20220906#林日記 「ギャル」
電車、向かい側の席に小松菜奈似のギャルと、淡い色の花束を持ったおばあちゃまが座っている。
そのコントラストの美しさに視線を奪われた私はまるで…まるでぇ……比喩が一つも浮かびませんでしたので、続きを
VUITTONのダミエの小さなウエストポーチを斜めにかけ、気だるそうに携帯をいじっている。爪はもちろん2mくらいある。肌は小麦色に焼け、ゴールドのアクセサリーを身につけ、しかし髪は黒く生まれたままの色を保ち、艶のある黒髪が光っている。200回ほど脱色しましたか?みたいなあまりにも浅い色のデニムに、ピッタリとした真っ白のキャミソール。意識をしっかりと保たないと対面した時つい胸元を見てしまうトラップ。
私は願わずにはいられない。
気だるげに操作される携帯になり、その寿命尽きる時までずっとそばにいたい。画面バリバリになっても惰性で使い続けられたい。
貰ったのか買ったのか分からん多分気に入りのウエストポーチになってギャルが愛煙するタバコをいつも大切に収納してあげたい。
香水とか握ってインスタに自慢げに #nail で投稿され、呆気なく2週間後とかに剥がされたい。
「飽きたな〜この爪。」とか思われたい。
シャンプー何使ってる?て聞いて「え、適当」とか言われたい。そうなんや!いい匂いやな!て言ってその返事全部無視されたい。
つい胸元に視線をやってしまって「は、キモ、てかウザ」と言われたい。
そして、ここまで抱いた全ての願望を何ひとつとして叶えることなく、ギャルにはこちらに一瞥もくれず前を向いて歩いて行って欲しい、と。
隣に座ったおばあちゃまが去り、新しいおばあちゃまがまた隣に座る。新しいおばあちゃまはくしゃくしゃのビニール袋いっぱいに何故か空のタッパーを詰めている。何故?どういう経緯を経てるタッパーたち?
しかしそのタッパーがまた、ギャルをより光らせる。
生活感とギャル。月と太陽。ロミオとジュリエット。
嗚呼ギャル。あなたはどうしてギャルなの?
こんなにも眩い光を放つギャル、数年に一度出会うか出会わないか。
私が中学の時1番仲良かった友達は今や立派なギャルになった。高校が離れてしばらく見ないうちにとんでもないレベルのギャルになった。そんな友人に最初は戸惑いを隠せなかったが、今となっては遠からず近すぎない距離で微笑ましく見守っている。
クラブもTinderもZenlyもSnapchatも全部その友人を通して知った。
爆音のEDMの中では円周率を唱えてやり過ごすことしかできないのでクラブの楽しみ方がまだ分からないし、いつなら会える?と聞かれても…に、2年後…魅せろ!修行の成果!みたいなシャボンディ諸島にいるルフィみたいな返事しか出来ないのでTinderも出来ないし、居場所を特定され「今近くにいるんだけど来る?」みたいな突然の誘いが来ても翌朝に「うあああ!ごめん寝てたぁ(>_<)」って嘘つくことしか出来ないのでZenlyもしないし、そもそも使い方がわからないのでSnapchatもダウンロードしてすぐ使わなくなったけど、その友人はその全てを意のままに使いこなしていた。ギャルはパワーがすごくて好きだ
大学を4回ほど留年した彼女は今やきちんと就職し、バリバリ働いているらしい。時折更新されるInstagramのストーリーでは、会社のデスクに広げたお手製のお弁当の写真を披露してくれる。
そのお弁当箱は、中学の時から変わらないパワーパフガールズのわけわからんサイズの弁当箱で、そのストーリーを見るたびにぐっと目頭が熱くなる。どんなにギャルになっても、変わらないものがある。
決して消えない思い出。
珍しい名前だから担任の先生によくわからない抑揚で名前を呼ばれ続けたあの頃の友人も。
好きというからアルバム全部聴き込んで「Perfumeいいよね!私も大好き!」と言った私に「え!普通!適当に言った!」と言い放ったあの日の友人も。
スイーツパラダイスで調子に乗りありえない量のケーキとパスタを平らげキャパオーバーで中腰で亀の速度でしか歩けなくなったあの日の友人も。
無理やり誘ったテニス部に入ってくれて初めての試合、弱すぎて親が恥ずかしくなり試合の途中で帰ってしまったあの日の友人も。
決して消えない思い出。
私がこうして思い出すたびに、思い出は濃く色付いて、また今の彼女を光らせるのだ
そうした想いに馳せている最中、数年に一度のギャルは電車を降りて行った。
バイバイ、ギャル。
バイバイ、こんな駄文を最後まで読んだみんな。
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