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国の借金が過去最高?(2)       ・・・銀行が国債を買わなくなる?

(1)に引き続き、「民間銀行が国債を買うとは決まっていないのではないか? 買わなかったら売れ残って、政府は円を調達できないではないか」という質問にお答えします。少し専門用語が入りますが、御了承ください。
 
まず、「発行された後の国債を、民間の投資家などが、儲けを狙って後から売ったり買ったりする」ことは、一種の「民間同士の投機:ギャンブル」ですので、国家財政には関係も影響もありません。あくまで「政府が売り出す」時だけが対象です。
 
「民間銀行が国債を買えない」状態は、「日銀当座預金内の法定準備預金が足りない」、すなわち「民間銀行において、一般への貸出しがメチャクチャ増えた」状態ならあり得ますが、そんな状態ならすでにデフレではありませんので、国債を大量に売って政府支出をガンガン増やす必要はないと思われます。

一方、今は日銀当座預金内にブタ積み状態です。そのような状況では、当座預金内にただ置いておくよりは、利率はわずかでも額が大きい(億円単位)ですので、銀行は国債を買って少しでも利息を稼ぎ儲けようとするでしょう。法定準備以外の金が日銀当座預金に余っていれば、「超過準備付利」よりも国債を買った方が得な場合には、必ず国債を買うでしょう。その方が利息分だけ利益が増えるのですから、営利企業として当然そうします。「円」と「円建て国債」の信用力は、いずれも日本政府が保証していますので「同等」です。信用力が同等ならば、利息の高い方を持つのは当然です。

現在は、「国債を最後まで保有しているとマイナスになる」というものがあります。マイナス金利の国債ですね。しかし、その場合でも売れています。なぜそんなものを民間銀行は買うのか? 業務上背任じゃないのか? その理由は、「満期まで持ち続ければ損をするけど、民間銀行が絶対に儲かるように、途中で日銀が国債を買ってくれる」ことがわかっているからです。

「いや、日銀に嘘つかれて買われなかったら、民間銀行は困るじゃないか」
はい、そうですね。でも、そんなことをすれば金融が大混乱となります。日銀の使命は「金融を安定させること」ですから、日銀はそんなことはしないのです。それをお互いに信用して成り立っているのです。消防士が火事の現場に来て「水がもったいないから放水しない」というようなことと同じで、あり得ないのです。

時々「国債が売れ残る=未達」が起きるので、「国債が買われなくなる!」と心配して騒ぐ人たちがいますが、「買わない」のではなく「1銭でも安く入札したい」との駆け引きで取引が成立しないだけと思います。たかが1銭でも、額がデカければ数百万・数千万円の差になるのです。財務省は未達は全く心配してないようです。

「国民から預けられた預金が残っているうちは買えるが、それが尽きたら買えなくなる」とか「銀行が国債を買えば、銀行から民間企業への貸出しの原資がなくなり、民間企業は借りられなくなる」とか、そのような言説が世間を飛び交っています。彼ら/彼女らが意識して嘘を垂れ流しているのでなければ、彼ら/彼女らは、本Noteで述べた日銀ネット・日銀当座預金や国債と通貨の仕組みをほとんど理解していない、ということになります。恐ろしいのは、それらの多くが「経済評論家」だったり「経済学者・経済学教授」だったりすることです。

本Noteで述べたように、国債の売り出しはほぼ閉じた系である日銀ネットの中で行われ、市中を回っているお金とは隔絶されています。したがって、「銀行が国民の預金で国債を買う」ということはできないのです。そもそも「国民の預金」は「銀行にとっては負債」なので、ハナからそんなことは無理です。むしろ「政府が国債を売って、そのお金で国民からモノやサービスを買う(政府支出・財政出動)ので、政府からの支払いを受けて、国民の預金が増える」というのが真実です。また、民間銀行が民間企業に貸出しを行う際には、さしあたりは原資は不要です(現金引き出しや振り込みに対応するお金は必要ですが、他のさまざまな取引と相殺されるので、貸出額に比べれば相当少額です)し、そもそも日銀ネットの中のお金を民間企業に貸すことは最初からできませんので、全くの的外れ・事実誤認と言って良いものです。そのような言説が、大手を振ってまかり通っている日本の状況は、本当にヤバいものがあります。本当に、一から勉強しなおしてほしいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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