AbemaTV「極楽とんぼKAKERUTV」で私が受けたハラスメント
9月1日、BuzzFeedで「Abemaが非公開にした『くそババア』罵倒映像 過激化するネットテレビの2つの問題」という記事が配信されました。拝見したところ、結構なバズり具合です。
冒頭に出てくる、「生放送中に男性陣からハラスメントにあった」とBuzzFeed Newsに連絡したAさんとは私のことです。記事は「規制のないネットテレビの問題点」を洗い出し、社会に問う内容ですが、ここでは私自身が気持ちに整理をつけるためにも、事の次第を振り返ってみたいと思います。
noteというメディアを使うのは初めてなので、不慣れゆえ至らないところも多いでしょうが、どうかご容赦ください。
*以下、お酒の席でハラスメント、暴行、虐待を受けた経験がある方、目上の人から大声で罵倒された経験がある方には読んでいてつらい記述もあると思います。ご注意ください。
はじめまして、の方も多いと思うので最初に簡単な自己紹介をいたします。
私は、桃子という名前で活動しています。その前に「バイブコレクター」と付けるときもあります。世界のラブグッズを紹介するというのが、主な活動内容です。
ラブグッズというとピンと来ない方もいろと思いますが、オトナのオモチャというと通じるでしょうか。……おっと、できればここで引かないでいただきたい! この後の内容に性的な表現はまったく出てきません。
むちゃくちゃ微力ではありますが、自分なりの使命感も持って活動しています。それは、日本の女性たちがもっと主体的&ハッピーに性を愉しめるようになればいいな、というもの。そのためのツールとしてラブグッズを提案しています。おかげさまでスポーツ誌やネット媒体などのメディアを通しての発信もさせてもらっています。
けれどこの活動は私のなかでメインに据えられたものではありません。生活をしていくための仕事があり、それに対して「課外活動」のような感じで従事しています。
しかし昨年後半から、生活のためのお仕事が忙しくなったり体調を壊した時期があったりで、この課外活動に自分のリソースをあまり割けない期間がつづきました。発信活動のなかには「お仕事」として受けているものもあり、それをこなすので精一杯。お世話になっている方たちに対して申し訳ないと感じていました。
いきなり何の話をしているんだと思われるかもしれませんが、これからしたためることに大きく関係しているのです。
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十分に活動できておらず不甲斐ない思いをしている私のもとに、ネットテレビ出演の依頼がありました。ここ数年はテレビやトークイベントなど、人前に顔をさらす仕事を控えていた私ですが、「最近あまりメディア露出できていないから、ここらで出ておこう」と横着なことを思ったのです。後に私は、「こんなズルいことを思ったからだめなんだ」と悔やむことになります。
さて、“顔をさらす仕事”といいましたが、私は生活のための活動とこの活動を完全に区別しているため、桃子名義での仕事では、仮面を着けています。プライバシーを守りながら、この活動をしていきたいからです。
とかく性にまつわる発信をしている女性は、好奇の視線にさらされたり消費されたり誹謗中傷を受けたりしがちです。それは避けたいと思って仮面を選択しました。私は自分の経験や知識を発信したいだけであって、容姿をとやかくいわれたくないし、自分自身が性の客体になりたいわけでもない。それもあっての、仮面です。
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前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
依頼を受けて私が出演したのは、AbemaTV「極楽とんぼKAKERUTV」という番組の、「“狂犬”加藤が酔ってます!本音スッキリ生暴露3時間SP」という回でした。それまで番組のことはまったく知りませんでしたが、ここのところ十分活動できていなかったことの埋め合わせをしたかった私にとって、これだけ知名度の高い人の番組からのオファーは、平たくいうと「ラッキー」と思ったことを、ここで告白しておきます。
生放送の前には、番組制作会社の担当者と電話で一度、直接顔を合わせて一度の打ち合わせがありました。合計3時間ほどです。
