見出し画像

地味PMとは

「地味PM」ってぐぐると、一番上に私の Meety が出てきます。ありがとうございます。そうです。造語です。今日は「地味PM」活動について、お話したいと思います。

発端

事業を推進していくために、PM(プロダクトマネジメント)はとても重要です。昨今、書籍で、オンラインで、イベントで、各所で「PMの重要性」「PMとはなにか」「PMのナレッジ」等、多くの「PMコンテンツ」が流通しており、目にしない日はないといっても過言ではありません。

そんな中、日々業務を進めていく中で、個人的に2つの点で不安になることがあります。

  • PM業界・PMに対する評価が度を超えて過熱し、期待と実態とが乖離しているのではないか

  • 「PMかくあるべき」が急速に整っていく中、世の中にあるPM論だけが果たして「PMのすべて」なのか

私は現在、ヘイ株式会社で STORES 決済 というプロダクトのプロダクトマネジメントを行っているのですが、今の会社に入るより前、プロダクトマネジメントっぽい仕事をするようになったのは結構前で、「プロダクトマネジメント」という言葉は当時はなかった、または、定義は定まっていなかったように思います。

急速に定義が整い、シュッとしていく「プロダクトマネジメント」に対して「整ってきてよかったねぇ」という気持ちはもちろんありますが、とそれと同時に、「各社いろんな事情がある。PMというものは "やること" で定義すべきものではなく、 "なんのためにやるのか" で定義されるべきではないのか」という気持ちが同居することがあります。

地味PM Meety の 自身の説明文を引用します。

プロダクトマネジメント。どんなイメージをお持ちでしょうか。
IT業界の花形、キラキラした、派手なイメージをお持ちではないでしょうか。

しかし、世の中は、そんなに甘くないのです。

PMは、誰に言われるでもなく、誰も気づいていない課題を見つけ、誰も理解できていない構造に着目し、誰もやらないタスクを率先して取り、誰もが理解できる価値をアウトプットし、アウトカムを生み出さねばなりません。

誰も理解できないことを理解できるようにする、、、このプロセスは、孤独そのものです。情報をかき集め、言語化し、多くの人とコミュニケーションをし、最後には周りを巻き込み、結果を出し、「ありがとう」と言われるかもしれない、言われないかもしない仕事。

つまり、PMの仕事は、非常に「地味」なのです。

世の中には、表面に見えている氷山の「キラキラ」の下に、無限の「地味」が隠れています。今PMをしているあなたも、PMではないけどPMっぽいことをしているあなたも、これからPMやりたいなと思っているあなたも、自慢の「地味な仕事」がきっとあるはずです。

私は、ヘイ株式会社で STORES 決済 というプロダクトを見ていますが、まさにこの「地味」な仕事に溢れています。地味×地味×地味=ときどきちょこっと顔を出すありがとう。

業界で陽の光を浴びていない、でも本当はめちゃくちゃ大事な、自慢の「地味な仕事」を紹介しあう、そんな時間を過ごせればあなたもわたしもちょっと自己肯定感が高まって、明日の仕事がより(自分の中で)輝くかもしれないな、と、そう思っています。お互いの地味な仕事の大切さを肯定し合いましょう。

「地味PMについて語ろう」より

地味PM活動はそんな疑問の中で生まれました。

幸いにも Meety で 現職PMの方、PM志望の方、新入社員の方、営業の方、経営者の方、たくさんの人に出会うことができ、いろんな興味深いお話ができました。そこでお話している内容を、少しご紹介できればと思います。

氷山の一角業務と、水面下の大量の業務

プロダクトマネジメントのお仕事は多岐に渡ります。その中でも、世の中で流通し、日々たくさん目にするようなお仕事や、自分自身が外向けに「やったよー!」といえる仕事は、氷山でいうところの、水面の上の部分だと思っています。一方で、水面下には、巨大な「外には出てこないたくさんのお仕事」が隠れています。

