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2023年度は、次期計画策定の年。さまざまな部署と連携できるビッグチャンスの年かも


6月9日開催 第167回市町村セミナー「次期国民健康づくり運動プランを含めた健康づくり」を傍聴しました。
第167回市町村セミナー「次期国民健康づくり運動プランを含めた健康づくり」資料へリンク 

そもそも「次期国民健康づくり運動プラン」となる「健康日本21(第三次)」の法的根拠は、健康増進法第7条「厚生労働大臣は、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針を定めるものとする」から。
5月31日付で上記の基本方針が大臣告示として出されました。
5月31日付 厚生労働大臣告示
ここで、目標の内容、指標、目標値、期間などが示されています。

都道府県は、上記の基本方針を勘案し、都道府県健康増進計画を策定 (義務) があり、市町村は、市町村健康増進計画の策定は(努力義務)になります。 今回は、市町村セミナーということで、市町村職員向けの内容とになっています。

●InclusionとImplementation

第二次と同様に第三次でも「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」が最上位の目標となりますが、第三次としては「誰一人取り残さない健康づくり (Inclusion) 」「より実効性をもつ 取組 (Implementation) 」といった提言がされているのが新しいところでしょうか。

行政説明「次期国民健康づくり運動プランの概要」P4


セミナーでは、厚労省から行政説明、辻一郎先生からは、健康づくり運動の全体像と今後の展開、津下一代先生からは、糖尿病を中心に生活習慣病予防について、横山徹爾先生からは、市町村の健康増進計画の目標のデータのモニタリングと評価についての講演。
その後、健康寿命上位の大分県と、大分県竹田市、健康寿命をのばそう!アワード優秀賞の愛知県豊田市から、先進事例として取組の発表、最後に先生方からのコメントと言った構成でした。

●「連携と協働」の重要性

辻先生からは、第二次では健康寿命の延伸というアウトカムは達成したのに、前提となる生活習慣や危険因子の値が悪化しているという矛盾は、この間に30年程度のタイムラグがあるからではないかとのこと。そうなると、今よい結果だったのは、30年前の結果で、今後健康寿命はどうなっていくのか。

また人口減少により予算も人手も減る、縮む社会において、厚労省だけでなく、政府全体(ex.経産省、健健康経営、国交省、まちなかウォーカブル等)で健康づくりを担うのと同様に、自治体でも衛生部門だけでなく、全庁的な取組、他部局との連携という「連携と協働」の重要性を語られました。

講演「次期国民健康づくり運動プランの全体像と今後の展望について」P28


津下先生からのお話では、生活習慣病の現状の課題、特定保健指導の変更点、地域職域連携についてなど。印象的だったのは、こどもも大人も肥満が増加に転じていること、ただし世界的な見ると肥満の割合の増加は他国よりは少なく、こうした統計(写真掲載3 )を見ると、コロナ感染など社会情勢により、どうしても健康づくりの「優先度」は大きく影響してしまいますね。

講演「生活習慣病予防について」

横山先生からは、市町村で(継続的に)モニタリング可能な既存データや簡単に使えるツールなどの紹介。データはバラバラでなく、ロジックモデルのように原因・結果について相互の関係性を意識することが大切さを感じました。ただ、データの収集・分析は、小規模な市町村では自力だけでは大変かと。都道府県の支援が重要になりますね。

講演「次期国民健康づくり運動プランのモニタリング及び評価について」P7

●都道府県と市町村の役割と関係性

大分県と大分県竹田市の発表からは、県と市町村との双方向の関係性の大切さを実感しました。県は県にしかできないこと、県内市町村のデータ分析や支援、医師会、協会けんぽなどの関係団体との取りまとめ、民間企業との連携など。
市町村は住民に近い立場から、地域組織や社会資源を実際に活用した健康づくりの実際、そして見つかった課題は県へどんどん発信していくなど。竹田市では保健所との連携体制があり、計画策定にあたって協力してもらったとのこと。また保健師は他部署でもお互いに顔の見える関係があるようです。
豊田市では、地域ごとの住民の組織づくり、地域健康カルテなどデータのわかりやすい見せ方、ソーシャルキャピタルの醸成が結果を出した、具体的な好事例となる内容でした。

●市町村における健康増進計画の策定

ちなみに努力義務ではありますが、市町村における健康増進計画の策定状況は下記のとおり、約7.5割が策定しています。
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健康増進計画策定状況(市区町村) 策定数(割合)
市区町村(全1,741市区町村)
令和3(2021)年7月31日時点 1,289(74.0%)
(参考値)同時点 未策定 80(4.6%)
(参考値)調査未回答 372(21.4% )
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基本方針には「市町村は、市町村健康増進計画を策定するに当たっては、医療保険者として策定する高齢者の医療の確保に関する法律に規定する特定健康診査等実施計画、市町村が策定する介護保険法に規定する市町村介護保険事業計画に加え、データヘルス計画その他の市町村健康増進計画と関連する計画との調和に配慮する」と記載されています。
2024年度は、自治体において多くの計画が改定となるため、今年度は一斉に計画が策定されることとなり、ある意味「連携と協働」のビッグチャンスの時期とも言えるのではと感じました。

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