制作会社の男性担当者(B氏とします)は、私が「仮面を着けて活動している」ということをあらかじめ知っていました。打ち合わせのときに、いくつか仮面を用意していたB氏から「どれにしますか?」と聞かれきたぐらいです。こうしたときには自分で用意した仮面を着けることにしているので、それは丁重にお断りしました。
打ち合わせ時には、番組の主旨をうかがいました。極楽とんぼ・加藤浩次氏、カンニング竹山氏、岸博幸氏はお酒を呑んでいること(パンサー向氏、極楽とんぼ・山本圭壱氏は飲んでいない)、私が出演するパートは3時間の生放送中、最後の1時間。番組中にガチで飲酒しているので、そのころには酔っている可能性があるという話は聞いていました。
でも、「酔っている=他人に攻撃する」「酔っている=他人を貶める」ではありません。
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さらにB氏からは、そうはいっても加藤氏はこの世界の第一人者なので、酔っていても番組は進行できる、ざっくばらんにおしゃべりしてください、という説明もありました。彼の出演番組をちゃんと見たことはありませんが、そんな私でも知っているレベルの有名タレントさんです。なるほど、お酒を飲むといっても進行に支障が出るほどではない、もしくは、酔っているように見せても実はそれほど酔っていないのだろうと思いました。
また、共演者のカンニング竹山氏についてですが、私はかつて、氏が司会を務めるネット番組に出演したことがあります。そのときには非常に紳士的に接していただきました。ラブグッズを紹介する女性、という偏見もその時の氏からは感じられず、私は安心してお話できました。これだけ売れっ子の方なので覚えてはいないだろうとは思いまいしたが、このことも今回の出演を決めた、安心材料のひとつになっていました。まさか、番組、共演者、立ち位置が違うと手のひらを返すように真逆の態度を取るとは思っていませんでした。
B氏との打ち合わせにおいてこうした説明はごく軽くなされ、あとは私が番組中で紹介する「オススメのラブグッズ」についての相談に時間が費やされました。私は日ごろ、国内外のすてきなグッズを広く知ってもらいたいと思って活動しています。ですので、時間をかけてグッズ紹介をできるのだなとうれしく思いました。
ちなみに「女性評論家」とは、B氏から「そういう括りになりました」と聞かされたものです。私からそう申し出たということはありません。
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当日AbemaTVのスタジオに行き、楽屋で、ほかの“女性評論家”出演者とともにB氏と打ち合わせをしました。それぞれの“オススメ”についてフリップが用意されていて、それを見ながら段取りの最終確認をされました。台本も用意されていて、目を通すと、やはり“オススメ”に関するトークが中心になっていたので、ありがたいとも思っていました。
打ち合わせ中も、生放送は進んでいました。自分の出番まで支度をしながら、若手映画監督のみなさんと加藤氏・竹山氏のトークを横目で見ていました。会話が噛み合っていないところも多くありました。酔った壮年男性が若者にからんでいるだけ、と見えなくもなかったですが、そこに強い暴力性は感じませんでした。
出番がきて、スタジオに案内されました。スタジオ全体にアルコールが飛んでいるのがわかりました。すれ違うときに加藤氏、竹山氏に挨拶しましたが、おふたりで話されていてこちらのことは全く気にされていない様子でした。加藤氏の目が明らかに座っていて、嫌な予感がしました。
ここから先、私のなかで記憶が飛んでいるところがたびたびあります。
ゆえに事実からズレているところもあるかもしれません。そうでなくとも、すべては私の主観です。私の手元には、すべてを収めた動画があります。それを見ながら書けば正確を期すことはできます。ただ、その動画を見ることは私にとってひどくしんどい作業です。ですので、飛び飛びの記憶を頼りに書いていきます。
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第一ラウンドは、イケメン評論家Cさんへの罵倒からはじまりました。BuzzFeedでタイトルを飾った「クソババア」とは、加藤氏、竹山氏からCさんに向けられたものです。この暴言は、50代というCさんの年齢から来ているものだと思います。ではなぜ、すぐ隣に座っている共演者の岸氏(55歳)をクソジジイと罵らないのでしょうか。
