でも浮き雲を見て寄り添うことならできる

知人の勧めで見始めたアキ・カウリスマキ監督作品
レニングラードカウボーイズを見たあと、二つめのカウリスマキ作品として「浮き雲」を選んだ

辛い、辛い、辛い、辛すぎる。何か悪いことをしたわけでもないのに、選択肢の中で最悪のことしか起こらない様子を描いた映画。笑うことも悲しむこともなく、ただただ人生の辛辣シャワーを直に浴びる夫婦

でも無表情の理由がわかった瞬間、切なさと同時になぜか、ごめん。という気持ちになった。理由がわかるまでは辛いことはもっと感情むき出しで受け止めればいいのに、と思っていた。でもそれは彼女にとってはポーカーフェイスは塞ぎ込んでいたものを堰き止める杭だったことを知らなかったから。誤解してしまってごめんなさい。大事な心の領域に勝手に踏み込もうとした私を許してほしかった
またその時の音楽も彼女の気分をより効果的に演出しているように感じた。そうか、そういうことがあったのか。あなたにとって大きな波だったんだな。乗り越えるべき壁だったんだな。その出来事の意味を和声とフルートが慰めるように教えてくれた

辛いことは続く。バスの運転手にもなれない。雇い主には酷い扱いを受ける。でも二人で寄り添うことならできる。見上げた空に浮かぶ雲を見つけることはできる。

乗せていって、どんな不運もあの雲にのせて

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