現役作家、浜村氏のコメントから学ぶ事

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今回の記事では、2016年3月に漫画原作者の浜村としきり氏からいただいたメッセージ文を紹介したい。

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事の始まりは、浜村氏が執筆していた漫画『エロゲの太陽』の連載終了後に、筆者がTwitterのDMで感想文を送った事。


その後、浜村氏がご丁寧な返信をくれた際に「このメールはブログなどで公開しても大丈夫です」という承認まで添えてくれたのですが……。

筆者がブログなどをやっていなかったため、浜村氏のコメントを長らく死蔵しちゃっていたわけです。いや、ホントに申し訳ない。

しかし、今回、筆者がnoteを始めたことをきっかけに「このままではいかん」と一念発起。

再度の許可を浜村氏にいただた上で、ようやく公開することになった。

……と、まぁ。そういう経緯です。

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ともあれ。

浜村氏からいただいたコメントは、世の作家志望の皆さんには学ぶことが多い名文なので。

是非とも、一人でも多くの人に読んで欲しいと思う。

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以下、前置き

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「エロゲの太陽」とは、神田太陽(かんだたいよう)という名の主人公が活躍する、ビジネス漫画です。太陽は元はやり手のビジネスマンだったのですが……。

自己責任


とある事件がきっかけで一流企業からドロップアウトしてしまい、行き倒れになりかけていたところをとある会社の女社長に拾われます。


捨てられた


んで。その会社が、アダルトゲームのメーカーだったと。

しかも、『ドキ! 女のコだけのエロゲ会社だヨ!!」というワクワクの展開!(笑)
もう、ドキドキがたまりませんね!!


そんな超楽しい漫画も、単行本にして全四巻でついに完結。

最初から最後まで、ただただひたすらに面白かったハイクオリティの作品『エロゲの太陽』が完結して間もなく、
筆者は浜村氏に感動の余韻が冷めやらぬうちに、けっこう熱のこもった感想メッセージを送ったのでした。

その感想文の趣旨は以下。

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「本当に最高の漫画でした。2015年に読んだ漫画の中では、個人的に一番のお気に入りです」

「多くの事を学びました。有難うございます」

「特に、この漫画を読んだことで、自己責任という言葉に対する印象が変わりました」

「実は作品を読み始めた当初、主人公の太陽が『自己責任』という言葉を否定的に使う事に対して抵抗感がありました」

「……と、言いますのも。私は、自由とは愚行権のことであり、愚行権と自己責任はセット商品だと考えているからです」

「自由や挑戦の果てに、つらい結末を迎える事があっても、それはそれで受け入れるべきだと。そう思っています」

「自己責任の精神があって、初めて愚行権は許されるものだと。その考え自体は今も変わっていません」

「しかし、頑張った人間が、うまくいかなかった時、窮地に陥ったときに、手を差し伸べたいと思う人もいる」

「太陽の活躍を見て、自己責任論に捕らわれるのも良くないと思うようになりました」

「とは言え。作品の中で、太陽が手を差し伸べた人達の多くは、自由の果てのつらい結末を受け入れていた人達ばかりでした。逆に言えば、そういう覚悟ある人達だからこそ、太陽は彼らを助けたいと思ったのかもしれませんね」

「窮地に陥った時に周囲に助けを求める事は大事だとは思いますが。黙って耐え続ける事で、救いの手が差し伸べられることもある」

「難しいものですね」(苦笑)

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……といった、趣旨の感想を送ったわけです。

それに対して、浜村氏が返してくれた感想が、以下です。

(ようやく本題ですね。前置きが長くなり失礼しました)


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お返事遅くなってすみません、浜村です。

 小説書いたり営業したり新作準備したり借金したりで、ちょっと忙しくてなかなかお返事できませんでした。

 まずは感想ありがとうございます。マイベスト入りうれしいです。

 前提として理解していただきたいと思うのですが、作品のテーマについて作者が自分で解説するのは、かなり恥ずかしい行為でして、

「作中からは伝わらなかったけど、こういう意図だったんだ」

 って感じにしか見えないので、あまり言わないようにしております。

 自己責任については絵ろ屋かおすさんのおっしゃるとおりで、自己責任という言葉は自分自身に対して使うなら大事なことだと思います。

 他人に対して使うと急に無責任に感じられるので、太陽も過剰に反応しちゃうのだと思います。

 自己責任イコール愚行権というアイディアは面白いと思いました。

僕自身、大学やめて村正と二人で韓国行って、かなりギリギリな貧乏とかもしましたが、誰か他人のせいにするつもりもありませんでした。もし戦争や犯罪に巻き込まれても、それは自己責任、と自分には言い聞かせていたと思います。

