森を抜け海に潜る

 1か月ぶりくらいにどうぶつの森を開いたら髪がぼさぼさになっていた。

 動物好きだし、部屋のインテリア考えるの好きだし楽しそう、と思って発売日と同時に始めた。実は友達の家で一回やったくらいで、どうぶつの森を触るのは初めてのことだった。はじめは次々と課題が与えられ、必死に木を切ったり石を拾ったりした。楽しいのかはわからないけど毎日コツコツやった。そうすると、だんだんと自由になっていった。

 すると何をやれと指示されないので、今日はお金を貯める日、花を植える日、魚を釣る日、など自分で課題を決めた。その頃にはもう楽しめていなかったけど、気づかないふりをして、毎日続けた。(ゲーム以外やることがなく本当に暇だった)

 他の人の動画などを見ると、もうよくわからない街並みができていておどろいた。あの初期状態からどうしてそうなるのかわからない。こうしたい、がないとできないなと思った。技術的なことは調べればどうにかなるけど、完成したイメージみたいのは自分の中にしかない。

  しかも、どうやらこのゲームは友達の島を行き来してモノを贈与することができる。自分の島にないモノをもらって成長していくらしい。無人島なのに‥。さらに、カブというシステムがあるらしい。(カブが株だと気づくまで1ヵ月はかかった。)カブを安く買って高く売ると稼げるわけだ。

  やっていくうちに、このゲームは社会そのものだな、とこわくなってきた。つまり、このゲームを楽しめない自分は社会を楽しめないのかもしれないと思った。ただ言われたことをやるだけで、自分の島に人を呼ぶこともできないし、使いたいものもないので稼ぐことに興味もない。もういっそ社会とは別の場所で生きていくしかないのかな、もちろん一定の社会性を持った上で。

 

 どうぶつの森と対照的に、去年の秋に買って以来ほぼ毎日触れているゲームがある。それは、スプラトゥーン2。スプラ1発売のときのCMを見て以来、気になってはいたのだが、ゲームと遠い世界にいたのでなかなか買えなかった。去年の秋、いろいろ疲れていて、スイッチ本体とソフトをついネットでぽちってしまった。結構な大金だったので使わなきゃという気持ちもあったが、自然と毎日やっていた。まさか半年以上続けるとは思っていなかった。

 スプラトゥーンは、イカがブキを持って戦い、死んでも何度でも復活する、人間世界とかけ離れたゲームだ。とりあえずビジュアルがかわいい。今振り返ると、スプラトゥーンを続けている理由は、ウデマエというレベルが設定されていることだと思う。試合での勝ち負けの割合で細かくレベルが分けられている。半年以上毎日やって、まだ下の中といったところだが、レベル上げは楽しい。

  試合は、チームや友達と一緒に参加することもできるが、ひとりでオンラインマッチングをすることができる。こういうゲームをやるのが初めてで、最初は知らない人とやることに緊張した。でも少し続ければ、一緒にやる人がいなくても誰かと楽しめる、逆にうれしいシステムだと気づいた。

  スプラトゥーンを買ってしばらくは、誰にも言わずただひとりで黙々とやっていた。いくら下手でも誰にも迷惑はかけないので、ただ純粋に楽しんでいた。少しずつでもレベルが上がっていくことが楽しかった。

  ずっとひとりでやるつもりだったけれど、このゲームのおかげで思わぬ出会いがあった。成人式で再開した友人がスプラをやっていることを知って、たまに一緒に遊ぶようになった。その友人たちは、仲はよかったものの連絡をとるきっかけがなく、なんとなく疎遠になっていた。世界でひとりだけのような気分でやっていたのに(大げさ)、すごく近くに仲間がいたことに気づいて驚いたし、もう一度友達に出会い直したような気持ちになった。みんな住む場所も生活も違うのに繋がれることってすごいな、と改めて思った。

 どうぶつの森を楽しめない私は、社会から離れた場所でなにかに潜ることで、新しい仲間を見つけていくのかもしれない。

(2020/7/2)

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