#49

ゴダールが亡くなった。
初めて観たのは大学1年生の頃だから、10年前。TSUTAYAの名画コーナーにある『勝手にしやがれ』から手に取った。カットがポンポン飛んで、あまり良い印象はなかった。(ジャンプカット多用の昨今流行りのYouTube編集も好まない。ゴダールがYouTuberになったら、逆に長回しするのかしら)

初めてゴダールを良いと思ったのは、大学二年の夏。映画好きの友人に息荒く『女は女である』のBDを勧められたときだった。当時はアマプラにゴダールなんてなかったし(アマプラがあったかどうかも分からない)、近くのTSUTAYAに『女は女である』なんて置いてなかった。友人は新宿紀伊国屋の一階で購入したらしい。画質パキパキの『女は女である』は、それはキラキラして見えた。
そこからは、月並みに漁った。大半がよく分からなくて、60分くらいの作品でも、何度も一時停止しながら観た。そのなかで個人的に好きだったのは、『右側に気をつけろ』。レ・リタ・ミツコの音楽が印象的なこの一本は、カラックスの『ポンヌフの恋人』に共鳴していた。どちらも、かつてあった手触りを確かめながら踊る映画。ゴダールなのに、ちょっとうるっとくる。
後は、刈谷日劇(地元近くの極小映画館)の特集「ゴダールでござーる」(ネーミングセンスが刈谷)で観た『女と男のいる舗道』はすごかった。「女優を綺麗に撮る」なんて表現をたまに見かけるが、ゴダールはそんなではなく「おれが知ってるアンナ・カリーナの可愛いところをお前らに見せてやる」的な感じを受けた。あのアンナ・カリーナが身長を測るシーン、めちゃくちゃ可愛い。有名な、アップで涙するシーンよりも印象深かった。
それから銀座シネスイッチでお年寄りに囲まれながら観た『さらば、愛の言葉よ』(3D)も忘れがたい。影とか文字とか水面とか、3Dになり得ないものにばっかカメラを向けて楽しんでる。このじいさんは当分元気だろうと思いながら観た。

ゴダールが亡くなった。勝手にずっと居続けてくれるものだと思っていたが、そうではなかった。自分のような映画好きが勝手に、思い出語りの口実に追悼するだろうと思う。


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