自筆証書遺言書保管制度
叔母の遺言書作成でこれをやってみた。
自分への覚え書きとナレッジシェアの意味で記事を書いてみる。
上のリンクに必要な知識、手続き、書類等すべて揃っているので一読されたい。
メリットとしては、一言でいうと公の機関で遺言書を保護してもらえるってこと。
遺言書の紛失および第三者による改ざんや廃棄が防げ、存在と内容を公的に証明してくれる。
また家庭裁判所による検認が不要という手続き上のメリットもある。
遺言者が死亡し相続が発効した際、相続人および受遺者は遺言書原本の保管と遺言書の内容が記された法務局の証明書が受け取れるので、それを持って関係機関への各種手続きに利用できるのだ。
デメリットは特に無いと思うので、自筆証書遺言書を作成されたら利用すると良いと思う。
※申請時に手数料として3,900円(本稿執筆時の金額)法務局にて印紙を購入し申請書に貼付する。
その後の維持費等は発生しない。
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叔母は所謂おひとりさまのため、法定相続人(現時点では推定相続人)は叔母の妹である私の母になる。
しかし遺産は私へという本人の希望のため、そのことを明記した遺言書が必須なのだ。
母も今は納得しているとはいえ、時が経てばいろいろと思うことも変わってくるかもしれない。
そのためにも故人の意志は形として残しておく必要がある。
特に兄弟姉妹の場合、遺産の遺留分は認められないから。
遺言書にはその正当性を確保するため一定のルールがあるので、下書きは私が作った。
自筆遺言書の書き方そのものはここでは深く触れない。
詳細な解説サイトがいくつもあるし、ガイド本もたくさん出版されてるので、そちらを読むなりされるとよいだろう。
実際に私が作って感じた遺言書を書くにあたって重要なポイントは大きく2つ。
①誰に何をどれだけ相続(もしくは遺贈)するかを「具体的に」書く
②「遺言執行者」を明記しておく
①にある「具体的に」というのは、見ず知らずの第三者でもその人・その物を特定できる情報が併記されているということ。
例えば「誰に」の部分は、
「息子に」とか「花子に」ではNGで、身内であってもちゃんと氏名で書き、住所(住民票に記載のもの)さらには生年月日まで書いておく(氏名だけだと同姓同名の別人がいる可能性)。
「何をどれだけ」の部分は、
預貯金なら金融機関名・支店名・種類・口座番号・名義を。
不動産なら登記簿謄本(登記事項証明書)に書かれてある「表題部」をすべて書き写す。
有価証券、宝石や貴金属、自動車や船、美術品、電話の加入権やゴルフ会員権も相続対象になる財産だ。
これらもその物が特定できる情報(固有の番号等)を付記しておくこと。
固有の番号等が振られていないものは写真を撮って添付するとよい。
なお、家電製品など日常使うものは財産とはみなされないらしい。
(※評価額が5万円以下と推定されるもの)
ただ、本文にこれらをズラズラ書くと枚数にキリがないし、間違いや抜けがあると書き直すのが大変なので、別紙として「財産目録」を作るのが効率的だ。
遺言書は遺言者の自筆でなければ無効になってしまうのだが、2019年からは、この財産目録に関しては自筆でなくてもよい(パソコン等で作成してもよい)と法改正された。
この改正によって、例えば通帳をコピーしたものや、登記簿謄本(登記事項証明書)をコピーしたものを添付してもよいことになったので、煩わしい場合はそうしてもよい。
受遺者が複数いる場合は、各々に相続(もしくは遺贈)する分を分けて財産目録を作るとよいだろう。
②の遺言執行者は必須ではないのだが、決めておくと遺言書による遺産分配がスムーズに行く。
遺言執行者は受遺者全員の代表者として、遺言書に従って例えば遺言者の銀行口座の解約や不動産の名義変更等を行える(※遺言執行者が決められている場合、受遺者が勝手に遺産に手を付けることができない)。
遺言執行者は誰でも構わないのだが、遺言者の身の回りに居て状況を常に把握している人。
おのずと遺言者と信頼関係にある人が必然的になるであろう。
また受遺者と遺言執行者が同一でも構わない。
実際、私は叔母の受遺者でもあり遺言執行者でもある。
遺言書
遺言者 真鯛一郎 昭和20年1月11日生 は、以下の通り遺言する。
1. 遺言者は遺言者の有する 別紙 財産目録① 記載のすべての財産を 真鯛花子 ○○県○○市○○町1丁目2番3-101号 昭和60年2月12日生 に相続させる。
2. 遺言者は遺言者の有する 別紙 財産目録② 記載のすべての財産を 黒鯛太郎 ○○県○○市○○町3丁目2番地の1 昭和50年3月13日生 に遺贈する。
3. 遺言者は、本遺言の遺言執行者として次の者を指定する。
住所 ○○県○○市○○町1丁目2番3-101号
氏名 真鯛花子
生年月日 昭和60年2月12日
令和3年5月10日
○○県○○市○○町1丁目2番3-101号
真鯛一郎 (印)
以上が基本的な遺言書の本文例である。
なお、死後の取り扱い、例えばどんな葬儀にしてほしいとか、遺骨をどうしてほしいかとか、そういう遺族への依頼的なものは「付言事項」として記述する。
「付言事項」として書かれてあるものは、法的拘束力はない(が故人の希望は叶えてあげるのが礼儀)ので自由文で記述して構わない。
本文とは別紙にするほうが、間違えた場合に書き直しする際も楽であろう。
※遺言書の枚数に制限はない。
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こうして出来上がった遺言書(財産目録も含む)を法務局に持っていき、保管の申請を行うわけだが、このときもまた別にルールがある。
※最初に貼ってあるリンク先の「06:自筆証書遺言書の様式について」を参照いただきたい。
