とまでは言えない作品だとは思うのですが、音楽的にも感情的にもHayleyの奥底にあったクリエイティビティや感情がしっかりと表現されており、「なぜソロ作品を作る必要があった」のかという問いにしっかり答えています。今作は特にSade、Solange、Erykah Baduといった黒人アーティスト、さらにバンドを支えてきた黒人ファンたちにインスパイアされた作品とも語っていて、独特のリズムの取り方だったり、Paramoreではできないであろうニュアンスで歌う曲が増えていて、Hayleyの引き出しの多さに改めて驚きました。

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16. Flo Milli "Ho, why is you here ?"
Instagramで注目を集めるところからラップのキャリアが始まり、SNSを駆使しながらその圧倒的なスター性で今年大きく飛躍したFlo Milliのデビュー・ミックステープ。まるで口から文化祭状態、Instagramのコメント欄みたいなウィットに富みつつも歯に衣着せぬ物言いは、20歳の若者らしいリアルさ。ワンライナーなラップというとIggy Azaleaの昨年の新作を思い出させたりするのですが、歯切れよくこなすカリスマ的なラップと自然体のユーモアはFlo Milliしかできない芸当なのだなと思いました。

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15. Moses Sumney "græ"
Oneohtrix Point Never、Thundercat、Jill Scott、James Blake、FKJの他、Ezra MillerやTaiye Selasi、Michael Chabonまで参加したセカンド・スタジオアルバム。Moses Sumneyの繊細な歌声が、アトモスフィアなサウンドに溶け込み、ジャンルを超越した神聖な内的世界が広がります。

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14. Polo G "THE GOAT"
昨年の『Die a Legend』が高い評価を集めたPolo Gの2作目。今人気のラッパーの中でもPolo Gは、ストーリーテリング力とそこに説得力を持たせるウィットの効いた言葉遊びや感情の入れ方が秀逸ですね。それでいてラップ自体がかなりメロディアスなので、メインストリーム向けのパーティーアンセムとかを乗りこなす器用さもあって、そのPolo Gの持つバランス感覚が前作よりうまく取れているのがこの『THE GOAT』だなと思っています。

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13. Declan McKenna "The Key to Life on Earth"
1960年代や70年代のロックから大きな影響を受けた、宇宙がテーマのDeclan McKenna2作目。まだどこに向かいたいのかわからなかったデビュー作を経て、David BowieやElton Johnを想起させるグラムロックな路線になったのは割と驚きでした。ファッション的にはジェンダーレスだったけど音楽的に逆にコンサバになってしまったHarry Stylesと比較しても、前のめりなプロダクションや有害な男らしさを否定する自然体のファッションはジェンダーレスである意味Harryよりもっと前衛的だったかも。

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12. Lianne La Havas "Lianne La Havas"
盟友Matt HalesとLianne La Havasの共同プロデュース作となった3作目。「自然の生命のサイクル」をテーマにした今作は、最初と最後に"Bittersweet"の別バージョンを配置することで、様々なライフステージが繰り返される人生を表現しています。アコースティックなネオソウルの路線を推し進めつつも、より大人になった彼女のリッチなヴォーカルと素直な感情の吐露が胸に響く作品。どこを切り取っても美しい”人生”のアルバム。

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11. Megan Thee Stallion "Good News"
2020年最大のアイコン、そして最も勢いのあるラッパーとしての期待を一身に背負った正式なデビュースタジオ・アルバム。「ちゃんとしたアルバムは”結婚”みたいなもの」だからミックステープよりも熱心に制作をしたと語っていましたが、そのせいで良くも悪くもポップすぎる曲があったり客演が多すぎたりと、全体的に調和を取り過ぎてしまっているかなと感じてしまいました。それでもTory Lanezを揶揄するトラックの他、ボディ・ポジティビティを掲げる曲やセックスに関する赤裸々な曲まで多彩かつウィットに富んだラップが堪能できるのはさすがです。多分もっとすごいの期待していたけど、今はそれも気にならないくらいのアイコンなので全然オッケーです!

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10. Róisín Murphy "Róisín Machine"
Róisín Murphyの5作目のソロ作は、ノンストップのディスコ・ダンスアルバム。今までちゃんと聴いてこなかったので、どう音楽的に変化したのかわからないのであまり語れないのですが、煌びやかなディスコ風ポップがメインストリームで流行しているこの時代に、ジャズやファンクなど様々なジャンルが融合した趣深いダンスミュージックを聴けるなんて贅沢だと思いませんか。

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9. HAIM "Women In Music Pt. III"
前作に引き続いてのAriel Rechtshaidの他、Rostam BatmanglijとDanielle Haimが共同プロデュースを務めるHAIMのサード・スタジオアルバム。鬱、不安、病、冷酷な社会への怒りなど様々な感情が交錯するこの3作目は2020年の世相も反映し、結果的に強いメッセージ性を放つロック作品になりました。前作の70年代ポップのような懐かしい要素はありつつも、レゲエやヒップホップ、ジャズ、ファンク、R&Bなど様々なジャンルを織り交ぜて音楽的な冒険を繰り広げることで、HAIMのポテンシャルの高さを再び見せつけてくれます。メロディアスなポップソング群であるところはそれでも一貫しており、一つのアルバムとして筋の通ったアルバムとなっています。