氷山

STORES 決済 における「水面下のプロダクトマネジメント」を掘り下げてみたいと思います。

STORES 決済における 水面下 のプロダクトマネジメント

水面の上に「戦略」「ロードマップ策定」「UXリサーチ」「VOC改善」「データ解析」「施策PDCA」「新規事業」などが並んでいます。これらのテーマ・コンテンツに関する情報は世の中に流通しやすいですね。派手ですし、需要もある。 STORES 決済 でも、もちろんこういった業務は日々重要なこととして我々も取り組んでいます。大事大事。

一方で、私個人としては、水面上のこれら「派手」なプロダクトマネジメントにかけている時間の割合は相対的には低く、水面下の「地味」なプロダクトマネジメントが日々の業務の大半を占めています。

見ていただいたように、水面下には決済というプロダクトの性質上、「法令遵守」「審査」「リスク」など、非常に堅いテーマが並びます。絶対表に出てこないですよね・・・。それぞれの詳細な説明は割愛するのですが、どれも、決済というプロダクトの根幹をなす、非常に重要な要素です。

「地味PM」とかいうよくわからないものに興味を持っていただいた奇特な方々はやはり皆様揃って「地味PM」でして、それぞれがそれぞれの大変「地味」な業務を持ち、その一つ一つに誇りを持って取り組んでいました。お会いした一人一人の、別ドメイン・別職種の話は非常に面白かったです。

ところで、「地味PM」業務、これだけ聞いたときにどういう印象を抱かれるでしょうか?「地味」で「つまらなそう」でしょうか?

地味=つまらない?

STORES 決済 にも、もちろんワクワクするような派手要素はありますが(話が逸れてしまうのでそれはがんばって我慢します)今日は「地味」について掘り下げていきます。

私は、決済プロダクトは極端な話「加盟店管理業務こそがコア」なのではと最近気づきました。もちろん、使いやすさを突き詰めたり、幅広い決済手段を取り揃えたり、少しでも安価な経済条件でご提供できるようにするのが大事なのですが、その手前に「少しでも多くのオーナーさんに利用できるようにし、それを少しでも早く届ける」ことが一番大事です。すごく雑に言うと、なるべく多くの方に審査を通して、決済ができるようにすることこそが最大の価値だと考えます。

ちょっと過去の語りをしますと、今から9年ほど前、 コイニー(現 STORES 決済)創業当時、キャッシュレスというものは、「だれでもかんたんに使える」ものではありませんでした。

スモールチーム・個人事業の方では大手クレジットカードサービスの審査が通りにくいですし、通っても、手数料率が高かった。もちろんそれをこじ開けたのはコイニーだけではなく、 楽天スマートペイ や Square 等の尊敬すべき同業者たちのプロダクトありますが、とにかく、そういった、「これまでキャッシュレスできなかった方々」に 3.24% という破格の料率でサービスを提供するのがコアバリューだったわけです。

その文脈において、加盟店管理を支える要素は、一見地味ですが、プロダクトの価値を最大化するために、最も注力すべき領域であることがわかります。少しでも多くの方に届けるためには、より一層、「法令」「リスク」「審査」を洗練させていく必要があります。

地味だけど、事業の根幹をなす、めちゃくちゃ大事なことなのです。

地味だけど、これをとことん突き詰めることが、プロダクトの価値を最大化させるのです。

3人のレンガ職人の話

3人のレンガ職人

私がよく好きで引用するイソップ寓話に「3人のレンガ職人」の話があります。有名な話ですし、ビジネス研修とかでもよく取り上げられると思うので、知っている方も多いかもしれません。

世界中をまわっている旅人が、ある町外れの一本道を歩いていると、一人の男が道の脇で難しい顔をしてレンガを積んでいた。旅人はその男のそばに立ち止まって、

「ここでいったい何をしているのですか?」

と尋ねた。

「何って、見ればわかるだろう。レンガ積みに決まっているだろ。朝から晩まで、俺はここでレンガを積まなきゃいけないのさ。あんた達にはわからないだろうけど、暑い日も寒い日も、風の強い日も、日がな一日レンガ積みさ。腰は痛くなるし、手はこのとおり」