BuzzFeedに書かれていた「差別主義者」というのも、Cさんに向けられたものです。曰く、イケメンを評価するのはイケていない男性への差別なのだそうです。私は、もしここに出演したのが「おっぱい評論家」を自称する男性評論家だったとして、彼らが同じように「それは女性差別だ!」と声を荒げることはないと思います。100%ない、はずです。
Cさんが大きな声を挙げて応戦したことにより、主に加藤氏、竹山氏の罵声もヒートアップしていきました。立ち上がって大声をあげ、平手で机を叩いて大きな音を立てました(卓上のジョッキがガシャンッと音をたてるほど)。罵声のあいだにCさんが発言しても、次の罵声で遮られました。
私にとってこれは「面前DV」のようなものでした。子どもの前で一方の親がもう一方の親にDVを働くことを、こういうそうです。子どもに直接的な危害はないですが、それでも心に大きな影響を及ぼします。酔ってわめき散らす男性は、それだけで恐ろしい存在です。私は完全に萎縮しました。
同時に、「これがネットテレビってこと?」とも思っていました。加藤氏が朝の情報番組で長年、司会をしていることぐらい私も知っています。竹山氏もいろんなバラエティ番組で司会をしたりコメンテーターをしたりといった姿を見たことがあります。
もし地上波で、彼らが50代女性をゲストに迎えたとして、第一声から「クソババア」と怒鳴ってゲストの発言を封じるといったことはしないと思います。
この時点で私は、眼の前で起きていることは“アルコールが絡んだ暴力である”と認識していました。この後、その矛先が自分に向かってくるだろうことに恐怖しました。
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Cさんのターンと私のターンのあいだに、本来なら温泉評論家のDさんのターンがあるはずでした。Dさんが楽屋でいろいろと準備されていたのを私も見ていました。けれどDさんは存在そのものをほぼ無視され、発言の機会はほとんど与えられませんでした。それはなぜか? 私なりの解釈を追ってお話いたします。
いよいよ私が罵倒される番だ……。逃げたいと思いましたが、そうもいきません。
しかし彼らは私に対して、顔を真赤にして怒鳴ったり、「クソババア」「差別主義者」などの強い言葉で罵倒したりすることはありませんでした。
「仮面取れよ」
加藤氏にそう言われた時、足の感覚がスーッとなくなりました。多くの人にとって、プライバシーはとても大切なものだと思います。私にとってもそうです。それが危機にさらされた瞬間、自分がどこにいるかわからなくなるような、そんな不安に襲われたのです。
加藤氏、竹山氏、岸氏が口々に、仮面を着けて評論家だなんて信頼できない、自分の言う事を信用してもらいたいなら顔を晒すべきだ、ここで仮面を取れ、と言いました。「あなたのやっている事はとてもいい事だと思うけど」というエクスキューズが付く場合もありました。いい事だからこそ、仮面を着けてたら信用してもらえないぞ、と。
私は8年来、この活動をしていますが、そんなことを言われた事は一度もありません。いえ、もしかしたらそう思っていた方もいるかもしれません。そんな方は、私や私の発信している内容はその後、見なくなったと思います。そういうものでしょう。それは受け手が決めればいいこと。「俺を信用させるために仮面を取れ」というのはお門違いです。
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こちらからは「顔を出して性を発信することは女性にとってリスクが高い」「プライバシーを守りながら発信したい」というようなことを伝えたと思います。完全に萎縮していましたし、うまく説明できたとは思いません。加藤氏は「俺らはオナニーする女をヘンな目で見ないのに」といったようなことを発言されました。それが本当だとしても、私が顔を晒す理由にはなりません。
竹山氏からは、某ラブグッズメーカーの女性広報たちは顔も名前も出して活動しているのに、というようなことを言われました。私もその会社の広報の方とは何度もお話したことがあります。とても素敵な女性であることも知っています。けれどそれは、私が仮面を着けていることとは無関係ですし、そもそも立場が違います。なのに比較され、否定されることは私に大きな苦痛をもたらしました。