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8. Bad Bunny "YHLQMDLG"
今年は2枚のスタジオ・アルバムと数多くの客演をこなすなど精力的に活動し、名実ともにレゲトン・シーンを引っ張る存在となったBad Bunny。2作目のスタジオ・アルバムである『YHLQMDLG』では、Bad Bunnyがレゲトンの枠に収まらないユニークな存在であることを改めて証明しています。ドラマチックな展開を見せる曲は前作に比べて減りましたが、高い評価を集めた"Safaera"のような曲では一つの曲の中で様々な表情を見せ、"Yo Perreo Sola"や"Ignorantes"などでは現代社会に対するメッセージを発する姿勢を見せるなど相変わらず鮮やかな身のこなし。全米チャートでもスペイン語アルバムとしては異例の大ヒットを記録し、確実にグローバルスターの片鱗を見せ始めているカリスマ的な1枚。

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7. Fiona Apple "Fetch The Bolt Cutters"
Fiona Appleの5作目のスタジオ・アルバム『Fetch The Bolt Cutters』は、今年最も批評家から絶賛された作品となりました。手作り感のあるエクスペリメンタルなサウンドに、キャッチーでわかりやすいメロディが融合されており、大衆芸術作品としての新たなクラシックと言える出来なのは疑いようもないのではないかと思います。きっと、もっと聴けば理解が深まるのだろうというところで、まだ消化しきれてないのでこの順位で。

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6. Jessie Ware "What's Your Pleasure?"
通算4作目となるJessie Wareの4作目は、まさかのクラブ・オリエンテッドな快楽に満ち溢れたグルーヴィーな作品。前作でのバラード中心の大人なソウル現代解釈的作品も嫌いでなかったのですが、そこからデビュー作のダンス・サウンドを取り戻しつつ、大人な風格漂うディスコ作品を完成させたのもキャリア的に自然な流れでした。誰もが平等かつ安心して楽しめるピースフルな架空のダンスフロア!

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5. Run the Jewels "RTJ4"
Killer MikeとEl-PによるRun the Jewelsの4作目のスタジオ・アルバム。George Floyd、Breonna Taylor、Ahmaud Arberyの死を受けて熱が高まっていたプロテストの状況から"Fuck it, why wait"と2日早めてリリースされたこの作品は2020年の政治状況を最も反映した1枚となりました。パンチの効いたトラックの数々と、皮肉を交えながら真実を語るKiller MikeとEl-Pのラップの組み合わせは大胆かつ中毒的でした。

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4. Rina Sawayama "SAWAYAMA"
日本生まれイギリス育ちのシンガーRina Sawayamaのデビュー・スタジオアルバムは、まさに彼女のルーツを追体験できる2000年代のメインストリーム音楽とJ-POPの見事な融合。複雑な人種ルーツ、クィアネス、社会問題への関心を自身の経験を基に"SAWAYAMA"の音楽に昇華し、予測不可能で大胆なポップソングが繰り広げられていきます。2020年現在だと、ダサくなることを恐れてあまり手を出すアーティストがいないであろう、2000年代の景気のいいポップソングをベースに、大胆なアプローチで展開していくこのアルバムはもはや全く違う領域のアート。

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3. Perfume Genius "Set My Heart on Fire Immediately"
”男らしさ”を強調したアートワークからも「何かが今までと違う」と感じさせる、Perfume Geniusの5作目。バロック・ポップだけでなく、シューゲイザーやアンビエント、カントリーロックなどの要素を取り入れた音楽世界の中で、これまでの内向きだった世界観から、今作では”解放された”感があります。一貫として陰湿で憂鬱なムードが漂ってはいますが、その美しく深みのある音楽世界はPerfume Geniusの最高傑作と呼ぶにふさわしい作品と感じます。

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2. Dua Lipa "Future Nostalgia"
始めは正直、Rihannaにおける『Good Girl Gone Bad』位の作品かなと考えていましたが、私が間違っていました。YES、これは2020年を象徴する完璧なポップ作品です。そもそも、収録されているほとんどの曲が話題になり、愛されたメインストリームのダンスポップ作品って近年ほとんど記憶になりません。そして、ある意味Billie Eilishよりポップスターらしくない存在だったDua Lipaがそんなアイコン的立ち位置になるとは!素晴らしいプロダクション、キャッチーなフックの連続、聴き手を飽きさせないアイデアと割り切った短い構成。戦略的だけど、愛すべきポップ作品でした。

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1. Phoebe Bridgers "Punisher"
1位は迷いませんでした。はい、Phoebe Bridgersの"Punisher"です。最初から最後まで、ミニマルで無駄のないしかし奥行きがあり、時に大胆なプロダクション。興味深いリリック。壊れそう、しかし丁寧なヴォーカル。Elliott SmithやJoni Mitchellを思い出させる繊細で美しいメロディー。アルバム全体のトーンは暗く、悲しみや鬱が心の奥にある怒りを押し殺しているようにも思えるのですが、それが"I Know The End"の最後の叫びで浄化されていくカタルシス。墓場まで持っていきたい、2020年に出会えるとは思わなかった繊細で深い悲しみのアルバムでした。

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