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2022.11.27

朝起き上がれないことが怖くて土曜の夜は寝なかったこともあって、映画館に着いたときには一度干上がっていた眠気がまた押し寄せてきた。

音が鳴って、なんとなーくねむーい空気からはっと帰ってくるとスクリーンの中で電車が走っていた。

踏切の前に背中があって、どうやら人が立って居るようだった。

銀いろのでっかい箱が風を切る音を立ててWyomingを横切っていく。

***

LAからの帰り道、サンタクララの駅で本物を見た。

Caltrainの駅。空間―space―の中にドカンとただ駅が置かれていて、そのぎこちなさにびっくりした。自分の身体をどこに置いたらいいのかわからなくなるような場所だった。近くのバス停から何かしら叫んでいる声が聞こえるけど聞き取れない。何度も何度も、同じ言葉が繰り返される。

日はすっかり落ちていた。風が上着の隙間から入り込んできて、身体を冷たくしようとしていた。ナイロンパーカーがガサガサ音を立てる。カンカンカンカンと甲高い音が頭に響いてきたと思ったら目の前を電車の塊が一瞬で通り過ぎていって、私はその場に取り残されてしまった。

この塊は人を吸収して排出するサイクルを繰り返しながらまだ西海岸に生きている。

私はその場で空っぽの異物だった。

異物は異物なりに巻き込まれレールの上に乗っかりながら強かにやっていけたらいいな、と思う。

書いてみて、人の数は違うんだろうけど、あの人が見たフィラデルフィアの駅の景色ももしかしたらこうなのかもしれない、となんとなく感じた。

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