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サッカーボールと絵の具 そんな日々②R-18(pixiv_2015年6月16日投稿)

今までは全くなかったが、槇と寝るようになってから人物にも興味が湧くようになった。
作り、躍動感、造形、動き。
普段見慣れた『芸術品』はそこかしこに存在していて、意図して見ればとても興味深い。
年齢、背格好、性別、癖、全部違う。
気になればクロッキーして時間が経つのも忘れた。
ちなみに、スケッチは時間をかけて対象物を描くこと。よく外で風景描いてる人が居ますね。あれです。
クロッキーはおおまかな動きを数秒で描き写すこと。線数本で表したりとかもあります。動きまわる子どもや動物を描くのはこれですね。
学生の頃はあんまり好きではなかったのに。
10秒で俺を描け!、せーの、と先生が動き回っていたのを思い出す。
人物なんか一生描かねえよと大して本気で取り組まなかったあの時の自分を、後ろから強目に頭を叩いてやりたい。

大概は槇を描く。
見ていても飽きないもの、だから。
料理をしていたり、目の前を歩く姿だったり、ノートにメモしていたり、本当にそういうなんでもないものを描く。
だから気付かれない。
今も凝り固まった体を解そうと伸びている後ろ姿を、キッチンで洗い物をしているふりをしながら描き留めておく。
数本の線だけの槇。
槇の知らない、槇の姿。
「何か飲む?」
「おー…、」
声を掛けると、ソファーに肘をかけて振り返る。
その姿も描き留めたいと思ったけれど、気の抜けた笑顔を見るとクロッキー帳よりも本物を見ていたくなるから仕方ない。

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