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祖母への手紙その7霧ヶ峰

地元山口のケアハウスで暮らす祖母に、時々手紙を書いています。


おばあちゃん、元気ですか。東京は桜が咲いたと思ったら強い風の日が続いて、それを耐え忍んだ花が、ちょうど散り始めました。今日は花冷えというやつです。気温が低いせいか、遠くの山がよく見えます。あれは丹沢の山々だと思います。冬の間は、その向こうに富士山も見えていました。そう、年末に古い一軒家から、これまた古いマンションに引っ越しをしました。6階になって、とっても眺めがいいです。6階は東京では高層のうちに入りませんが、うちのマンションから南側はなだらかに下っていて、辻々にある桜の木が遠くまで、ある日一斉に膨らむのが見えました。


 今日は朝から、豚汁を作っています。冷蔵庫やカゴの覆いの下で冬を越した野菜をみんな入れました。大根、にんじん、里芋、さつまいも・・・ほとんどお父さんの畑から来たものですね。冬の総浚いです。最近、年始に山仲間と高尾の景信山というところに登って餅つき大会をするのが恒例になってきました。(今年が2回目でした。)その時にも豚汁を炊くのですが、玉ねぎを入れると美味しいと教えてもらいました。うちの方では玉ねぎは入れたことがなかったですが、すごく合います。美味しい。でも今日は入れません、今うちにある玉ねぎは冬を越したものではなくて、ついこの前送ってもらったばかりの新玉ねぎだからです。冬を越さない新物には、それらしい食べ方があるでしょう。柔らかく、頭につきっぱなしだった青ネギ部分を切ると溢れるように汁が滴ります。あの青い部分をよく、紐で縛って家の軒に吊るしますが、東京ではもちろんほとんど見かけません。玉ねぎの底を地につけないように持ち上げて、風通しよくしておけば、何ヶ月も日持ちがしますね。私は古い金網のびくに玉ねぎを入れて台所にぶら下げています。この魚籠は随分前に古道具屋さんで買いました。骨董趣味は完全におばあちゃんからの遺伝ですね!

 
 たまに、おばあちゃんがよく「生き馬の目を抜く東京でよく生きてるもんだ」と言っていたことを思い出します。それを言われるたびに、なんとなく目が痛いような気がしたものです。本当はずるくて抜け目がない、油断ならない、という意味ですね。もしかしたらもう、私の目は抜かれているかもしれないです。もしかしたら気がついていないだけで、他人の生き目を抜いていることもあるかもしれない。東京生活、なんと23年目の4月です。
そっちも食卓に春のものが並んでいるでしょうか。明るい気持ちで、よく食べて、元気に過ごしてね。以前のように、おしゃれも楽しんでくれていたらいいなと思います。 未知

2022年4月1日

追伸 この前雪の霧ヶ峰に行った写真を少し送ります。

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