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第18回 コックリさん、あと野菜ジュース【朽羊歯ゾーンのWoundTube】

高校の頃、部室で試しにコックリさんをやった。

言い出した男子が最初に聞いたのは、「あの(部室にあった)コップの水はこれからどうなりますか」だった。

全員、どんな答えが出るかドキドキしながら待っていた。変な心理状態だった。何が起こってもおかしくないと身構え、期待していた。

コックリさんが出した答えは「じょうはつ」だった。

「そりゃそうか……」と、この場にいる中で唯一冷静だったコックリさんに、逆に畏敬の念が集まった。

現実離れした存在が、理科のテストに答えるような常識的な回答をしたのが妙におかしくて、でもそれは本当は何もおかしくないのだった(コックリさんが長年この世にいる狐の霊や神様だとしたら、人間より物事を知っていて理性的な可能性が高い。逆に参加者の誰かや集合的無意識だとしたら、常識的な回答をするのは何も変ではない)。


その後、やってきた先生に、「部室で怪しげなことをやるのはやめてくれ」と軽く叱られた。

だから私たちはコックリさんをやめ、言い出しっぺの男子が「10円使ってくる」と外に出た。降霊術に使った10円は、使ってしまわないとまずいらしい。

彼は校内の自動販売機で飲み物を買ってきた。そして、「あの自販機の野菜ジュースは信じられないくらいまずい」と言い出した。

そのとき買ってきたのが野菜ジュースだったかどうかは定かではない。「10円使ってくる」と言ったとき、誰かが「じゃああの野菜ジュースにしろよ」などと冗談を言ったのかもしれない。とにかく、彼は自販機の野菜ジュースの驚くべきまずさについて語った。

野菜ジュースが売っていることも知らなかったし、いつ誰が飲むんだと思ったが、そう言われると気になる。後日、私はその自販機で、件の野菜ジュースを購入した。

問題なく美味しかった。家で飲みつけているからかもしれない。後で聞いたところによると、彼は普段家で甘いものばかり飲んでいるらしい。確かに、慣れていない人にとって、トマトベースにセロリ風味は衝撃的な味だろう。

ところで、私は文字があれば何でも読む癖がある。飲みながら、パッケージに目を落とし、書いてある文字を全て読んだ。

賞味期限がめちゃめちゃ切れていた。

いつ誰が飲むんだとは思ったけどさあ!

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