教育学の課題と展望

教育学では研究テーマを設定するときその「問いの立て方」を問題とする。その理由は、研究する者の立場や問題意識を根本的に問うからであり、と同時にまたその価値の前提を問い直すからである。この問い直し作業が永続する根源的な問いへ導くのだが、それが「一人合点」の抽象論に陥らないように図るためには調査法を習得することが課題となる。調査では教育事象を表す具体物や要因関係を扱うので心理学や臨床心理学と一定の共通基盤に立つことができる。

教育意図は目的や目標のレベルだけでなく、教育の手段(計画・内容・方法・評価)を選ぶときにその本質が現れる。意図とは、目的達成に向けていかなる手段や方法を選ぶかその行動傾向を言う。教育主体の側の思いや願いといった情緒的な思惑とは異なる。教育論争の中では総論賛成・各論反対の争点が生ずるが、それは目標が計画・内容・方法のレベルで具体化されていないからである。

複雑な教育の営みを調べるときには、教育活動の実際や「見えない」側面までつぶさに観察するため、フィールドにおいて独自の方法を工夫することが必要。

田中統治・向田久美子・佐藤仁美「課題と展望」心理と教育へのいざない

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