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舞台『口笛』の感想

感想というより頭の整理。ネタバレあり。


1.脚本

全体的な雰囲気として、私は宅間さんの作品をタクフェスと明治座、THE BAD LOSERSしか見たことないから、そことの比較にはなってしまうんだけど、宅間さんらしい人情の濃い作品だけど、内容が明るいものではないから終わりもタクフェスのダンスあり日替わりありの祭りって感じではない。
でも、いつものタクフェスの座組とお客さんの和気あいあいとした雰囲気が得意ではないひとには、これも有りだなと思った。
もちろん前説やアフトでの和気あいあいとしたお客さんとの絡みはあるけども、比較的少なめではある。

ストーリーは、たっちゃんと言いたくなるような愛され愛すべきたっちゃんが主人公であることは間違いないんだけど、しおりとしょうこ二人の持つ意味がだいぶ強くて、私はこの対照的な二人を見せるための主人公というか、二人を見せるための作品でもあるなと思った。
数ある宅間さんの脚本の中でプロデューサーさんや大薮くんがこの作品を今上演したかった理由はまだ分からないけど、そこにあるのかもしれないと思った。


2.この作品を今、上演する意味

強くひとりで抱え込みすぎてしまった問題が、いろんな人と出逢って歯車が噛み合ってしまったが故に、いろいろなことが動き出し、それが何もかも遅くて間にあってないっていう作品だなと思った。

アフトで大薮くんが言ってたこの作品の ” 美しさ ” っていうのは、
 しおりがもう少し早くたっちゃんと出逢い結婚していれば、
 しょうこが借金なんかする前にたっちゃんや地元の仲間に弱音を吐いていれば、、、
こんなことは起こらなかったのに、どちらも遅くてそして偶然にもタイミングが噛み合ってしまったが故に起こったことが、「時」「人間模様」が持つ ” 儚さ ” が ” 美しさ ” ってことなのかなと思った。

だから、今これを上演する意味は、
昔より固定概念にとらわれず個性や多様性を大切にされて、ひとりで生きていくことが容易になった時代背景と、
ひとりで抱え込みすぎてしまったことをきっかけに起こる「時」と「人間模様」が持つ ” 美しさ ” を表現したかったのかなと思った。


3.役

もちろん、起こったことは嫌だし結末は悲しいけど、
しおりが素晴らしい芝居で、同じ女性としてウザすぎて途中見るとしんどくなったところに、ラストしょうこの怒りや耐えてた感情が曝け出された瞬間めちゃくちゃスッキリした。そこで、
 しおりは弱いからこそ、
 しょうこは強いからこそ、
こうなっちゃったんだなっていう、対照的な二人が明確化されていてよかった。
しょうこは強いからこそ東京に出たし、強いからこそ地元のみんなを頼らなかったけど、背負って我慢して自分でどうにかする中でこうなってしまって、でもそれは彼女の意地と頼る人がいない環境が生んだだけで彼女は悪くないし、彼女もここまでになるとは思わなかったわけで悪ではないっていうのが良かった。

しおり役の花澤さんの芝居も良くて、あのウザさが良いフリになってたし、襲われてる時あんなにも人形みたいなるんだなって感じが生々しくて、どうしても観ていて嫌な気分にはなるけども作品としてシーンとしてよかったんだと思う。

しょうこ役の竹内さんはとくに良かった、一番良かった、全部よかったからもっと売れるべき。俳優として不利にもなるあのハスキーボイスすら正解にしてたかもしれない。
500万を300万と言ったのは500は本当として、たっちゃんへの見栄か、出せそうな額を言って全額出させるためか、私は後者だと思ったな。

他の役のことも書きたかったけど体力無くなったので一旦次


4.演出

初演出とは思えないクオリティだと思った。長くお世話になってる宅間さんの脚本っていうやりやすさもあるとは思うけど、そこまで違和感なく観れた。
宅間さんの演出の魅力でもある脚本+αの笑いが、多世代にもウケる部分は残されて、同世代にしかウケないところがカットしたか元からなかったのか分からないけど、個人的には塩梅が見やすかった。

ただ、生々しさを大事にするなら、ラストの喧嘩シーンはもっとリアルに描いた方が個人的には良いのかなと思った。
テーブルの天板で殴ったり、女性の首絞めたりなかなかの迫力ある事やってるのに、しかもそのあと子供が出てきてその状況の落差を付けれるところなのに、
演者がスローモーションに動いて、バックで音楽流れて、壁にあえて影を写すと、演出盛りだくさんで一気に覚めちゃうというか、演出やってんな感があって現実に戻っちゃったから、あのシーンはなぜこう演出したのか気になったな。
あと、これは私の理解力の問題だけど指切りげんまんのシーンが何を意図してたのか分からなかった。

最初は大薮くんの演出ってどうなるんだろうと思ったけど、
アフトを聞いてなんとなくわかった気がする。
大薮くんの熱さから来る行動力と仲間から愛される愛嬌、それを叶える交友関係が大薮くんを演出として成り立たせてる気がした。
なんかあいつ頑張ってるからついていくか的な演出(家)って感じだったら、大薮くんらしいなと思った。
そういえば陸上部で部長?キャプテン?だった気がするから、その時もこんな感じだったのかもしれない。 完