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Practice-1B 会計監査の実務書まとめ(会計編)

 おはようございます、パジャマです。

 財務諸表監査に関する実務書のうち、評判の書籍について下記のまとめていますので、お役立てください。
 本記事は会計編となります。監査編も併せてご覧ください。

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まえがき

(※)全般的な まえがき については、監査編をご覧ください。


(A)会計全般

会計処理ハンドブック/第7版(有限責任監査法人トーマツ【2021】、中央経済社)

<対象>
 中小規模のクライアントのインチャージを務める方、担当科目をあっさり予習しておきたいスタッフ

<感想>
1.概要
 基本的な会計処理を網羅的にまとめた実務書です。記載内容はそれほど複雑でなく、多くは基準等のまとめであるものの、「本書に記載がないなら、特殊な論点なのだな」と言える安心感があります。
2.内容
第1編
 会計制度
 ディスクロージャーに関係する法令等がまとまっています
第2編
 会計処理
 各勘定科目ごとに基本的な会計処理、また頻出論点に対応する会計処理が記載されております
3.感想
 基本的な会計処理の網羅性は徹底されており、スタッフが科目調書の作成前に一読しておけば安心できる書籍です。内容の多くは会計士試験合格者であれば知ってはいる論点ではありますが、実務となると前期調書にひっぱられてなかなか思いつけないものです。インチャージでも同様に、ふと気になって特定の科目のページを読むと、監査上でケアできていない基本的な会計処理が分かることもあります。
 ただし、スタッフの予習目的としては基準等を読むべきであり、監査上の留意点については『実務補習所テキスト』の方がまとまっております。そもそもは、企業の経理担当が対象かと思いますので、監査実務上のコスパは高くはないとは感じています。


経営危機時の会計処理: レオパレス21は難局をどう乗り越えたか(日野原 克巳【2022】、中央経済社)

<対象>
 業績不調のクライアントのインチャージ(計画段階)、特定チームのコアメンバーとして見積科目を担当するスタッフ

<感想>
1.概要
 上場会社の社内会計士が経営危機に際して検討した事項をまとめた書籍です。読み物としても面白く、スタッフでも読みやすいと思います。 
2.内容
第1章
 レオパレス21の概要と会計・監査上の課題
 前提知識として、会社の内部環境に関する記述があります
第2章~9章
 各勘定科目
 各勘定科目ごとに会社が実施した会計処理と経緯、それに関する監査人との協議内容が記載されています
3.感想
 社内会計士の先生が著者のため、監査についてもかなり具体的な言及がある点が興味深いところです。特に事業計画に関しては、例えば「事業計画はきっちりと論理だてて策定される必要があり、このように策定された事業計画がむやみに否定されることはありえない(P.157)」とあり、これは会計士としても事業計画に向き合ったことのある先生が述べるからこそ説得力のある内容だと感じています。また、第1章でビジネスモデルや財務指標について分析し、リスク評価から始まっているのも監査人ならではと感じました。
 
このようなクライアントに変化に注目した科目横断的な書籍はそれほど多くありませんが、読むべきシチュエーションがはっきりしており有難いものです。一方で、会計処理を基準ベースで網羅的に解説したものではないため、期末監査で辞書的に頼る書籍ではありません。担当したクライアントの経営状態が芳しくないときの計画段階に読んで、リスク評価の整理を行うための書籍かと思います。


【業種別アカウンティング・シリーズ】6 小売業の会計実務/第2版(あずさ監査法人【2021】、中央経済社)

<対象>
 小売業のクライアントに関与する方

<感想>
1.概要
 小売業特有の会計、監査論点を解説した書籍です。業種別シリーズは大手各法人から出版されていますが、収益認識基準改正に対応した小売業専門書という点では唯一(たぶん)になります。
2.内容
第1編
 経営
 小売業のビジネスモデルに関する説明があります。監査上の外部環境理解ほか、関係法令の識別に役立てられると感じます。
第2編 会計・税務

 販売、購買、棚卸資産、固定資産、その他のトピックに分けて、小売特有の会計処理を解説しています。
第3編 監査
 主にKAM、内部監査の話題を取り扱っています。第2編でも論点ごとに監査上の留意点がまとめられておりますので、ボリューム的にも第2編の方が役立度は大きいと感じます。
3.感想
 