 でも実際にはいろんな人に助けてもらいましたし、場合によっては大使館や自衛隊のお世話になることもあるわけで、なかなか自分の人生自分だけのもの、というワケにはいかないようです。

 そういうわけで、絵ろ屋かおすさんの言われるように「自己責任を覚悟してる人こそ助けたくなる」というのは同意しますし、だからこそ助け合っていけるのだな、と思います。

 不法ダウンロード編はメーカーの方々からも血を吐くような応援の言葉をいっぱいいただきました。


不正コピー


「コピーされてもCMになるからいいだろう」とかいう論理が大手出版社から出ることもありますが……。

体力のない昨今のエロゲ業界では即致命傷になるようで、実際それで協力していただいた会社もつぶれてしまいました。ネットで広くコピペされてこのページが広まっていってくれるといいですね^^

 本編にも書きましたが、クリエイターが本来得る利益を損なわないなら、コピーはむしろ歓迎すべきところでして、

・出典をあきらかにする
・論評のための引用

 などは著作権法上でも例外として規定されています。エロゲの太陽ではこう言っていたよ、とアマゾンリンクの一つも張ってくれるなら、僕としてはどんどんコピーしてほしいところなんですが……ゲフンゲフン。

 キャラクターで言えば、僕は芽衣がわりと好きで、ああいうエネルギッシュなキャラは描いてて楽しかったです。

 そういう意味ではブラック社長や絵理子さんもそうですね。絵理子さんは倒産編でちょっとかわいそう過ぎて、読みかえすと胃が痛いのですが、ブラック社長はちゃんと成敗されるし、全般に悪役は書いていて楽しいものでした。


エロゲの黒永


 悪役を書く楽しみは創作をするものだけの特権ですね。そういう意味では不法コピーのゴッドも好きです。寂しかったんだ、っていいわけも聞いてもらえないですし。もちろん霧崎も大好きな悪役です。悪役なのに良いこと言うやつとか。

 ちなみに編集部では第1話の専務がちょっと人気だったそうです(笑)

 ついでに書いてて楽しくなかったシーンも挙げておきますと、ダントツで単行本書き下ろしのハマイカです。ネーム書いていて本気で具合悪くなってくるので困ったのですが、「みんな他人の不幸が楽しみなんだよ、頑張って!」という担当氏の暖かい応援のおかげで乗り切った覚えがあります。

 という感じの解説になってしまいましたが、本当にお便りありがとうございました。

今後はあんまり大人向け社会派漫画はやらないで、本業のエロっぽい萌えっぽい漫画をやっていくと思うのですが、あわせて楽しんでいただけると幸いです。今年は小説もちょろちょろ書こうと思っていますし、村正と組んで二十五周年でもあるので、ちょっと変わった企画などもやっていきたいと思っています。

どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

追伸、このメールはブログなどで公開してもらっても結構です。


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……以上が、浜村氏のコメントです。

どうです?
作家志望の皆さん。

凄く勉強になったでしょう?

若いころのエピソードなんて読んでいてワクワクしませんでしたか?

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僕自身、大学やめて村正と二人で韓国行って、かなりギリギリな貧乏とかもしましたが、誰か他人のせいにするつもりもありませんでした。もし戦争や犯罪に巻き込まれても、それは自己責任、と自分には言い聞かせていたと思います。

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『大学やめて外国に行く』なんて、凄い冒険ですよね。

特に、韓国という国はもう70年にもわたって北朝鮮と『戦争をしている国』なんです。一見すると平和に見えますが、実は休戦中という状態に過ぎません。そして、日本よりはるかに多くの人々が拉致をされている国です。

若い頃の浜村氏が飛び込んでいく時、さぞや勇気が必要だったろうと思います。

でも、そこに『学ぶことがある』と思ったから、危険を冒した。冒険をした。

その体験こそが、後々の作家としての財産になったのでしょうね。

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本や映画、アニメやゲームなどで学べることには限界があります。

若くしてそれを理解していて、若いうちだからこそできる冒険に踏み切った。

そういう事ができる人達だったから、後々に『エロゲの太陽』という名作を生み出すことができたのだと思います。


あと、個人的に興味深く思われたのは以下のくだりです。

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クリエイターが本来得る利益を損なわないなら、コピーはむしろ歓迎すべきところでして、

・出典をあきらかにする
・論評のための引用

などは著作権法上でも例外として規定されています。

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これ(↑)
けっこう目からウロコ、だと思いません??