男は自らのひび割れた汚れた両手を差し出して見せた。

「なんで、こんなことばかりしなければならないのか、まったくついてないね。もっと気楽にやっている奴らがいっぱいいるというのに・・・」

旅人は、その男に慰めの言葉を残して、歩き続けた。

もう少し歩くと、一生懸命レンガを積んでいる別の男に出会った。先ほどの男のように、辛そうには見えなかった。旅人は尋ねた。

「ここでいったい何をしているのですか?」

「俺はね、ここで大きな壁を作っているんだよ。これが俺の仕事でね。」

「大変ですね」

旅人はいたわりの言葉をかけた。

「なんてことはないよ。この仕事のおかげで俺は家族を養っていけるんだ。ここでは、家族を養っていく仕事を見つけるのが大変なんだ。俺なんて、ここでこうやって仕事があるから家族全員が食べいくことに困らない。大変だなんていっていたら、バチがあたるよ」

旅人は、男に励ましの言葉を残して、歩き続けた。

また、もう少し歩くと、別の男が活き活きと楽しそうにレンガを積んでいるのに出くわした。

「ここでいったい何をしているのですか?」

旅人は興味深く尋ねた。

「ああ、俺達のことかい?俺たちは、歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ!」

「大変ですね」

旅人はいたわりの言葉をかけた。

「とんでもない。ここで多くの人が祝福を受け、悲しみを払うんだぜ!素晴らしいだろう!」

旅人は、その男にお礼の言葉を残して、また元気いっぱいに歩き続けた。

イソップ寓話「3人のレンガ職人」

結局、やってることは、皆「レンガを積んでいる」だけです。このお話で伝えたいのは、同じ「レンガを積む」という行為でも、目的を明確にすることで、大きく姿勢と結果に変わることになる、ということです。

同じ「地味」な作業、せっかくやるなら、偉大なる大聖堂を建てるつもりでやりたいですよね。

最高の地味な仕事を見つけよう

一つ前の自分の話をいきなり否定するのですが、すべての地味な仕事に意味があるわけではありません。

地味な仕事は2種類あります。「意味のある仕事」と「意味のない仕事」です。意味のない仕事は辞めてよいです。たぶん。

PMがすべきことはなにか。それは「地味な仕事の中から本当に意味のある仕事を見つけること」です。ここは腕の見せどころです。

おわりに

最後に、なんで私が地味PM布教活動をしているのか、というお話をしたいと思います。私は「地味PM布教活動」を通して、以下のことを伝えていきたいと思っています。

  • 「地味PMをしている人の自己肯定感の向上」

  • 「地味PMをしている人のプレゼンテーション力の向上」

  • 「地味PMをしている人のプレゼンス向上」

1つめ。自己肯定感の向上。地味PMは地味です(今日「地味」って何回言ったかな・・・)そして、そのままやってると、評価されないことがままあります。でも、前述したように、「意味のある地味」は非常に大切です。おそらく、その業務は、みなさんの関わっている事業で、とても重要なことなのではないでしょうか。で、あれば、もっと誇りを持つべきです。そして主張するべきです。

2つめ。プレゼンテーション。「地味PMは主張せよ」と言いました。でもそれは下から目線の「苦労自慢」ではいけません。「こんなにがんばってるのに・・・」、みたいなのはNGです。あくまで事業貢献からブレイクダウンし「事業貢献に対するキーファクター」であることを証明する必要があります。事業を推進するため、プロダクトとして何が重要な要素なのか、そのために必要な地味、これを整理し、可視化し、主張するのです。

そして、本当に実現したいことは3つめです。ここまで来たあなたならもうその結果にたどり着いているはずです。自己肯定感を高めた上で、自分たちが行っていることがいかに事業に貢献できているのかを証明する。そうすることで、「地味なプロダクトマネジメント」こそが、事業を推進する重要なミッションであり、それを手堅く実現できるPMは、メンバーからも、経営からも、信頼されることでしょう。

プロダクトには正解がありません。終わりもありません。派手な仕事も、地味な仕事もありません。究極、ひとりひとりが「本当にすべきこと」を「やりやすい」環境作りをしていければ、どんどんプロダクトはよくなっていくだろう、そう信じています。

いい、地味PM活動していきましょう

追伸

「われこそは!」という地味PM集めて地味自慢合戦のイベントやりたいな~なんておもっていたり。

あと、耳タコかもしれないですが、ヘイでは絶賛PM募集中なのでこちらも興味あればぜひお声がけください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?