まず、遺言書が複数に渡る場合(大概そうであろう)、
✔綴じてはいけない。
法務局での保管は、遺言書を原本とは別に画像データとして保管されるので1枚1枚スキャンするのであろう。
なので綴じてはいけなのだが、複数枚数ある場合、順番が狂うと困るので、
✔通し番号を書いておかねばならない。
例えば、財産目録含めて5枚あったとしたら、1枚目から順に、1/5、2/5、・・、5/5と入れていく。
これも遺言者の自筆でなければならないので注意すること。
そして、余白。
スキャンする関係なのだろうか、これがなぜか厳しかった。
保管制度を利用する場合の遺言書の用紙はA4と決められているのだが、その余白を指定された分、必ず取っておかねばならない。
実は叔母が自筆で書いてもらった遺言書の下部が、余白が10mm以上必要なのに実際はほぼ無かった。
叔母も体力的なものが弱ってるし、遺言書なんて何度も書きたくないだろうから、書き直させるのは酷に思ったので、事前に法務局へ行って相談してみた。
そしたら、新たなA4の紙の上に余白分ずらして遺言書を貼り付けてもらえればOKとのこと。
横はキッチリ揃えて、上部のはみ出た分を綺麗に切り取って全体をA4サイズにしておく。
こんな感じ。
この時に担当官の人にアドバイスもらったのが、
遺言書はA4の紙には書かず、B5の紙に余白なんて気にせず書く。
で、白紙のA4の紙の上にB5の遺言書を余白を測りながら貼り付ける。
あー、なるほどな。
これだと高齢者でなくとも書きやすいわな。
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申請書は最初に貼ってあるリンク先の「05:自筆証書遺言書保管制度で使用する申請書等」から「遺言書の保管申請書」をダウンロードする。
このPDFは書き込み可能なPDFになっていて、編集ツールを別段用意しなくてもブラウザや無料版の標準ビューアで書き込みが出来る(JavaScriptを有効にしないといけないかも)。
注意点は、丁目や番地で二桁以上の数字を入れる場合、1マス1桁で入れること。
例えば12番地だったら[12][番][地]じゃなくて[1][2][番][地]と入れる。
以下、私がわかりにくいと感じたところ(実際に担当官に確認した)。
2ページ目の1番上
「遺言者が所有する不動産の所在地を管轄・・・」は、
遺言者の現住所もしくは本籍地の管轄じゃない法務局へ預ける場合の話なので、通常はチェックを入れない。
※チェック必要な場合は担当官から指摘があると思う。
2ページ目の2番目
「申請に係る遺言書は、私が作成した民法・・・」は必ずチェック入れる。
3ページ目の一番上
番号は1から順に付けてゆく。
3ページ目の2番目
私のように受遺者で遺言執行者も兼ねる場合は両方にチェック。
4ページ目1番上の
「死亡時の通知を希望するため、本申請書記載の・・・」はプライバシーに関することで、
法務局では遺言者の死亡を知るすべが無いため、その事実を知るために自治体の戸籍の担当部局と申請者(遺言者)の情報を受け渡しすることに同意するか否かの選択。
通常はチェックを入れる部分かと思うのだが、私らはチェックを入れていない(=同意しない)。
これは受遺者・遺言執行者は私だし、法定(推定)相続人は母だけだし、ともに叔母の死亡を常に確認できる環境であるから通知の必要がないとの判断で、このページはすべて未記入とした。
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当日持っていく物として、
✔印鑑は遺言書に押したものと同じ印鑑(認印でOK(ただしシャチハタ不可))を持っていく。
遺言書を訂正する必要があった場合の訂正印として使えるため。
✔本人確認証は顔写真付きのもののみ有効なので注意すること。
(運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、パスポート等)
✔住民票の写しは「本籍地」が記載されているものが必要。
普通に住民票の写しを請求すると、本籍地が省略されたものが発行されるので、よく確認して必要内容の「本籍地」にチェックして請求する。
準備が出来たら、最初に貼ってあるリンク先の「10:予約について」から管轄の法務局で予約する。
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当日、枠は1件につき1時間取ってあるみたいだが、遺言書の確認に10分ほど、遺言書が受理されてから保管処理が終わるまで30~40分かかった。
不備があるとまた別の日に予約取ってやり直しみたいなことになるので、事前に十分確認の上、申請に行くこと。
私が実際やって感じたのは、いきなり本番で申請に行くのではなく、事前に出来上がった遺言書を持っていって、不明な点を相談という形で確認してもらうのが賢明だ。
法務局では、遺言書の中身の正当性までは見てくれないが、遺言書として要件を満たしているかどうかはチェックしてくれる。
実際私も事前に2回確認してもらって、本番当日は何も問題なくスムーズに手続きを終える事ができた。
保管処理も無事終われば保管証をもらえるのでそれで終了。
保管証に書かれてあるバーコードや保管番号が今後の手続きで重要なので、コピーしたものでも有効。
遺言者本人と受遺者全員が持っていてもよい。
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以上、ご参考になれば幸いです。
また、素人の執筆のため、間違い等ありましたらご指摘ください。
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