小売業のコアメンバーとなるにあたって購入しました。スタッフ1年目の時は、本書の記載が何の役に立つのかまったく実感できませんでした(そうなると思います)が、今となっては非常に貴重な情報源であると認識しています。タイトルに違わず、小売業の会計実務にフォーカスして300ページです(通例の解説等なく)ので、特有の論点がかなり網羅的に記載されています。例えば、私がクライアントへのヒアリングと資料熟読によって理解した内容が、本書を読み返してみると当然のように書かれていたので衝撃を受けました。また、語り方としては経理担当者向けのようですが、「監査人はここを見る!!」として留意点が章末にまとめられており、「逆に言えば監査人はここを見ればいいんですよ(横目チラッ)」と面白い工夫がなされているのが編集者の特徴であり、私は好きです。
 スタッフに影響する(構造上の)弱点としては、特定の業界にちゃんとフォーカスされているがゆえに、他業種での経験がないと特に心に残らない点があります。また、本書に限らず業界別シリーズはその有益さに比して改訂頻度が低いため、外部環境や法令の変化に追い付かない場合には、実務上の問題点にワンストップで答えきれている業界書籍が必ずしもないことがあります。本書は収益認識基準までカバーできている点は非常にありがたく感じています。


(B)連結決算

図解&設例 連結決算の業務マニュアル(飯塚 幸子【2015】、中央経済社)

N/A


これだけは押さえておこう 海外子会社管理の会計・税務・財務ケース50(佐和 周【2022】、中央経済社)

N/A


(C)勘定科目 -収益認識-

収益認識のポジション・ペーパー作成実務(高田 康行 著・太陽有限責任監査法人 編【2021】、中央経済社)

<対象>
 インチャージ、収益認識の準拠性チェック調書を担当する方

<感想>
1.概要
 収益認識基準を理論的に整理・検討するためのツールを紹介している書籍です。判断の指針にもなりえますが、主目的は収益認識基準の構造を把握することに役立つ書籍であると感じています。
2.内容
PART1 収益認識に関する会計基準等の概要

 収益認識会計基準、適用指針の対応関係が整理されています。 
PART2 5つのステップの論点整理と開示実務

 開示ツールの利用方法と、その活用事例が3つ掲載されております。
PART3 ポジション・ペーパーの作成・活用実務
 
収益認識の検討ツール(ポジション・ペーパー)の利用方法と、その活用事例が14つ掲載されております。事例の多くは実務指針かIFRSの設例を参考しているため、それ自体が珍しいものではありません。
3.感想
 基準上の判断に関する解説書ではなく、複雑な収益認識基準をいかに整理するかという点にフォーカスした書籍です。複雑なものは第一に整理しなければ検討もできないので、そういった意味では収益認識基準の基本書に位置するのでしょう。そう言いつつ私は辞書的な読み方をしているため、本書を完全に理解しているわけではありません。


(D)勘定科目 -税金-

7つのステップでわかる 税効果会計実務入門(福留 聡【2014】、税務経理協会)※最新版ではありません

<対象>
 初めての税効果担当に向けて準備したいスタッフ、クライアント側がどのように税効果資料を作成しているか知りたい方

<感想>
1.概要
 決算書から税効果基礎資料を作成するまでの流れを解説した書籍になります。
2.主な内容
第2章
 法人税申告書及び地方税申告書の作成方法
 具体例を使用して、決算書と法人税申告書のつながりを解説しています。
第3章~12章 税効果会計の実務 
 
第2章で作成した申告書から税効果会計の基礎資料、注記の作成方法を解説しています。
3.感想
 申告書作成から税効果まで、ワークシート(Excel)を利用してワンストップで解説しています。資料間の数字の整合性にも言及があるため、最低限の突合はできるようになるということで、税効果に関する最初の一冊としてよかったと感じています。経理担当者向けの語り方ではありますが、一般的な税効果計上プロセスを理解するという観点で、監査人が読んでも為になると感じました。
 留意点としては、(1)監査上の論点になりやすいところ(e.g.スケジューリング、回収可能性)の検証についてはさほど言及ないため、他の情報で補完する必要があること、(2)東証スタンダード以上ぐらいの規模感だと本書より複雑な体系になること、は挙げられます。逆に言えば、それより前の基礎的なステップにフォーカスしているということでもあるので、スタッフにはぜひ(最新版を)オススメしたい書籍です。


税効果会計実務 完全ガイドブック: 7つのステップでわかる(福留 聡【2016】、税務経理協会)