加藤氏の相方である山本氏が、「じゃあゲッターズ飯田はどうなんだよ?」といいました。ご存知の方も多いと思いますが、仮面を着けた占いタレントさんです。加藤氏の返答は、「あんなのクソ野郎だから」という小学生のようなものでした。それがタイガーマスクだったら、どう返ってきたのかな。
私はグッズを紹介するために出演しているのです。合間を縫ってグッズの話をしようとしました。Cさんや山本氏はそれをフォローしてくれました。加藤氏、竹山氏、岸氏はその話を無視してなおも仮面を取るよう迫ってきました。取れないなら帰れ、といわれました。念のため繰り返しますが、私はオファーを受けてこの番組に出演しています。仮面を着けての出演は、オファー当初から制作会社も了承済です。というか、仮面がNGなら私は出演しません。
彼らが本当に仮面を取らせたいわけではないことはわかっています。彼らがしたいことは“いじめ”だった、と私は解釈しています。
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その人をいじめるには弱点をつくのがもっとも効果的です。Cさんの場合は、年齢でした。私は女性が歳を重ねることがウィークポイントだとは全く思いませんが、彼らの価値観において、それはいじめていい要素なのでしょう。だからこそ、「クソばばあ!」と怒鳴り続けたのです。
私においては、仮面です。顔を出せない、これは確かに弱い。彼らにとってもほんとは仮面はどーでもいーはず。でも、いじめネタとしてはこれ以上ないものでした。実際、私は困り果てました。
Dさんが無視されたのは、おそらくいじめネタが見つからなかったからでしょう。けど、無視も立派ないじめです。
CさんもDさんも彼女も制作会社から依頼され、イケメンや温泉を紹介するために出演したはずですが、それはまったくさせてもらえませんでした。私たちは「あなたの活動を紹介しますよ」というオファーを受けて、出演を承諾しました。それなのに公開いじめに遭うとは、だまし討ちでしかありません。
ここまで書き連ねてきましたが、私が「あ、これいじめなんだ」と思い至ったのは、帰りの電車に揺られているときのことです。オンエア中はそんなことも考えられませんでした。頭が真っ白でした。自分がどう受け答えしたのかもほんとはよく覚えていないんです。でも、何をどういっても「そういう理由だったら仮面を取らなくていいよ」とはならなかったはずです。目的がそこにはないからです。
Cさんのときと同じく、これが「ラブグッズを紹介する男性」だったら、ここまでいわれるだろうか? とも考えました。私が女性だから、そしてアダルト系の人だから、こき下ろしていいということを肌で感じていました。
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BuzzFeedの記事で、ジャーナリズム研究の林香里さんが、
「まず、この番組は、ゲスト以外は全員男性で、もともと『女性評論家』という女性を強調した人を集めて、『ババア』『てめえ』『くそ野郎』などと罵倒、全否定しています。当初からこのような女性蔑視の企画だったのではないでしょうか。女性で評論するなんてこざかしい、生意気だ、ばかにしてやれという女性差別が見え隠れします」
と指摘されていましたが、ハッとしました。まさにこのとおりだと思います。それにも気づかず、3時間も打ち合わせをし、紹介するグッズを選んだり、お話しする内容を提案したりした自分は、なんて馬鹿だったんだろう。
それもこれも、「ここでメディア露出して埋め合わせよう」って安易な考えで出演したからだ。あー、そんなズルいこと考えなきゃよかった。
と脳内がぐるぐる渦巻くほど後悔しました。いまとなっては、どんな動機で出演したところで、いじめを受けていいということは絶対にないとよくわかっています。けれど、そう思わせるマジックのようなものがあり、すっかりそれに引っかかっていました。
オンエア中に「もっとうまく受け答えしなきゃ」「こんなつまらない返しじゃダメだ」と焦りました。それが“テレビ”だからです。私はテレビタレントではないですし、テレビの力学に乗っからなけらばならない謂われはありません。しかし、知名度バツグンのタレント、スタジオ内で立ち働く大勢のスタッフを前にすると、なぜかテレビ的に振る舞わなければ、という気持ちになったのが、とても不思議です。
