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「智に働けば角が立つ」社会

夏目漱石の「草枕」の冒頭の文です。以下、「情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」(青空文庫)と続きます。「智」は理性、「情」と「意地」は感情です。つまり、「人の世」は理性だけでは渡れないって嘆いてるのかと。「嘘も方便」で、善悪の判断を相対化した社会の特徴です。

自衛隊に関する憲法論争も理性と感情の鬩ぎ合いです。普通の日本人、特に地位の高い人達は国を治めるのに、外敵が必要で、軍備は外敵に対する国民の意識を統一する為の投資です。ところが、太平洋戦争の敗戦ショックで平和憲法を制定しちゃった。朝鮮戦争が終る頃から、国民の意志統一と国内平和維持の為には日本も軍隊が必要と感じ始めて、警察予備隊とかを創設した。当時は敗戦ショックが残ってて憲法改正とか言い出せなかったんでしょう。それで、政府の役人は色々言い訳を考えたみたいですが、憲法は明解です。

憲法第九条
「… 武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」

日本国憲法(衆議院)

軍隊を持つのは良いけど、国際紛争で使ちゃダメって規定です。つまり、2カ国以上が参加する紛争では武器の使用は禁止されてる。じゃあ、何の為の軍隊かというと、国内治安維持です。だから、「警察予備隊」です。国内治安維持は警察の任務なので、警察が手に負え無くなったら助けに入るって感じかと。

もう一点重要なのは憲法は最高法規ってことです。

第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

日本国憲法(衆議院)

どんな条約を結んでも国際情勢が変わっても、憲法に反する「法律、命令、詔勅」等は、日本国内では無効と規定されてる。つまり、憲法論争に国際協定を持ち込むのは「嘘も方便」です。

幸いな事に、日米安全保障条約でも、憲法を遵守すると規定されてるので、条約を遵守すれば「武力による威嚇又は武力の行使」を放棄する事になる。つまり、アメリカの戦争に参加しない十分な理由が有る。

第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

日米安全保障条約(外務省)

結局の処、「情報」を創造する偉い人達は武力が必要な本当の理由を表に出さずに憲法改定を試みたので上手く行か無い。「習近平が敵じゃ無くなると、あんたら自分達で喧嘩始めるでしょ」とは言えなかったのかと。だから、治安か経済が悪化すれば再度改憲論争が活発化するかもしれませんね。

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