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宇多田ヒカル SCIENCE FICTION TOUR 2024 感想

ベストアルバム発売記念ツアーに参加してきた。

最終日9月1日の横浜公演。


結論から言うと、人生で最高のライブだった。

正直ここまでの規模でライブをやる人でここまで好きなアーティストって他にいないし、初めてそういう場に参加したという部分の補正はあるにせよ、それ抜きにしても非常にクオリティの高い素晴らしいライブだった。


ちょうど今年の正月に、一緒に行った友人と「今誰のライブが見たい?」という話で宇多田ヒカルと即答していたのだが、それから割とすぐにベストアルバムの発売とツアーの開催が発表され、抽選開始と同時に申し込み。


行ける範囲の公演全て申し込んだけど筆者自身は全部外れ。

友人が最終日の横浜公演を当ててくれていた。神。


抽選が始まったのが1月末で、当選発表が3月上旬。
ツアーが7月末の福岡からスタートして、9月1日が最終公演なので、余裕で半年以上待った。


会場であるKアリーナは昨年オープンしたばかりの新施設で、音楽イベントのために作られただけあって音がめちゃくちゃ良かった。
解像度が高く聴きやすいし、かつ低音の音圧もかなりあって迫力もある音だった。
またスタート前にスタンド席全般的に歩き回ってみたが、どの位置からでもステージが見やすく、後方の席でも思った以上に近く感じる。

会場内にはドリンクや軽食を売っているお店と広いイートインスペース、さらにバーも用意されており、早めに入場してもいい感じに暇が潰せる。

キャパ2万人とは思えないほど入場もスムーズで、内部もそれほど混み合っておらず歩きやすく、これまでのライブ体験の中でもトップクラスに快適に過ごすことができた。


セットリストと感想


time will tell
デビュー曲はAutomaticだが、最初にレコーディングした曲という事で一曲目はこれ。
オリジナル版とは違う今の声質でのボーカルが新鮮。
また全曲に渡って言える事だが、バンドによる生演奏もまた楽曲に新しい印象を与えていた。

Letters
これも子供の頃に聴いていた記憶が大きい。
確か携帯かなにかのCM曲になっていたと思う。
宇多田ヒカルの曲はタイアップもかなり多いので、そういう意味でも意識せずとも耳にしている曲が多い。

Wait & See ~リスク~
ファッション界隈ではMVでナイキのエアズームヘイヴンを履いている事で有名な曲。
ここで一気に会場のテンションが上がる。
ラストのハイトーンでのシャウトからの「キーが高すぎるなら下げてもいいよ」の歌詞も印象的だが、さすがに自身もそこまでのハイトーンはもう厳しい様子だった。
それでも今には今の良さがある。

In My Room
またファーストアルバムから。
これもゆったりとしたR&Bだが、子供ながらに好きだった曲。
こういう曲は大人になった今の方が渋みが出ていて合っていると思う。

光(Re-Recording)
プレイした事はないのだが、キングダムハーツのテーマ曲として有名。
後にフィーチャリングしたスクリレックスも、子供の頃にこの曲で宇多田ヒカルを知ってファンになったとか。
今回はベスト収録時に再録したバージョンで、元の曲とは打って変わってゆったりと聴けた。

For You
2作目のアルバムDistanceから。
この辺りの時代の曲はデビュー時のフレッシュさも残しつつ、よりポップミュージック感を増した感じで万人に聴きやすい印象がある。
当時の声色で聴き慣れているにも関わらず、今の声色で聴いても「これはこれで良いね」と思えるのが宇多田ヒカルの凄さだと感じた。