私も視聴者にウケる言動をとらなければならない。そんな空気が確実にありました。テレビの力学に従え、というあきらかなプレッシャーがそこにあったわけではなく、勝手にひとりでそれを内面化していました。ほんと不思議。
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BuzzFeedさんの記事が出た後、Twitterで教えてくださる方がいて、Cさんはその後、同番組に出つづけて加藤氏とクソババアなどと言いながら罵り合う芸を披露されていると知りました。申し訳ないのですがそれを動画で見て確認する勇気が、いまの私にはありません。
Cさんは気にしていないどころか、あれをおいしいと思っていた。しかも次の仕事につながった、なのにお前が騒ぐのはおかしいじゃないか……? いやいやいや。
先ほど「面前DV」と書きましたが、人への暴力を間近で見ることはそれだけでショッキングな体験だと思います。まして「年齢」「性別」についての暴言を聞かされてまったく平気な人というのは、あんまりいないのではないでしょうか。これがCさん個人への暴力である、Cさんが平気だったからOKというのは、問題を矮小化しているだけと私は考えます。
番組が終わった後、出演者の一部の方、番組スタッフの方が謝ってきました。謝ってきました、と書くととても軽い印象を受けるでしょうが、実際ほんっとーに軽くって「加藤や竹山がやらかしちゃって、ほんとすみません~。ちょっと、おイタが過ぎちゃいましたね」というノリでした。これはあくまで主観です。もしかしたら、本当に申し訳ないと思っている方もいるかもしれませんが、私にはそう感じられませんでした。
楽屋まで謝りにきたスタッフもいました。ただその人らはどこの所属のどういう立場なのか、名乗ることも名刺を出すこともありませんでした。おそらく、それまでにやりとりしていた制作会社B氏より上の立場の人なのだと察しはつきますが、まったく責任の所在をあきらかにしないままの謝罪を私はどう受け取っていいのかわかりませんでした。
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謝るといっても、あまりにノリが軽~いため、私は「あれ、これをイヤだと思った私がおかしいのかな?」と思いました。こういうのを笑って流せないのは無粋なのかしら。むしろ「おいしい」ぐらいに思うべきなのかしら。
帰り道にも何度も考えましたが、そんなのヤなこった、と思いました。あれは暴力だし、私は被害を受けた。いじめでありセクハラである加害行為にさられているところを、生放送で流された。事前に確認があった「仮面をかぶって出演」を反故にされかかり、不当な方法でプライバシーを危機にさらされた。
ほかの出演者の方のように「え~、いいですよ~」はいえなかったし、いわなくてよかった。
帰りの電車ではずっと手が震えていました。テレビ出演、しかも生放送という慣れないことをする緊張が解けたのもありますが、罵倒する声、ねちねちと「仮面を取れ」と迫る声がずっと耳の奥に残っていたからです。
気を紛らわせようと、番組のへの反応をSNSで検索もしました。あれはひどい、といってくれる人がいるんじゃないかと思ってのことです。けれど番組名をハッシュタグにしてつぶやいている人のほとんどは、このいじめショーを楽しんでいました。「さすが狂犬加藤」「もっとやれ」みたいな書き込みを見てめまいがしました。検索なんて、やめときゃよかった。
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翌日、制作会社のB氏にメールをしました。B氏から打ち合わせ時に「これからもこうした番組を作るから、面白い人を知っていたら教えてほしい」といわれ、周囲の友人、知人の名前を挙げたからです。その人たちに絶対コンタクトしないでほしいと伝えました。
それに対する返信で、3時間生放送中の、私たちが出演したパートのみアーカイブ動画を非公開とする、と連絡を受けました。読んだ瞬間、ほっとしました。自分がいじめられている姿をこれ以上垂れ流されるのは、耐えられなかったからです(もうひとついうと、「放映されたものはアーカイブ化され、番組HP上で視聴できる」ということを私は事前に知らされていませんでした)。どうしたら動画公開をやめてもらえるか、しかるべき人に相談しようと考えているところでもありました。
