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Practice-1A 会計監査の実務書まとめ(監査編)

 おはようございます、パジャマです。

 財務諸表監査に関する実務書のうち、評判の書籍についてまとめていますので、お役立てください。

 悪くなければ「いいね!」押していただけると励みになります。


まえがき

 私が読んだ実務書、今後読む予定の実務書についてまとめております。

・こちらで紹介させていただく書籍はいずれも素晴らしいもので、編著者の方々には敬意をここに記載させていただきます。

・個人的な備忘録として、まったく読んでいない書籍も含まれますので、それぞれの<読解度>をご参照ください。

・(1)監査編、(2)会計編の2章立てです。分類が難しいものもありますが、迷った場合には監査編に入れてあります。

・執筆現在は、スタッフ(インチャージ2年目)でありますので、想定の読者は会計士試験合格者となりますが、それ以上の実務経験者についてもコメント等をいただければ嬉しいです。

・会計士試験合格直後の実務未経験の方に一冊を勧めるなら、個人的には「新版 忘れちゃならない経理の作法」となります。それ以外の実務書も後々のために意義はありますが、未経験の時点では何も疑問・興味はわかず(特にA.監査全般)、読むのが大変かと思います。

・随時更新予定です。下記にない書籍でおすすめのものあれば、ご紹介ください〜


(A)監査全般

異常点監査の実務(野々川 幸雄【2001】、中央経済社)

<読解度>
 読了、適時読み返し

<感想>
 異常点監査、すなわち現在のリスク・アプローチに関する実務書です。監査手続の引き出しを増やすための唯一無二の書籍です。監査スタッフに一冊を薦めるなら内容的には本書となります。
 発刊当時(2001年)は、監査基準にリスク・アプローチに関する記載はあったものの監査実務に浸透していないという状況でありました。左記の背景を踏まえると、当時の革命的な一冊であったことはもちろん、現在もその有用性を失わない絶版の名著と言われています。
 オススメポイントは、監査手法が極めて具体的に列挙されているところです。通常、監査手法のその具体的な内容は各監査法人に秘められているものであり、公開されている内容については理論的(抽象的)な記載であることも多いものです。その点、本書は極めて具体的であり、各勘定科目について考えうる監査手法が列挙されております。それらが紙面をたっぷり使って解説されているため、スタッフレベルが監査手続をイチからイメージすることにも向いています。また、監査法人のマニュアルに加えて、より実践的なマニュアルとして扱うことができます。
 なお、刊行が現行の監査リスク・モデルの正式導入(2005年)以前であることから、一部の用語が現状と異なるものがありますが、記載内容は依然として実用的なものです。

<読み方>
 各勘定科目について実施するべき手法のアイデアが欲しいときのハンドブックとしての利用が考えられます。ただし、記載が大量かつ、アサーションおよびリスクに対する実証手続のマトリクスはないため、ある程度は事前に理解しておかなければ、いざ期末監査で開いてもスタッフの手には余るかもしれません。

<備考>
 絶版のため、現在では定価(7,000円+税)の2倍以上のプレミア価格で取引されています。前シリーズ(勘定科目別にみた異常点監査の手法)はより安価であるものの、大幅なリニューアルがなされているため、やはり本書(異常点監査の実務)を購入することをオススメします。


三訂/勘定科目別 不正・誤謬を見抜く実証手続と監査実務(EY新日本有限責任監査法人 編【2019】、清文社)

<読解度>
 流し読みあと、適時参照中

<感想>
 監査上のリスク、およびそのリスクに関係付けられた実証手続に注目した実務書です。「リスクはわかったけど、それに対して何をすればいいの?」という疑問を解決するための書籍です。
 『異常点監査の実務』と合わせて絶版の名著と言われており、その評価は定価(4,800円+税)の3倍以上という取引価格に表れています。
 オススメポイントは、監査手続が具体的に列挙されており、それがリスクおよびアサーションと関係付けられているところにあります。ただし、監査手続は『異常点監査の実務』と比較すると、あっさりしているため、スタッフが監査手続をイチから学べる書籍ではないと感じています。

