第13回 セーヴェルナヤゼムリヤもいいですが、ノヴァヤゼムリヤもいいですよね!【朽羊歯ゾーンのWoundTube】
デイリーポータルZ編集長の林さんが、何かで書いていた。
「記事のタイトルは、誰にでもわかる言葉を使ってつけた方がいい。『セーヴェルナヤゼムリヤもいいですが、ノヴァヤゼムリヤもいいですよね!』じゃクリックしてもらえない」
何に書いてあったかも曖昧だし、文章のニュアンスもこの通りではなかったかもしれないが、『』の中だけは絶対に正しいと自信を持って言える。嘘だ。「ゼムリヤ」か「ゼムリャ」かは自信がない。でもそのくらいだ。
文中に書いてあったのか後で調べたのかは忘れたが、「セーヴェルナヤゼムリヤ」はロシアの島(というか島々の総称)らしく、とても悔しかった。私は語感のいい地名が大好きなのだ。先に見つけたかった。「ノヴァヤゼムリヤ」も近くにあるロシアの島々だそうだ。
覚えようと思って何度も思い返し、「セーヴェルナヤゼムリヤもいいですが、ノヴァヤゼムリヤもいいですよね!」というフレーズを丸暗記したのである。
ちなみに、「ゼムリヤ」か「ゼムリャ」か自信がないというのは、「ゼムリヤ」で覚えたのにネットで改めて調べたらゼムリャ派が大多数だったからだ。間違えて覚えた可能性も捨てきれない。
私は最初、「セーヴェルナヤゼムリヤもいいですが、ノヴァヤゼムリヤもいいですよね!」がいけない理由がわからなかった。そんなに語呂が良くてわけのわからない言葉を出されたらクリックするに決まっているだろうと思った。
しかし、何年もかけて立派なインターネッターになった私にはわかる。ネットには、自分のわからない言葉を解説しているコンテンツより、その言葉を知っている人にだけ理解できるコンテンツの方が圧倒的に多い。元ネタを網羅するのはとても無理なので、自分の知らないものはスルーするようになる。「セーヴェルナヤゼムリヤもいいですが、ノヴァヤゼムリヤもいいですよね!」と言われても、自分の知らない漫画のキャラの話をしていると思って、通り過ぎてしまうだろう。
これを回避するには、「タイトルに使われている言葉の内容をちゃんと説明するコンテンツです」というイメージを作るしかない。あるいは、逆に意味不明なことを売りとして、そのイメージを共有するか。とにかく、「タイトルの言葉を知らなかったら楽しめないけど知っていたら楽しめる」というタイプのコンテンツではないと表明する必要がある。
個人的には、「ボボボーボ・ボーボボ」を初めて読んだときを思い出す。意味が分からなくて1巻でやめてしまっていたのだ。しかし、「あれは意味がわからない展開がひたすら続く漫画だ」と聞かされてからは、もう一度読んでみようかという気になっている(まだ読んでいない)。
おそらく、「意味が分からないけれど私の推測力や元ネタへの知識が足りないだけかもしれない」という気持ちがあると、作品は遠ざけられてしまうのだ。読むために勉強して来ようなんて、学校の課題でもない限り思わない。「推測や知識が必要ない」と明確に示す必要がある。
というわけで、自戒にしようと思います。語感で興味を持ってくれるだろうという語感フェチの気持ちや、自分の知識が相手には通じないだろうと判断して一歩引くのがさみしいと思う気持ちが先行して、意味不明なタイトルをつけがちなので。
あ、書くの忘れてたけど、最初に出てきたデイリーポータルZというのはインターネットのよみものサイトです。高3~大1くらいにかけてドハマりした。
当時通っていた大学の教養科目のロシア語で「ノヴァヤ」が出てきて、「ノヴァヤゼムリヤだ!!!!!」と大興奮したことだけ最後に記しておきます。
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