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所有し得ないものを所有する方法

私の中で、図書館が好きであることと本屋が好きであることは、全く別の問題です。明確な使い分けをしているわけではないけど、なんとなく感覚が変わります。

最近買った本は、「手元に置いておきたい本」のセクションで紹介しています。

図書館と本

図書館には、司書が利用者に対して個々に求める資料を提供したり、その探し方を教えるレファレンスサービスというものがあります。似た内容ごとに書架に並べたり、目次をデータ化して検索に引っかかるようにしたり、情報を見つけやすくするのも司書の仕事です。
司書って本専門のコンサルタントさんみたい。

中学生の頃、図書室の司書が大好きでした。個人的な相談も聞いてもらっていて、本を探していたわけではないのに、私の話を聞いて彼女は本を紹介してくれた。当時の私は救われました。

でも、その本を私はもう手にしないと思います。
もうその悩みは解消してしまったから。

図書館は必要なとき必要な情報を手に入れるための場所です。せっかく司書さんに紹介してもらっても、使える情報をちょっとお借りして、用が済めばさようなら。

本という媒体によって「体験」を生み出す場所こそが図書館だと、私は思うのです。

本屋と本

例えば今、目の前に美しい風景が広がっていたとしたら。それは長崎の夜景でも、リゾートの海でも、怪しい森の奥でも構いません。

その風景を自分のものにしたいと思ったとき、どうすればいいのか。写真に撮ったり、絵に描いたり、日記を残したりするでしょうか。

私なら、その風景が写っている写真集や、そこが舞台になっている小説を購入します。有名な観光地ならガイドブックでもいいな。
そうすることでその風景をも手に入れたような気持ちになれるのは、私だけでしょうか。

昔から、本屋で探すのはもちろん、図書館で読んで気に入った本を買ったり、電子書籍として購入した本だって、手元に置いておきたければ紙の本を探しています。
読みもしないのに買ったりもします。かといって「読まないなら私に売ってよ」なんて言われても絶対渡せないんですよね。

本屋は書籍に掲載されたコンテンツの「所有」を生み出す場だと感じています。この場合、欲しいものが分かっていれば通販でも変わりません。

手元に置いておきたい本

先日は、神保町の三省堂書店でこんな本を買ってきました。

岩井勇気『僕の人生には事件が起きない』

ハライチのオタクの方、岩井さんが書いたエッセイです。巷で話題らしい。

余談ですが、ハライチといえば、岩井さんが矢継ぎ早に音が似ているだけの意味のない言葉を投げかけて、澤部さんがノリボケしていくシリーズが有名ですよね。実は違ったテイストのネタも面白くて、特に「RPG」というネタが最高です。もはや芸術。

そんなハライチのネタも、岩井さんのトークも自分のものにはできないけど。この本を懐で温めていると、岩井さんの不思議なインスピレーションが形になって手元にあるような気がしてなりません。

その2週間後、また神保町の三省堂書店が私を呼んでいたので、今度はアウトレットの棚から新しい子を連れて帰りました。

シリーズらんぷの本『少年少女レトロ玩具箱』

大好きな「らんぷの本」シリーズ。駄菓子屋さんにありそうな、レトロかわいいおもちゃとパッケージがこれでもかとばかりに載せられています。

こういうモノって、お金と情熱があればいくらでも集まるのかもしれないけど、それが中々難しいもので。でもこういう本があると、実物を手に入れられなくてもなんだか満足できちゃいます。

所持し得ないものを所持する方法

映画や音楽も、本のように風景を写しとることができる媒体です。ただし、このように媒体として考えるなら、映画館やコンサートは図書館と同じ。所有物になり得ない「体験」だけが残っていきます。

それがDVDやCDになれば「所有」という関係になるのかな。ストリーミングでも消費できるのに、好きな監督やバンドの作品なら持っていたいし、大切に棚にしまっているだけで満足できるのも本に近い感覚だと思います。

ではDVDやCDを購入することが本と全く同じかと言えば、必ずしもそうではありません。これらを再生するためのデバイスが必要だからです。
円盤はあくまでデータの保存容器であって、そのものだけでは成り立たないという点では、保存と消費がひとつで完結する本の方が優れているかもしれませんね。

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