ゆきさんと今

この先もしタイムマシンが使えるのならば、今に絶対戻りたいと思う。だから全部覚えていたい。忘れたくない。
ゆきさんが見えない敵と一生懸命戦って遊んでいる姿や、繋いだ手の小ささ。ボイスメッセージで「暗くなるから気をつけて帰ってきてね」と送られてきた声。一緒にミニスーファミをやっているときの表情。
仮面ライダーが大好きで図鑑が読みたくてひらがなを一緒に覚えていること。僕が仮面ライダーに詳しくないから一生懸命教えてくれること。仮面ライダーのカードが大好きで、きっといつかは興味がなくなるのもわかっている。僕もそうだった。いつまでも好きなわけではない。小さな手はすぐに僕の手と同じくらいになって繋ぐこともなくなる。
少し前まではテーブルと同じ高さだったのに、身長はいつの間にかテーブルを追い越している。すごい速さ。
でも僕は忘れない。
ディズニーランドの帰りにまだ遊びたくて泣いたこと。暗いところが苦手なところ。ゴミが落ちていたら、ぶつぶつ言いながら拾い、トイレの電気がつけっぱなしだと、誰がつけてるの！と怒る真面目さや、少しでも悲しい顔をすると大丈夫だよと慰めてくれる優しさ。ゆきさんの「大丈夫？」「これをこうした方が良いんじゃない？」と言ってくれた時の声。全部忘れたくない。
もっともっと楽しいことしたい。もっともっと楽しいことをする。ゆきさんが自分で好きなことを見つけられたら、全力で応援したいし見つけるためにはなんでもしたい。
こんなに楽しいことはない。ゆきさんの寝顔を見つめる。子どもが特別好きとかはなかったはずなのに。
これからばかり考えてしまう。未来はどうなるのだろう。どうなっていくのだろう。僕ができることは全部やる。