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令和6年第2回定例会が閉会しました②一般質問について解説します

おはようございます。杉並区議会議員の前山なおこです。

前回に続き、令和6年第2回定例会の一般質問「学校におけるICT活用について」です。

2019年に文部科学省がGIGAスクール構想を発表し、区内の小中学校でも1人1台タブレットが完備され約3年が経ちました。タブレットが配布されたことで、これまでにはなかったようなネットいじめやオンラインゲーム上でのトラブルなど、新たな問題も増えています。

これまでの日本の学校では、デジタル機器やインターネットの利用に関する行動規範を学ぶ情報モラル教育をしてきました。例えば、子どもたちをトラブルから遠ざけるために「学校のタブレットでYouTubeを視聴してはいけません」「ネットは1日何時間までにしましょう」といったルールです。トラブルを避けるため初めから使わせなければ問題は起こらないという理論です。

子ども家庭庁の令和5年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」では、0歳から満9歳の子供と同居する保護者に「あなたのお子様はインターネットを利用していますか」と尋ねたところ2歳で58.8%、4歳で72.1%。6~9歳の小学生では、90.0%が利用していると回答しています。また、子ども専用のスマートフォン等の所持率は、12歳で約80%、15歳になるとほぼ全員が自分専用のスマートフォンを所持するようになります。

生まれた時からインターネット社会に接している「デジタル・ネイティブ世代」である現代の子どもたちは、デジタルを知ったときから現実とネット、2つの世界に存在できるのが当たり前で、トラブルに合わないために大人がつくった約束を子どもたちに守らせようとする情報モラル教育だけではトラブルや犯罪から子どもたちを守ることは難しくなっていると感じます。フィルター制限をかけ授業とは関係のない動画やサイトを見れないようにしてもネット検索をして裏技を探し本来は見れないはずの動画やサイトを見ている子もいます。

タブレットを鉛筆やノートのように新しい文房具としていつでもどこでも自由な発想で活用できるようにしたいと掲げる一方、ルールによって自由に使わせないというのは、情報モラル教育がGIGAスクール構想の進展の妨げになっていないかという疑問の声も出てきており、情報モラルの次に来る考え方として注目されているのが「デジタル・シティズンシップ教育」です。

現代社会ではデジタル機器やネットを使わずに生活するのは電気や水を使わずに生きていくのと同じくらい難しく、デジタル・シティズンシップ教育は、それらをうまく使い、役立てるために必要な能力やスキル、問題は起こることを前提にその解決方法を考える力を身に付けようという考え方です。

文部科学省の情報モラル教育の教材を見てみると、ごはんのときもお風呂のときも就寝時もずっとスマホを見ていて寝不足になっている子どもがでてきて最後に使いすぎには気を付けましょう、という内容になっていますが、経済産業省の未来の教室STEAM(スティーム)ライブラリー内にあるデジタル・シティズンシップ教育の教材では、パソコン大好きな小学6年生の主人公がパソコンで宿題をするのが楽しい、学級新聞をつくったりプログラミングをしたり、クラスのパソコン係を引き受けて困っているお友達を助けることにやりがいを感じている。でもずっとパソコンをしていてお母さんが寝不足を心配している。自分でもマンガを読んだり外でお友達と遊びたいのに時間が足りない、 どうしよう??と悩みます。最後は、メディアの使い方、バランスを考えてみよう、という問題提起で終わります。ルールによって子どもを怖がらせる方法ではなく、視聴後は自らがどう行動していくかを考えるつくりになっていました。リアルな社会課題を自分で考える探究的な学びは子どもたちの関心や興味につながると考えます。

このデジタル・シティズンシップ教材は、子どもたちだけではなく保護者向けの動画もあるのでぜひ視聴してみてください。これまでの長時間のインターネット=悪のようなイメージが変わると思います。

欧米でデジタル・シティズンシップ教育に注目が集まっている理由のひとつにフェイクニュースがあげられます。

インターネットの普及によりSNSではさまざまな情報を入手したり、人とのコミュニケーションを図ることができるようになった一方で、フェイクニュースや偽情報と呼ばれる事実とは異なる情報が流布・共有されることが社会問題化しています。フェイクニュースだと気づかず拡散し自らがフェイクニュースの発信者になってしまったり、小学生でもインターネット上で気軽に発信、意見を言えるようになったことで発信者として社会に影響を与える可能性もあります。

元日に起きた能登半島地震では、石川県の住所が書かれ救助を求める投稿がありましたが、実際には他の被災地の動画が貼り付けられた偽の情報でした。旧TwitterのXでは、投稿したXの閲覧数が多ければ多いほどユーザーが収益を得ることができる仕組みになっており、発生直後にはインプレッション(表示回数)を稼ぐことを目的としたアカウントが多く出現しました。災害時は、ただでさえ混乱をしているため偽情報だと冷静に判断する前に混乱を加速させてしまうという問題点があります。多くの情報があふれてフェイクニュースが拡がりやすい時代だからこそ、使わせないのではなく、SNSやメディアから得た情報を子どもたちが自ら考える力を養うメディアリテラシーが必要です。デジタルシティズンシップのカリキュラムは6領域あり、メディアリテラシーはその一つになります。わたしたち大人も日々SNSで大量の情報を得ており、明らかな偽情報が拡散されていく様子をしばし目にします。子どもだけではなく大人もメディアリテラシーを育てていく必要があると思います。

昨年、文教委員会で視察した戸田市では情報モラル教育からデジタル・シティズンシップ教育へと質的転換をしました。戸田市教育委員会は、メディアリテラシー教育を受けた児童にはどんな効果があるのかを実証するプロジェクトを実施し、その結果、6ヶ月間、継続的にメディアリテラシー教育の授業を受講した児童たちは、そうでない児童に比べて、批判的思考力やメディアの知識など、メディアリテラシーの要素として重要な能力が伸びることが分かりました。

現行の学習指導要領においてはデジタル・シティズンシップ教育に関する記述はないものの、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が2022年6月に発表した「Society 5.0(ソサエティ5.0)の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」には、「次期学習指導要領の改訂の検討においても、デジタル・シティズンシップ教育を各教科等で推進することを重視」と記載されています。国としても、デジタル・シティズンシップ教育を重視していることがわかります。

主体的、積極的に安全で責任を持った行動をとる能力を育てるためにも情報モラル教育だけではなくデジタル・シティズンシップ教育の考えももっと授業に取り入れていくことを要望しました。教育委員会は今後も、これまでの教育活動と関連づけながら、デジタル・シティズンシップ教育の取組を進めることで、子どもたちにデジタル技術の活用を通じて、社会に積極的に関与し参加できる能力を育んでいきたいということでした。

わたしも子どもとタブレットやインターネットの使い方を話してみたいと思います。学校におけるICT活用については、現場の先生からも授業中にインターネットが固まってしまいデジタル教科書が開けない、児童用のタブレットの故障が多く代替機がないなど、さまざまな課題もいただいています。塾に行かなくても公立小中学校の授業で学びができるよう教育の質を上げていくことは急務ですね。家庭環境などによって子どもたちに教育格差が出ないよう必要なところに予算をつけられるようわたしも勉強していきたいと思います。最後までお付き合いいただきありがとうございました!