ボブ・ディラン&ザ・バンド Tears of Rage

 この歌は父親の立場から娘に語りかけている形式になっている。
 曲の冒頭の「独立記念日にわたしたちはその腕の中にあなたを抱えた」という歌詞は、7月4日に生まれたわが娘を両親が抱いている姿を描写しているとみられる。daughterという単語には「娘」という意味の他にも「所産」という意味がある。以下に続く歌詞の流れから考えると、冒頭の歌詞は「娘の誕生」を「アメリカの建国」になぞらえて表現したものと受け取られる。歌詞の展開は建国の「父」がその「娘」である「アメリカ」の行状を嘆くものとなっている。そして、父は問う「なぜつねに盗人であらねばならないのか」と。これは、アメリカという国が移民によって先住民から簒奪された土地の上に成立している事情を言っているのだろう。高邁な理想のもとに生まれた国ではあっても、今の国の有様は建国のいきさつをとても正当化できるものではない。そのわが子の姿を見て、怒りの涙、嘆きの涙が溢れてくる。そして、娘に「建国の理想に帰れ、それがせめてもの贖罪だ」と訴えている。

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