Distance(m-flo Remix)
ここでリミックスバージョン。
こちらは2000年にオフィシャルでリリースされたm-flo(と言うよりm-floでトラックを担当しているTaku Takahashi氏)によるリミックスで、m-flo初期のヒット曲come againの流れを汲む2Stepアレンジとなっている。
また会場はダンサブルな印象に。

travelling(Re-Recording)
ハウス調で踊れる曲のtravellingも大盛り上がり。
こちらはベスト盤収録の新バージョンだが、先行配信のAutomaticに続いて綾鷹のCMソングとして発売前から公開されていた。
実はこの曲も新バージョンのトラックはm-floのTaku Takahashi氏が手掛けており、最先端のクラブシーンを知る彼らしく、より今風のハウスに仕上がっている。
プライベートでも親交が深いのだと思うが、同じ人が手掛けた曲を連続で使うあたりトラックメイカーへのリスペクトが感じられるセットリストだと思った。
ベスト盤収録のRe-Recording各曲の中でも特にこのtravellingが、歳を重ねた現在の宇多田ヒカルの魅力を最大限に引き出していると思っている。

First Love
ここで少しクールダウンと称して、この曲の登場。
説明不要の不朽のバラードである。
この曲を高校生の頃に書いていたなんて、いまだに信じられない。
これも今だからこその深みを感じられる歌だった。
ちなみにNetflixのドラマで主演していた佐藤健からお祝いの花が届いていた。

Beautiful World
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序のエンディングとして2007年にリリースされた曲。
その後2009年の破では活動休止中に関わらずリミックス版をリリース、さらに2012年のQでも活動休止中だが新曲「桜流し」をリリースするなど、宇多田ヒカル自身が熱心なエヴァファンだからこそなし得たタイアップである。
この曲はさらに2021年に完結編のシン・エヴァンゲリオン劇場版の際にも新たにレコーディングされているため、頻繁に歌われている楽曲だけあって安定のクオリティであった。
2007年に「エヴァのエンディングが宇多田ヒカルなのヤバすぎ!!!」と興奮していた高校生の頃の自分に、「17年後にもっとヤバいライブ見れるぞ」と言ってやりたかった。
あと死ぬほど聴いた曲なので、間奏のシンセが少しアレンジしてあった事が新鮮で感動した。

COLORS
「青い空が見えたなら青い傘広げて」の情景が好きな曲。
これも車のCM曲でかなり耳馴染みのある曲である。
サビ周辺はかなりの高音にも関わらず、上手く歌い上げる歌唱力の高さに脱帽した。

ぼくはくま
NHKのみんなの歌でも採用された曲。
ここでまたクールダウン。
シンプルな楽曲ゆえに、演奏のクオリティが際立っていた。

Keep Tryin'
この辺りの時代の「ポップミュージックに寄り添いながらも、芯はブレていない」感じがとても好き。
ゆったり揺れながら聴くのが心地よかった。

Kiss & Cry
大友克洋のキャラクターによるカップヌードルCMでのSFアニメ「FREEDOM」が印象に残るこの曲。
これもAutomaticなどと同様ヒップホップ調のビートで好きな曲。
歌詞中にもちゃんと「今日は日清カップヌードル」と入っている。
歌い出しが「不良も優等生も先生も」なのだが、「不良」の部分を違う歌詞に替えてた気がするけど気のせいか?
結局何と言ってたのか聞き取れなかった。

誰かの願いが叶うころ
ベスト盤にも収録されていないし、正直この曲やると思わなかったナンバー1。
映画「キャシャーン」の主題歌だが、この監督の紀里谷和明氏は宇多田ヒカルの最初の結婚相手である。
ちなみに2001~2006年頃のMVの監督も同氏が務めている。
しっとりとしたバラードだが、後半に向かうにつれ音数が増していく様が、生演奏でより際立っていてかなり良かった。


ここで一旦インターバル。衣装替えと休憩を挟む。
後半の衣装はイッセイミヤケが手掛けた。


BADモード
後半1曲目はコロナ禍でリリースされたBADモードから。
こちらも後半の盛り上げにふさわしい楽曲で、近年のリリース曲であるためある意味聴き慣れた、安心感のある印象だった。