<読み方>
 各勘定科目について実施するべき手法のアイデアが欲しいときのハンドブックとしての利用が考えられます。ただし、『異常点監査の実務』に比べて簡潔な記載ですので、疑問点に当たったときに本書で当たりをつけてから、『異常点監査の実務』でさらに深く考えることができます。


第4版/財務諸表監査の実務(南 成人・中里 拓哉・高橋 亮介【2022】、中央経済社)

<読解度>
 読了

<感想>
 実務家
に向けて財務諸表監査最新実務を具体的に解説することを目的とした実務書です。監査論をより実務的に解説した内容であり、監査手続を一巡したあたりのスタッフには興味深く感じられると思います。
 オススメポイントは、読みやすさにあります。監査基準委員会報告書の要求事項を解説しつつも、監査理論と監査技術をバランスよく学べると感じています。監基報原文を理解しつつ読むための導入として適していると感じています。
 2021年6月8日の監基報大改正に対応していることもあり、販売後1ヵ月にして品薄(高騰中)になるほどの売れ行きのようです。

<読み方>
 財務諸表監査体系に関する解説のため、内容は理解しておく必要があります。また、一部の手続については具体的な注意事項が記載されているおりますので、その点はハンドブックとして参照することが考えられます。


監査事務所検査結果事例集(公認会計士・監査審査会【毎年】)

<読解度>
 通読済み

<感想>
 公認会計士・監査審査会による監査事務所検査において発見された監査上の不備をまとめた書籍です。CPAAOBの公式HP(リンクは2023年1月時点で最新)から無料でダウンロードできます。実務上の扱いとしては、下記に紹介している「監査提言集」と似たところがあります。理論的なため、1年目のスタッフが真に理解することは基本的に不可能と思いますが、遅かれ早かれ理解する必要のある一冊です。
 注目すべきポイントは、公式書籍であるため記載内容が監査上のスタンダードとなっている点です。つまり、少なくとも本書で記載されているレベルの不備は各種レビューで指摘事項になるというコンセンサスがあります。そのため、他の書籍とは性質を異にするものではあります。

<読み方>
 日ごろの実務の注意点として理解しておくのがいいと思います。自身が担当する業務の予習として読むのもオススメです。


内部監査実務ハンドブック/第3版(有限責任監査法人トーマツ 編【2022】、中央経済社)

<読解度>
 ざっくり流し読み、ほとんど読めていません

<感想>
 内部監査を体系的に解説した実務書です。ただし、財務諸表監査上の内部監査人の利用とは関係なく、一般的な監査手法を学習できる書籍としてここに挙げております。
 財務諸表監査および内部統制監査を”監査”と言って実施するため、それら監査のすべてのように無意識的に考えていたところがありましたが、本書を手に取って、監査とはより普遍的なスキルであることを実感することができました。しかし、法定監査の要求事項の方が優先であったり、内部監査の実施事項と会計士監査の実施事項は違っていたりで、いまだ読み込めてはおりませんが。

<読み方>
 読み込めていないため省略


内部監査の実践ガイド: 16講でわかる基本と業務別監査(島田 裕次 編著【2018】、日科技連出版社)

<読解度>
 購入予定


(B)監査各論 -内部統制-

今から始める・見直す 内部統制の仕組みと実務がわかる本(浅野 雅文【2019】、中央経済社 )

<読解度>
 読了、つど参照

<感想>
 内部統制実務(主にSOX)について解説した実務書です。スタッフにとって、内容も新鮮(実務的)ですし、内部統制の意義が語られているところで興味深く感じる書籍と思われます。監査法人勤務の者が主な対象ではありませんが、参考になる内容が多く含まれております。
 オススメポイントは、(1)実務上のQ&Aに応えた内容であること、(2)いわゆる3点セットのテンプレートが盛り込まれていること、が挙げられます。(1)については関係法規に照らした内容のみならず、著者の実務経験に照らした内容が多く含まれている点に魅力があります。要求事項内の強弱および記載にない実務上の判断について、専門家として一例を提示しています。(2)については、自身の所属する監査法人以外のテンプレートを参考することができます。

