「色彩」
映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』
二次創作連作
色彩
きつかけは店にあらはる夏の汝
屋上は夢の明るさ夏はじめ
カーテンのうしろのさわぐ朝曇
踏切の向かう夏野の揺れてをり
電柱を縫うやうに駆け夏の雲
落書きの文字にやさしさ夏休
サイダーの泡沫ゆるやかに消ゆる
そろそろと香水首元にすこし
葉桜や話すたび髪跳ねてゐる
口隠すための団扇や目の合ひて
逢ふときのこゑのしづけさ夏灯
夕立やおもちやのやうな部屋に寝る
はしやぐやうなる噴水の上がりけり
引越しの最後詩集を積みて虹
嗚咽抱へて短夜を帰りけり
胸元に本手繰り寄せ青葉木菟
レコードの色彩ゆたか氷水
夏帯を締めゆふぐれにまぎれゆく
空仰ぐ顔を見てゐる祭かな
くちびるに言の葉の波月涼し