『 ハロー、メランコリィ 』
「 ハロー、メランコリィ 」
音楽・動画:かふぃー
歌詞:のんです
満月が夜を知らせるころ、コウモリたちはなにやらヒソヒソと話し始めました。
紫色の空の下で冷たい風が吹く、このひどく不気味でとっても憂鬱な今日に、ひとりの15歳の魔女は誰かを殺す準備をしていました。
これは、その魔女の10月31日のお話です。
ー 18:30 ー
「じゃあ、夜の10時にまた」
「うん!仮装しおわったらうちに来てね!」
「わかった、お菓子も持っていくね」
冬を迎えたこの時期はすっかり肌寒く、太陽が沈むのも早いです。手を振り合って、2人は"楽しいお別れ"をしました。
お別れなのに寂しくないのは、また夜に会う約束をしているからです。昼と夜で1日に2回も遊べるなんて、2人にとってはとても嬉しいことでした。
今夜はハロウィン・ナイトです。2人で仮装をして街を歩く、特別な夜です。
しかし、2人のうちの1人は、本物の魔女の女の子でした。魔法が上手で、暗い夜なんて怖くないし、ホウキで空だって飛べます。
そんな彼女にも、初めて恐ろしい夜がやってきました。
ー 19:30 ー
家に着き、今夜持っていくためのお菓子を作り始めました。
"魔女は人間に恋をしてはいけない"
"もしも両想いになれなかったら、1番はやく来た満月のハロウィンの夜に、その相手を殺さなきゃいけない"
これは、小さい頃からずっとママに言われてきた、魔女が絶対に守らないといけない約束です。
そして、彼女自身、人間に恋なんてするはずがないと思っていました。
それなのに、小さい頃からずっと"友達"だった人間の女の子に、少し前から特別な気持ちを持ち始めてしまっていました。
街が寒くなるつれて、その女の子のことをどんどん大好きになっていき、とうとう15回目のハロウィンを迎えてしまったのです。
「こんな風に想ってるなんて、きっと気持ち悪いだろうな…」
そんな事を考えながら、お菓子を作り続けました。
「このお菓子に、一生私のことを好きになってくれる呪いをかけたら、きっと、殺さなくても……。」
ー 20:30 ー
気持ちが落ち着かないまま、窓から夜空を見ました。
「……どうして満月なの……?」
大きな満月が、まるで愚かだと彼女を嘲笑うように高くなっていきました。
ー 21:30 ー
ボウシをかぶってホウキにまたがり、星に届くほど高く飛びました。
少し休もうと留まった時計台の上から、"見張り者たち"が着いてきていることに気が付きました。
きっとママが呼んだのでしょう。
時計台から降りて、まっすぐに大好きな女の子の家に向かいました。
ー 22:30 ー
「ちょっと遅くなっちゃった、ごめんね」
「ううん、来てくれてありがとう!魔女の仮装すごく似合ってる!」
いつも通り楽しく話していたら、すぐに夜は深まってしまいました。
「…ありがとう。それで、これ…作ってみたんだけど、どうかな」
「わあ、お菓子!おいしそう……!!」
「………食べてみて」
「いいの??やった!!」
もうすぐ、0時になります
ママもきっと、2人のことを見ています
「…………やっぱり…ごめん…っ」
喜んでお菓子をほおばろうとするのを見て、何もかも耐えられなくなり、大好きな女の子の胸を刺しました。
「ごめんね、ずっと大好きだったの………でも、きっと、私じゃ、だめだから………ごめんね、ごめんね…………」
泣きながら謝る本物の魔女の背中を、女の子は力なく撫でてくれました。
「………私も…人間で、ごめんね……ずっと、大好きだよ」
しばらくして、女の子はもう動かなくなりました。
「………みんな見てるんでしょ……ねえ…私を、殺してよ…………っ」
泣き叫んでも、恐ろしい夜は血だらけの2人をただ笑うだけでした。
何百年も経ち、世界はすっかり変わって、ハロウィンの習慣も無くなりました。15歳だった魔女は、その後誰にも恋をすることなく独りで年老いていったのでした。
おしまい!!ぴ~~や
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