<読み方>
 案件前に読み込み、概要は理解しておくことが望ましいと思います。ただし、テンプレートなど適宜参照できる部分も多分に含まれております。


新版 忘れちゃならない経理の作法(鈴木 豊【2015】、中央経済社)

<読解度>
 読了

<感想>
 コーポレートサイドが実施する一般的な業務を図解した実務書です。実務経験の有無にかからわず、試験合格者が経理実務をイメージするために役立ちます。
 個人的に、監査法人に勤務して長らく頭を悩ませたのが「会社の実務がイメージできず、自分がとんちんかんな質問をしているかもしれない」という不安でした。左記の不安は、監査経験を積むにつれて監査に関係する部分についてはいずれ解消されるものですが、スタッフ(2年目~3年目)のうちに理解をしておきたいのであれば、本書を読むことで全体像を把握できます。記載の内容はあくまで会計実務のため、知識的にはそれほど難解でない点もスタッフに薦められる点です。
 オススメポイントは、業務フローに沿って解説されている点です。監査法人勤務にとっては見慣れた形でインプットできるため、経理実務へのイメージの橋渡しに適した形になっています。また、業務フローを作成する場合の参考として利用できる点も嬉しいところです。

<読み方>
 あらかじめ読み込んで、理解を深める本です。また、内部統制の検討にあたって具体的な業務フローをイメージしたいときのハンドブックとしても利用できます。


実践 IT監査ガイドブック〈改訂版〉(岩下 廣美【2021】、中央経済社)

<読解度>
 要点について、流しよみ
 あまり読み込めておりません

<感想>
 財務諸表監査目的を含む、IT監査について解説した実務書です。IT監査に興味がある方が、広く知識を得ることのできる入門書です。
 様々なテーマについての網羅的な解説を試みている中で、財務諸表監査目的のIT監査については相当紙面を割いており、読み込めば財務諸表監査上の検討事項を理解できそうな内容ではあります。
(読みこみ足りないため、いろいろ断定できません。すみません…)

<読み方>
 読みこみ足りないため省略


(C)監査各論 -分析的手続-

最近の粉飾―その実態と発見法/第7版(井端 和男 著【2016】、税務経理協会)

<読解度>
 読了、深く読み込みはできていません

<感想>
 実際の会計不正(破綻)事例について、財務分析による粉飾発見の方法を解説した書籍です。回転期間分析やキャッシュ・フロー分析といった一般的な指標を、どのように見るかという解説書のため、前提知識としてはスタッフレベルでも苦にしない書籍であります。
 直近であれば東芝の会計不正、シャープの経営破綻を取り扱っており(H28年発行)、専らケーススタディによって、財務指標を利用した異常点の見つけ方を解説しています。紹介される指標に特別なものはないため、小さな負荷で読むことができると感じています。

<読み方>
 各種指標の見方を理解しておくのがよいでしょう。また、事例を解説しているというところで、ドラマチックな読みモノとしても興味深く読むことができます。


財務諸表分析/第3版(乙政 正太【2019】、同文館)

<読解度>
 読了、深く読み込みはできていません

<感想>
 経営分析に必要な財務指標と、その見方を幅広く紹介した書籍です。本書は経営分析用のため、監査実務に最適とは言えないものの、指標自体の種類を勉強するためには親切な一冊のため紹介しています。同じ目的を達成する、より監査向きの本はあるかもしれません。
 オススメポイントは、各指標が実例付きで網羅的に紹介されている点です。ビジネス言語としての財務指標を学ぶわけですので、具体的な使い方まで丁寧に解説されている点は非常に有益だと思います。

<読み方>
 各種指標の見方を理解するために読みます。


(D)監査各論 -不正-

監査提言集(日本公認会計士協会監査・規律審査会【毎年】)