現役作家さんの中には『クリエイターが本来得る利益』を損なわない限り、コピーによる宣伝は歓迎すべきところ、という考えの方々もいる、ということです。

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個人的には、我々のような作家の卵が現役作家さんの作品を引用する際は『好意的な論評』が前提になると思います。

…え?

なんで「好意的な論評じゃないと、引用しちゃ駄目なの」とな?

……いや、そりゃそうでしょ。

現役作家さんは、作品を売ってお金を稼いで、それで生活をしている人達ですよ? 

今、現在生きている人達の作品を否定的な論評のために引用するとか、盗人猛々しいにもほどがあるってもんです。

先輩の商売の邪魔してどうするんですか。


自分の論評を読んだ人が、

「うわ? なんか、めっちゃ面白そうな作品なんですけど?」
「おっしゃ! Amazonでポチったれ!!」


……となるような好意的な引用こそが望ましい。


あなたが作家を目指している人なら、安易に今現在生きている作家さんの作品をけなして、その先輩諸兄の生計の邪魔をするべきではないと思います。


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ともあれ。

世の作家の卵の皆さん!

好意的な論評のための引用で、かつ出典を明らかにするなら、コピーはわりとオッケー。

オッケーなのです!!

偉大なる先輩方の作品をどんどん引用して、自己アピールに活用していきましょう。

そして先輩作家さんの作品の売り上げにも微力ながらも貢献し、先輩諸兄から感心されちゃいましょう!!

そう。

『感心される』ことが大事なのです。

もしかしたら、『感心』のその先に、……。

『ひょっとしたら』ですけど、ちょっといい事があるかもしれないじゃん?(笑)

いや、だって、ほら。

そういう好意的な論評のための引用なら、作家さんのみならず、その作品の制作に関わった編集者さんや出版社、印刷会社、広告代理店の担当者さんの目にも留まるかもしれないじゃないすか。

「おお。この記事、いいな」

「私が以前に関わった作品を、かなり気合を入れて紹介してくれてるじゃないか」

「しかも、ちゃんと出典を明らかにしたうえで」

「今時、感心なヤツだ。……どんなヤツだ?」

とか何とか。

そう。つまりは。

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じぶんのうりこみにつながるかもしれないじゃん?

すてるすまーけてぃんぐ、だいじだよ?

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……と。
ちょい、脱線しちゃいましたが。

マジメな話。


『エロゲの太陽』はクリエイターの卵なら学ぶことが多い、不朽の名作です。

今、この記事を読んでいるあなたは。

作家に憧れる人ですか?

エロが好きですか?

ゲームも好きですか?

ならば、『エロゲの太陽』を読みましょう。買いましょう。

電子書籍なら、いつでもどこでも読めるので買いましょう。


つか、紙の本が絶版になってるとか、マジで信じられない。
この世に神はいないのか。

……でも、大丈夫。



電子書籍なら、今でもフツーに好評発売中。

買いましょう。

……え? 何?
電子書籍ならいつでも買える?

馬鹿野郎、何言ってんだよ。

今すぐポチるんだよ。

こんな面白い漫画を読むのを先延ばしにするとか、何考えてんだよ。

そーゆーグズでノロマなことやってるからオマエは駄目なんだよ。

そんなだから、プロのクリエイターになれねーんだよ。

いつまでたってもうだつのあがらないシケた人生、送り続けるハメになってんだよ。

……おいおい、何ムっとした顔してんだよ。
ホントの事だろうが。

でも、大丈夫だ。

稼げるプロのクリエイターになるための、方法は存在する。
スーパークリエイターになるための方法は確かに存在する。


エロゲの黒永



稼げるプロのクリエイターになる確率を上げたいか?
0.1%でも上げたいか?


なりたいよな? プロのクリエイターに。
上げたいよな? なれる確率を。


ならばポチれ。『エロゲの太陽』をポチれ。

今すぐ、ポチれ。そしてすぐ読んで学べ。

この作品こそは、すべての作家の卵にとって必見の書なのだ。

おれはそう思う。




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