劣情

顔すらもわからない中年男性群の人となりが、十数時間かけて立ち上がってくる。言語化しやすい部分でいえば、Aは小太りでガタイが良く、デリカシーが無いと評価されているだろうし、Bは畑山隆則みたいな声と間をしていて、いかなるグループでもリーダー格になるはず。Cはコミュニケーション手段として下劣な冗談か威圧しか使えない。Dは小心者で脳みそに関する瑣末なプライドを捨てられていないらしい。

10時間程A,B,C,Dの会話を聞いていた。それぞれの声と呼称の関係は当然固定されている。
注意深く会話を聞き直し、CとDの声と呼称の関係が捻れている事に気づく。それ以降十数分間、強烈な吐き気を催す。

人の脳は、言葉に負けている。言葉が何かを表したその瞬間に、我々の脳みそは敗北。コテンパン。呼び名が捻れた程度でこの吐き気。言葉の意味分節作用への完全敗北。

多様な女の死亡記事が次々に目の前を駆けていく。僕はそこに視線を固定しなければいけない立場であるらしい。そして瞬間瞬間エロと殺しに単純に引っかかる。敗北。脳は喜んでいる。

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