あなた
アルバム「初恋」からの一曲。
今回は初恋からの選曲は少なかったが、その中でもこちらも映画主題歌ということもあり、耳馴染みのある曲。

花束を君に
こちらはNHK朝ドラの主題歌として有名な曲。
歌い出しの「普段からメイクしない君が薄化粧した朝」というのは、母 藤圭子氏が亡くなった際の死に化粧のことを暗喩しているという事を頭に置いて聴くと、見え方が180度変わる曲でもある。
レクイエムでありながら、ストレートにそう感じさせない曲作りに感銘を受ける。

何色でもない花
これもかなり最近のドラマ主題歌。
シングルとしては最新の曲。
後半戦は主に活動休止から復帰して以降の、より音楽性を増した楽曲が中心になっており、聴き応えがあった。

One Last Kiss
シンエヴァの主題歌。
こちらはロンドン出身のプロデューサーA.G.Cookとの合作で、歌詞もさることながら緻密な音の組合せが心地良い。
この曲もコロナ禍でほぼデータのやりとりとWebミーティングのみで作ったらしい。
ちなみにMVは主に息子さんがロンドンの自宅などでiPhoneで撮影したデータを、日本でエヴァシリーズ監督の庵野秀明氏が構成して作られている。
これも生で聴けて特に嬉しかった曲のひとつ。

君に夢中
本編最後の曲。
度々MCでもファンとともに「お互い色々あった25年だったね」という部分を強調しており、この選曲で「君」というのは我々ファンの事を指してくれていたのだと感じた。
Kアリーナの音質の良さも相まって、最後のキック1発の音圧が物凄かったのが印象的。


そしてアンコール。
ここでまた衣装を変え、最後はキャミソールにワークパンツのようなかなりラフな格好での登場。


Electricity
アンコール一曲目はベスト盤で新曲を入れてくるという予想外のサプライズだったElectricity
この曲は今年フジロックにも出演したFloating Pointsのプロデュースとなっており、テクノ感のあるダンスナンバーでかなり好き。
ダンサーとサックス奏者も登場し、かなり盛り上がった。

Stay Gold
ここに来てまさかの最終公演のみのサプライズ。
イントロのピアノから鳥肌物だった。
「今回のツアーで初めて歌うからどうかな」との事だったが、素晴らしかったです。
ありがとうございます。

Automatic
そして最後はデビュー曲Automatic
小学生の頃に親の車で掛かっていて初めて良いなと思った曲をこんな形で聴く事ができて、感極まってしまった。
ステージ暗転からの、MVで座っていたのと同じ形のソファに座った状態で曲がスタートという演出も泣けた。
またバンドによる生演奏が素晴らしすぎて、25年前の曲なのにまた新たな発見があった。
「最後の曲(それも超有名なデビュー曲)が一番良かった」と言うと少しニワカ感があるかもしれないが、本当に最後のAutomaticが圧倒的に一番良かった。

以上全24曲、時間にして約2時間半というボリュームのライブだったが、本当に後にも先にもこれを越えるライブ体験はないかもしれない。
初レコーディング曲にはじまり、デビュー曲に終わるというセットリストの組み方もファンの心理を分かってるなという感じがして、とても良かった。
また、最後の最後まで深々と頭を下げ続けていたのがとても印象深かった。

会場となったKアリーナの設備や音響も素晴らしく、「もっといろんなアーティストがここでライブやってくれ」と思った。

12月にこの公演の映像を収めたブルーレイが出るので、絶対買う。
これまで基本的にライブ音源という物に興味がなかったのだが、今回のライブは本当にバンドの演奏も素晴らしいの一言で、「ここでしか聴けない音」という印象が強かった。
それを改めてもう一度聴きたいので、絶対に買う。


最後に、一生記憶に残る素晴らしいライブをありがとうございました。
これからも変わらずに応援し続けます。

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