ゆかりある日記 その14

洗濯に屈しない

明日は雨らしいとゆかりさんに伝えたら、無表情だった。後にLINEで洗濯への圧力には屈しなかったからな、と来た。
僕は洗濯が苦手で、できるけれど、これでよいのかと思いつついつもスイッチを押す。そして時間が経つと震えだす洗濯機が怖い。ガタガタ言って誰かに迷惑をかけていないのか不安になる。洗濯が終わって干す時は、そんなに怖くはないが干した後は怖い。いつまでも外にあると風で飛ばされてしまうのではないかという不安。一度、マットレスが飛んでしまったような風が吹く場所で、洗濯物なんて一瞬で飛んでしまうだろう。ハンガーに洗濯バサミをつけても飛んでしまう気がして、風の音が鳴ったらすぐに窓の外を見てしまう。
それを知っているゆかりさんは今日言った、明日雨らしいよという発言を、明日雨だから今日洗濯してね!という圧力に感じたらしい。なので洗濯への圧力には屈しないというメッセージが来て思わず笑ってしまいそうになった。そんなつもりはなかったけれど、そんな風な意味にとれるなあと思うと面白かった。
返事ではそんな意味はないと謝罪をした。

洗濯に屈しない その2
ゆかりさんに洗濯への圧力の冤罪をかけられたので、冤罪をはらすべく、帰宅してお風呂に入って出てすぐに洗濯の準備を始める。ネットに服を詰めて洗濯機の中に入れておく。あとは洗剤を入れて明日スイッチを入れれば洗濯機は動き出せる状態。
ゆかりさんが帰宅してきて、洗濯機を覗く。パンパンじゃないか!パンパンと何度とパンパンと言う。
そしてネットから洋服を出す。
「洗濯はね、いかに洋服を選ぶかなんだよ、パンパンだと汚れが落ちない」
再び洗濯機にだいぶ量の減って洗濯の準備ができた。もしかしたら洗濯と選択をかけていたのかもしれない。

カードキャプター
結婚してから初めて知ったのだけれど、ゆかりさんはカードキャプターさくらが大好きだ。知り合って13年経っても初めて知ることは多い。さくらちゃん、さくらちゃんと姪っ子のことを話すようにかわいいかわいいとよく言っている。ただ僕は全くカードキャプターさくらを知らず、唯一知っている情報は武蔵丸の悲劇しかなくて、ゆかりさんと話が合わない。
今日カードキャプターさくらのゲームが配信されたのでダウンロードしてプレイをする。最近ゲームが出来ないので早々に飽きてしまいそうだな、と思っていると視線を感じたのでゆかりさんを見ると、見ていた。僕ではなく、僕の手元にあるスマホを見ていた。僕に見られていると気づくと、すぐに目をそらした。また始めると、見てくる。
「ゆうやさんが寝たら、ゆうやさんのスマホでやろっと」
とつぶやいていた。僕はスマホを貸すのだろうか。

教えるゆかりさん
起きたゆかりさんが窓の外をじっと見ていたので歯を磨きながら隣に行く。
「向こうの道が白くなってるよ」
明け方から降った雨が止んで今は晴れていて、家の前の道路が朝のまだ柔らかい太陽の光に、濡れた地面が反射して白く輝いていた。
「白くなってる」
ゆかりさんはパトロールを終えたのか自分の布団に戻りどうぶつの森を始めた。

覗くゆかりさん
午前中に指定した段ボールが届いた。もう重たい本を持ってブックオフへ行くのをやめてネットで段ボールを注文してその中に本を入れて返送するという家にいながら本が売れるサービスを利用したので、段ボールが届いた。印鑑を持ってドアを開けたのに「指でサインが書けるので」と配達員に言われスマホのような画面に「伊藤」と最初の「伊」の字が大きくなってしまったバランスの悪いサインを書いて段ボールを受け取る。段ボールを持ちながらこのあとは本を詰めて、どうするのかということを考えていると「何が届いたの」と遠くでかすかに聞こえた。
僕はそれに返事をせずとりあえずテープで固定された段ボールを1枚ずつに分ける。
「何が届いたの」と今度はドアを開けてゆかりさんが覗いていた。
「なあんだ、段ボールか」
答える間も無く自己完結をするゆかりさんに、さっき手でサインを書いたんだよ、と教えると不思議そうな顔をして僕と段ボールを見た。
「あ、指でね」
「ああ、なんて当たり前のことを言ってるんだろうと思ったよ」
段ボールを組み立てようとしながらゆかりさんは言っていた。

#日記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?