勇妹(ゆうまい)と智兄(ちけい)のものがたり

勇妹と智兄の物語👧🏾🧒🏾

あるところに、イサメという少女がいました。彼女には、チシャという兄と、ハルキタルという姉がいました。母の名は、サッサと言います。
ある日、イサメがチシャと一緒に遠くの井戸に水汲みに出かけている間に、家から物音がし、一点俄にかき曇り、悲鳴と太い低い笑い声が聞こえました。古の龍、ニシキが母か姉を攫って行ってしまったようです。2人は焦りました。どちらも心配です。2人はオケを放り出して一目散に家へ帰りました。帰ると荒れ果てた家に怪我をして横たわる母サッサの姿がありました。チシャは軽い引っ掛かりを感じつつ、何事かと尋ねています。サッサが言うには、「私は儀式、モンスの力をニシキに封じられてしまったから、何もできなくて、、、あなたたちがハルを取り戻して。」チシャはさらに引っ掛かりを覚えて、考え込みました。イサメはびっくりしました。だって、龍なんて怖いもの、見たこともないし、戦うなんて怖すぎます!口々に、「そんな!ねえママ、私まだ七歳だよ!」「お兄ちゃんだって九歳だよ!」と訴えます。伝説の龍なんて!死にたくないし、畏れ多すぎて、相手にできません。

だけどそこで、賢いチシャがおかしいことに気がつきました。「ねえ母さん、ニシキに力を封じられたってことはさ、ニシキが来てハルキタル姉さんを攫っていくのに立ち合ってるってこと?なんで止めなかったの?後、なんで母さんは連れ去られなかったの?魔法をわざわざ封じないといけないくらい母さんが強いなら、ニシキの結界が張ってあってどんなほかの術師の術も無効化できるところに攫っていくはずでしょ。おかしいよ。それに母さんはそんな酷いこと言わない!自分で行こうとしちゃうもん!ねえニシキのしもべさん、嘘はもういいよ!母さんを返して。僕は騙されないぞ!」

チシャが言い終えた瞬間、サッサの体は溶けるように崩れ去り、とても大きい錦蛇が姿を現しました。「あらあら、もうバレてしまいましたねえ。ご名答。お察しの通り、私はあなた方を我が主たるニシキ様の元へとけしかけるため、偽の情報を与える役回りだったのですよ。君はチシャというのですね。君に『智兄』という称号を差し上げましょう。妹さんはすっかり騙されていたようですがね。あ、そうそう、お母様も預かっておりますゆえ。それでは、、、」偽サッサは消えてしまいました。

二人はしばらく呆然としていましたが、やがてイサメが我に返って、偽の母を殺しにいくか何があったか考えてから殺りに行くかを少し悩んで、さっき起きたことをよく考えることにしたようです。考え終わり、その後チシャを少しいつもより乱暴に叩いてやっと我に帰らせたときには、イサメはすでにカンカンでした。結果、騙されていて、神妙に話を聞いていたはずの母は偽物で、しかもそいつは兄を褒めちぎった挙句自分をからかって逃げてしまった、ということなのですから。

イサメが唸りました。「ねえお兄ちゃん、私こうなったら罠だったとしても嘘でも絶対にあのニシキ様の山を登って、アイツをボッコボコにしてやるんだから!もう絶対の絶対に許さないわ!後私もちょっと称号欲しくなってきたわ」チシャはちょっと怯えています。妹ながら力は大人より強いこの怪物妹が、本気を出すのに立ち会うなんて考えたくありません。世の中で恐るべきものという認識の生物が、自分の中で一体増えるだけです。止めたい。この気持ちは伝えた方がいいと思っていて、頭でも理解できているのですが、恥ずかしいことに、妹が怖くてか、やっと絞り出せたのは、弱々しく震えた情けないセリフひとつでした。「ひ、、、ひかえめにしなよ、、、」彼は内心ですごく恐怖しました。(こっ怖い何をする気だこの化け物妹、、、)

2人は訓練を開始しました。
兄チシャは『大賢者』として攻撃魔法、シールド呪術そして回復魔法諸々を会得し、小物を倒してMPも稼ぎます。
妹イサメは格闘家兼戦士として武術、体術に加え強化魔法を習得、また剣術との合わせ技も学び、それを極めるのです。
何せ相手は古の神龍ニシキ様なのですから、いくら強いのか計り知れません。用心に越したことはないのです。
しかしあまりにも時間をかけていると、母や姉の身が心配です。第一ニシキがどうして自分を招こうとしているのかがさっぱりわからないのですから。

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