同時に、「番組側もあの映像はマズイと思っているんだ」ということがわかりました。「あれをおかしいと思ったのは、私だけじゃない」という気持ちも芽生えてきました。
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そこでいろんな方に相談し、「それは暴力だよ」と励まされ、BuzzFeedの播磨谷拓巳さんを紹介していただきました。
動画は見られたくない、でも、なかったことにさせたくもない。
勝手な言い分だと思われるかもしれません。でも放っておけば、また次の犠牲者が出ると思いました。
今回ハラスメントをした人たちは超人気タレントで、テレビを点けると結構な確率で出くわします。地上派で見せる顔は、ネットテレビで見せる顔と明らかに違います。なんなら歯に衣着せぬ発言をする“良識派”という印象づけに成功もしています。
なのにネットテレビでは、女性を罵倒し、特定の国の俳優を好きな人たちを全否定し、自分たちが依頼した出演者を公然と無視し、人のプライバシーを危険に晒す……この使い分けが、気持ち悪くてなりませんでした。そういうことが許されるネットテレビって何なの? とも思いました。
記事化をお願いしたのは、その「ネットテレビって何なの?」「ああいうことを許す場なの?」という疑問に答えが欲しかったのと、再発防止を願ってのことです。私ひとりの問題に閉じ込めてはいけないと思いました。謝罪などを求めてのことではありません。そもそも私は、表面的な謝罪を必要としていません。番組終了後、およびB氏からのメールで彼らが何に対して謝罪しているかは、もう十分見ました。「不快な思いをさせたこと」への謝罪というのが、そもそも的外れです。
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このことを出演タレント個人や番組制作側だけの問題ではなく、ネットテレビが抱える構造的な問題だというのをすぐに見抜き、広く社会に問題提起する記事を出してくださったBuzzFeedさん、記者の播磨谷さんに心から感謝いたします。
林香里さんの「日本的なオヤジカルチャーと、人権感覚ゼロの低俗娯楽がミックスした最悪の番組」という表現が、これ以上ないほど的確で、読んでいて思わず立ち上がってしまいました。
しかし、年若いアイドルへの暴行や、それに対するベテランの超有名お笑いタレントの「テレビじゃないから。これネットだから。BPO関係ない」というけしかけなど、読むに耐えず動悸がしました。耳の奥で「仮面を取れ」という声が再生されました。
なので、まだ内容をしっかり読んだとはいえないのですが、今後の勉強のためにも落ち着いたら繰り返し読むつもりです。
ネットなどの反応を見ていると、加藤氏はそういう人間なんだから出演したほうが悪いという声に出くわします。そうした被害者の自己責任を求める声を、私は受け付けません。酔っぱらい相手に何いっても無駄という声もありました。酔っぱらい無罪じゃない、というのはネットテレビ云々関係なく、実生活でもいえることじゃないでしょうか。
また、極楽とんぼ・山本氏の過去の犯罪歴を引き合いに出す方がいます。が、これははっきりさせておきたいのですが、私は山本氏からはハラスメントは受けておりません。山本氏がしたことは許されないことだと思いますし、彼らコンビにそうした暴力的な側面があるのもわかりますが、過去に女性が受けた被害と今回の私の件をごちゃまぜにするのは違うと思います。その女性にも失礼だと思います。実際、私は彼からは被害を受けていないので。そのあたりをお間違えなきよう、お願いします。
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ここに至るまで相談に乗ってくれた方、ただ話を聞いてくれた方、「それは暴力だよ」とはっきりいってくれた方に何度でもありがとうといいたいです。
これからもプライバシーを守りながら、活動していくつもりです。
桃子
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