<読解度>
 読了、適時参照

<感想>
 JICPAが発行している事例集です。HPに公開されている一般用ではなく、会員・準会員に毎年配布 or CPE講義「監査の品質及び不正リスク対応(不正事例研究)」でPDF配布されているものです。実務書とは色が違うかもしれませんが、不正に関しては市販書より本書を優先するべきなので記載しました。
「監査事務所検査結果事例集」の扱いと同様と考えておりますので、詳細は割愛します。

<読み方>
 内容を理解し、将来的には担当クライアントで類似のケースがあった場合に気が付けるようになりたいところです(私も頑張ります)。また、監基報240で理解が求められておりますが、通読のみならずCPE研修等の講習会への出席が推奨されているようです。

実践 不正リスク対応ハンドブック: 内部統制の強化、不正会計の予防・発見・事後対応(EY新日本有限責任監査法人 編【2022】、中央経済社)

<読解度>
 購入予定


(E)監査各論 -会計上の見積り-

こんなときどうする?「会計上の見積り」の実務/第2版(あずさ監査法人 編【2020】、中央経済社)

<読解度>
 購入予定


(F)監査各論 -棚卸立会-

誰も教えてくれなかった 実地棚卸の実務Q&A(國村 年・松井 大輔・大野 貴史 著【2013】、中央経済社)

<読解度>
 読書中、、、


(G)監査各論 -監査サンプリング-

監査における統計的サンプリング法 米国公認会計士協会Audit Guide準拠(米国公認会計士協会 著・増田 幸一 編訳【2018】、日本経済新聞出版社)

<読解度>
 読了、理解度8割くらい

<感想>
 監査サンプリングのサンプルサイズの計算過程について、AICPA著の『Audit Sampling: Audit Guide』を翻訳・解説した実務書です。(A)内部統制の評価手続におけるサンプルサイズの決定のみならず、(B)詳細テストにおけるサンプリングの決定についても解説されている点が注目すべきところでしょうか。
 実務上、サンプルサイズは法人ルールに従う必要があるでしょうから、主な対象は、小規模監査法人で品質管理のためマニュアル作成を担当される方など限定的でしょう。ただし、大手監査法人に勤務の方でもサンプルサイズのテーブルのロジックを理解することはできます。
 オススメポイントは、原著でおよそ$150の内容を安価かつ日本語で読むことができる点です。また、私が知る限りでは金額単位サンプリング(詳細テスト)について最も詳しく解説した書籍である点もオススメです。サンプルサイズに関するテーブルも設けられておりますので、参考に利用できると思われます。

<読み方>
 読み込んで理解することが理想ですが、高校数学と多少の統計知識(2級程度)が必要のため、現実的には参照しつつの利用になると思われます。また、テーブルを参照してサンプル数を算出することができます。

<備考>
 監査サンプリングのサンプルサイズの算定については、別記事で解説(予定)しておりますので、よろしければご覧ください。


Q&A監査のための統計的サンプリング入門 改訂版(富田 竜一・西山 都・石原 佳和【2009】、金融財政事情研究会)

<読解度>
 読了、少し忘れぎみ

<感想>
 統計的サンプリングの統計理論を解説した実務書です。
 上記「監査における統計的サンプリング法 米国公認会計士協会」より数学的な記述は少なめであり、平易かつ詳細に解説されております。ただし、高校数学をまったく覚えていない状態で読めるほど簡単ではありません。
 オススメポイントは、理論のわかりやすさと実務上のつかいやすさのバランスが取れている点です。上記「監査における統計的サンプリング法 米国公認会計士協会」ほど数式の解説がない反面、全体として読みやすく理解しやすいと感じています。

<読み方>
 内容を理解しておくための本と考えられます。さらに、サンプリング・ツール(Excel)が付属されているため、そちらを利用することができます。

<備考>
 著者うち石原先生は実務補修所講師であり、そちらで公開されるテキストがより直観的に分かりやすいものとなっております。



以上!!

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