見出し画像

「一瞬」の長さ

お休みの日は、雨のあいまに近所の公園を散歩するのが楽しみです。

駅前スーパーの公園に咲いている大きなヤマユリの花に、クロアゲハがやってきました。

日当たりのいい方にもたくさんの花が咲いているのに、木陰のヤマユリの花に来て、日当たりのいい方には行こうとしませんでした。

 

クロアゲハは、日本では本州以南によく見かける蝶です。

幼虫は、柚子やサンショウなどの、ミカン科の植物の葉を食します。

山地や都市郊外の、やや日陰になる場所を好んで飛んでいます。

前翅長45-70㎜と、普通のアゲハチョウよりも大きくて目立ちますが、

人目を惹くのは、このチョウの飛び方です。

大きな翅をひろげて、ふわりふわりととても優雅に飛びます。

木漏れ日のちらちらする山道を、なめらかな曲線を描いて飛んで行く姿は、

とても気品があって、目が離せません。

 

チョウは種類によって飛び方がずいぶん違います。


たとえば、モンシロチョウはわりとバタバタした飛び方です。

画像1

いつも野の花の周辺にいて、あまり高くは飛びません。


アオスジアゲハはスイスイと空気を切るように、とても高速に飛びます。

画像2

3階建てのビルくらいの高いところを飛んでいることが多いのは、

大きなクスノキの葉を食して育つからだと思います。


オレンジ色の翅がおしゃれなツマグロヒョウモンは、ヒラヒラとした飛び方で、

画像3

いつも花壇のお花の周りを飛んでいます。

スミレやパンジー・ビオラの葉を食して育つので、花壇の周りからあまり遠くへは行かないのです。


小さなシジミチョウは、地面の近くをチラチラと飛んでいることが多いです。

画像4

幼虫が「カタバミ」という地面に這うように生えている野草を食すので、いつも低い位置にいます。

 

・・・と、このように、

どこを飛ぶかは、幼虫時代の食草が影響していることがよくわかりますが、

なぜ種類によって飛び方が違うのか、なぜこのように飛び方が違うのかは謎です。

 

推測ですが、蝶の身体の大きさによって違っている気がします。

小さなシジミチョウが「チラチラ」と飛び、

少し大きなモンシロチョウが「バタバタ」、

中型のツマグロヒョウモンは「ヒラヒラ」

もっと大きな蝶になると「スイスイ」「ふわふわ」。

これはあくまでも、人間から見た感覚的なものです。

 

人間から見ると何かチラチラ飛んでいるように見えるシジミチョウも、

蟻のような小さな生き物から見たら大きくて、

フワリフワリと飛んでいるように見えるかもしれません。

 

全てのチョウにとって羽ばたきは、一瞬ですが、身体の大きさによって、その長さは違っています。

それは、それぞれの生き物に固有の時間の感覚と、

深い関係があるのではないか、という説があります。

小さなシジミチョウも、自分では「フワリフワリ」ととんでいるつもりで、

人間の目から見ると一瞬に見える羽ばたきも、とても長く感じているのかもしれません。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?