N/A


税効果会計における「税率差異」の実務/第2版(中島 努 著・中島 礼子 著【2014】、中央経済社)

N/A


(E)勘定科目 -固定資産-

こんなときどうする?減損会計の実務詳解Q&A(新日本有限責任監査法人 編【2016】、中央経済社)

N/A


「固定資産の税務・会計」完全解説/第7版(太田 達也【2021】、税務研究会出版局)

<感想>
1.概要
 固定資産の税務会計上ならびに企業会計上の処理を解説した書籍です。
2.内容
(省略)
3.感想
 辞書的な読み方のため通読はしていません。気が付いた点としては、純粋に会計処理を取り扱った書籍であり、内部統制に関連する話題はほとんどないことが挙がります。


(F)勘定科目 -引当金-

こんなときどうする? 引当金の会計実務/第2版(EY新日本有限責任監査法人【2019】、 中央経済社)

<対象>
 引当金計上の網羅性を考える必要のある立場の方、32例に該当する引当金を担当するスタッフ

<感想>
1.概要
 明文の定めがない引当金の32例について、それぞれ計上事例および会計処理と実務上のポイントを解説している書籍です。
2.内容
第Ⅰ部 引当金をめぐる基本事項
第Ⅱ部 引当金別 会計上の論点と実務ポイント

3.感想
 ほとんど読んでいませんが、信頼できる先輩がオススメしていたためここで紹介します。辞書っぽいですが、引当金は帰納的に学ぶしかないため、通読が必要とは感じています。


(G)勘定科目 -純資産-

為替換算調整勘定の会計実務/第2版(新日本有限責任監査法人【2015】、中央経済社)

<対象>
 為替換算調整勘定を担当する方

<感想>
1.概要
 個別の取引に注目したキャッシュ・フロー計算書の作成方法を解説した書籍です。
2.内容
(省略)
3.感想
 


(H)開示

設例でわかるキャッシュ・フロー計算書のつくり方Q&A(新日本有限責任監査法人【2015】、中央経済社)

<対象>
 キャッシュ・フロー計算書を担当するスタッフ

<感想>
1.概要
 個別の取引に注目したキャッシュ・フロー計算書の作成方法を解説した書籍です。
2.内容
(省略)
3.感想
 ほとんど読んでいませんが、師匠が「(困ったときに)見るとだいたい載ってる」とおっしゃっていたので、ご紹介しておきます。目次を見れば分かるとおり、かなりコアな論点も扱っているようです。


すぐに使える 後発事象の会計・開示実務(竹村 純也 著【2022】、中央経済社)

<対象>
 期末監査を迎えるスタッフ、後発事象を整理したい方

<感想>
1.概要
 後発事象に関する基準を体系的に整理し、開示すべき事項について解説した書籍です。
2.主な内容
第1章 企業が知っておくべき後発事象の成り立ち

 後発事象が定められている基準を整理しています。
第2章~6章 後発事象の会計・開示実務
(省略)
第7編 ディスクロージャー委員会の活用
 後発事象を識別する内部統制構築のために、"被監査会社"側がとりえる具体的な対応策を提示しています。
3.感想
(執筆中)


3つの視点で会社がわかる「有報」の読み方/第3版(新日本有限責任監査法人【2022】、中央経済社)

<対象>
 期末監査を迎えるスタッフ、有報チェックを有機的に実施したい方

<感想>
1.概要
 有価証券報告書の記載内容どうしの関連性に着目した書籍です。監査人向けの書籍ではありませんが、新規合格者にとっては入門書として苦のない難易度であると感じています。
2.内容
第1章 大局的に読む有価証券報告書

 過去・現在・未来情報について読み取り方を解説しています。
第2章 ストーリーから読む有価証券報告書

 特定のイベントに対応する開示を解説しています。そのため、本章にあたっては"読み方"より"開示の要否"の参考になると感じています。
第3章 項目別に読む有価証券報告書
 勘定科目、開示項目ごとに読み取り方を解説しています。
3.感想
 
監査実務書として読まれるなら新人スタッフを主な対象とした書籍となります。開示チェックは新人スタッフにも任せられる仕事ですが、会計士試験で開示の勉強はほとんどしないこともあり、分からない上につまらない状態になりがちです。その点、本書は開示項目がどのように連携しているかを説明しているため、有報に興味を持つきっかけにはなると思います。


以上!!

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