どうやったって勝てない、と思ったオールドボーイ

心が何度も絶叫した。見たくないのに見たい。唯一画面に向けることのできた顔のパーツは目だけだった。顔を正面に向けて対峙することはできなかった。向き合うのが怖い、と感じさせられた、とにかく圧倒された私がいた。

特に印象に残ったのがデスの最後の表情。自分がしてしまったことに対する後悔とこれから背負う罪への怒り、そしてかろうじてミドが真実を知らないということへの安堵が混ざった、限りなく絶望に近い希望であったように感じた。これを引き出した制作陣も体現した俳優本人も物凄いことをやってのけていると感じた。

オ・デスが経験する拷問は平凡な日常を生きる人間からは想像もできないほど残酷だ。復讐を行うウジンに対して「目には目を、歯には歯以上のもので復讐する必要があるのか?」と思うこともあったけれどこの考え自体が間違っていた。

「砂粒であれ岩の塊であれ水に沈むのは同じ」
という文言によって気付かされたのだ。

何に気付かされたのか、というと他人の傷の深さを勝手に推し量ろうとしていた自分自身である。

私は、映画を見ながらウジンと姉が経験した境遇の意味付けを勝手に行なっていたのである。「そこまでする必要が?」と思っても本人たちにはそこまでする必要のある傷だったことは他人から決して見えない、そして理解できないことの方が多い。そんなことに今更気づいた。

いろいろ書いておいてだが、結局わたしは救いの物語が好きだ。どんな人間でも、罪を犯した人間でも人生をやり直すことはいつだって可能であることを信じている。だから
「獣にも劣る人間ですが生きる権利はあるのではないでしょうか」
この言葉が聞ける映画があることに喜びを感じた。

ものすごいプロットをものすごい映像で魅せられた2時間だった。感服!!

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