ゆかりある日記 その16

キルアが好き
HUNTER×HUNTERのアニメを観ているゆかりさんに、二人でいることの例えとして僕がキルアだったらゆかりさんはゴンだね、と言うと、アニメを見ていたはずのゆかりさんがこっちを向いた。
「わたしが!!キルアだ!!!!」
と画面の中のキルアとゴンの声よりも大きな声で宣言していた。
「だって音を殺して歩くの癖だし!」
とキルアプレゼンをされた。そんなにキルアになりたかったのか。なぜだろう。憧れているのかもしれない。
心臓を取り出されないように気を付けなければ。


親分ゆかりさん
ゆかりさんが電車の時間と、道を教えてくれたので気まぐれで親分!と呼んでみたら気分を良くして「言うことを聞くのだよ」と親分というより孫にあった祖母みたいな言い方をしていた。人が下手に出るとゆかりさんはテンションが上がるらしい。上に立ちたいのか。絵に描いたようなえっへん顔だった。


ミスドゆかり
ゆかりさんはミスドのある街にしか街と認めていないくらいミスタードーナツを愛している。ミスドか中華料理屋がある街にしか住みたくないと一緒に暮らすときに言っていた。しかし二人でミスドに入ることは少なく、今日はしまおまほさんの展示と植本一子さんのトークイベントに行きたまたま聞き終わった帰りにミスタードーナツに入った。
店内は少し狭く、時間帯のせいなのか開いている席はない。席もぎゅうぎゅうに電車だったら少し混んでいて嫌だなあと思うくらいの密度だった。
食べ終わり混んでいるせいもありすぐに店をでてゆかりさんに今回のミスドを採点してもらうと『15点』だった。100点満点中15点。辛辣な点数だ。先日のキングオブコントも65点と言ったり、ゆかりさんの得点感覚はお笑い芸人の賞レースには不向きだ。今日行ったミスドはゆかりさんの点数のせいで決勝には上がれないだろう。そもそも予選はしていないけれど。
どんなミスドが評価高いのかを聞くと、「自分で取るタイプの店舗は評価しない」と明確な基準があるようだった。「あとは雰囲気ですね」と評論家になったのか僕に対して敬語で教えてくれた。100点のミスドがあるらしく、今度はそこへ行ってみたい。


あこがれ
録画したサスペンスをゆかりさんが見ていると、タイヤマルゼンのCMソングが流れてきたので、僕も一人で何人も歌っているかのような声でCMに合わせて歌う。ゆかりさんはそれを見て、CMが終わると無言で早送りをする。タイーヤマルゼン、ホイルマルゼン!と一人だけど何人も歌っているような声で歌いたい。早送りをしているゆかりさんに、何人も歌っているように聞こえた?と尋ねてみたが、めんどくさそうに「うん」とだけの返事だった。
満足をしてスマホを見ていると、フォローされたとの通知が来ていた。
前々から僕は街を歩いて、すれ違った人の言葉や聞こえた言葉を拾って、それだけをつぶやくアカウント『落ちた声を拾う人』をやっているのだけれど、誰でも簡単にできるから真似してほしいなあと常々思っていて、今日フォローしてくれた人がそんなアカウントだったので、サスペンスを見ているゆかりさんに、ホイルマルゼン!と同じような声で、ついに来たよ!!と教えると、迷惑そうに一瞬目を細めてからよかったねえとこっちを一度も見ずに言った。

#日記

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